61 〈やよひにうるふ年ありけるとしよみける〉
伊勢
桜花春くははれる年だにも人の心にあかれやはせぬ
62 〈桜の花のさかりに、久しくとはざりける人のきたりける時に読みけり〉
読人しらず
あだなりと名にこそたてれ桜花としにまれなる人もまちけり
あだなりと名にこそたてれ桜花としにまれなる人もまちけり
63 〈返し〉
業平朝臣
けふこずばあすは雪とぞふりなまし消えずはありとも花と見ましや
けふこずばあすは雪とぞふりなまし消えずはありとも花と見ましや
64 〈題しらず〉
読人しらず
ちりぬればこふれどしるしなき物をけふこそ桜をらばをりてめ
65
折りとらば惜しげにもあるか桜花いざ宿かりてちるまではみむ
66
紀有朋
桜色に衣はふかくそめてきむ花のちりなむ後のかた見に
67 〈桜の花のさけりけるを見にまうできたりける人に、よみておくりける〉
躬恒
わがやどの花見がてらにくる人はちりなむ後ぞ恋しかるべき
68 〈亭子の院の歌合の時よめる〉
伊勢
みる人もなき山ざとのさくら花ほかのちりなむのちぞさかまし
※個人的な暗唱用に。本文のテキストは、西本経一(にししたきょういち)校註『日本古典全書 古今和歌集』(毎日新聞社、1948年9月)による。解釈はいろいろ購入しているが、今はおもに、久曽神昇(きゅうそじんひたく)全訳注『古今和歌集(一)』(講談社学術文庫、1979年9月)と、小沢正夫(おざわまさお)・松田茂穂(まつだしげほ)校注・訳『完訳 日本の古典9 古今和歌集』(小学館、1983年4月)を参照している。