2019年7月28日日曜日

【209冊目】Ian Serraillier, The Silver Sword (Oxford Bookworms Stage 4)

やさしい英語の本、通算209冊目は、
オックスフォード・ブックワームズの
レベル4(1,400語レベル)の22冊目として、

イギリスの児童作家
イアン・セレリヤー
(Ian Serrailler, 1912年9月24日-94年11月28日)
の小説『銀のナイフ The Silver Swordを読みました。

著者44歳の時(1956年12月)に
イギリスの出版社ジョナサン・ケープ
(Jonathan Cape)から刊行された作品です。


Ian Serraillier
The Silver Sword

Retold by John Escott
〔Oxford Bookworms Stage 4〕
This simplified edition (c) Oxford University Press 2000
First published in Oxford Bookworms 1995
14,960語

今回割安だったので
上掲の2000年刊行版を手に入れましたが、
表紙のみ変更して、2008年に再販されています。
時期によっては2008年版のほうが手に入れやすいかもしれません。


オックスフォード・ブックワームズの目録で
見かけるまで全く未知の作品でした。

調べてみると、
原著刊行の2年後、岩波少年文庫から
河野六郎(こうのろくろう)氏による翻訳が
刊行されていたこともわかり、一緒に手に入れました。












河野六郎(こうのろくろう)訳
『銀のナイフ』
(岩波少年文庫182、1959年5月◆232頁)

日本ではあまり話題にならなかったのか、
早めに絶版になっていて、古書で少し高値をつけていました。
1,800円ならありかなと思い、購入しました。

訳文はよくこなれていて、
このまま再刊しても問題なく読める水準でした。


訳者の「あとがき」によると、

「著者のヤン・セリヤーという人のことはあまりよくわかりません。
 ただ、一九一二年生まれの四十七歳、現在、
 イギリス、サセックス州のある中学校で英語の先生をし、
 詩人でもあり、また、この本のような子ども向きの本を書いており、
 ラジオやテレビにも子ども向きの放送に出ている、
 というくらいのことしかわかっていません。」

「この本の話は、
 ポーランドの首府ワルシャワに住む一小学校の校長の家族が、
 第二次世界大戦中にうけたさまざまな苦労の話です。
 父親も母親もナチスに連れ去られてしまった子どもたちが、
 ふたたびその両親に会うまでの苦労」

 が綴られています。ただし、

「著者もことわっているように、
 ほんとうにあった事をもとにしているそうですが、
 そのほんとうの事をそのままに書いたら、
 きっと悲惨で読むにたえないでしょうが、
 それをやはり子どもの世界の出来事として、
 なるべく明かるく描こうとしています。」

とあって、事実に取材しながら、
全体として誰にも楽しめる読み物となるように
創意工夫された物語であることがわかります。

実際に読んでみても、
苦しい中にも希望を失わない、
明るさと強さを備えた物語に仕上げてあって、
思いのほか楽しみつつ最後まで読み進めることが出来ました。


一つ気になったのは、
この物語の主人公について、
現在では実際の人名を特定できているのかどうかで、

まるで特定できないのであれば、
歴史書としてのリアリティには少し欠けることになりますが、

いずれにしても第二次世界大戦後、
ヨーロッパで発生した「難民」について
学ぶ良いきっかけになる1冊だと思いました。

 ※この物語の主人公が実際、誰なのかについては、
  日本語の文献では何も言及されていないようです。
  英語の文献は未調査です。


この一文を書いていて、
この方面の知識があまりに欠けていることに愕然としました。

戦後ヨーロッパの難民について
良い書物はないか調べてみたところ、
興味にぴったり合うものが見つかりましたが、
600頁越えの大著なので購入するかは思案中。


ベン・シェファード著
忠平美幸(ただひらみゆき)訳
『遠すぎた家路 戦後ヨーロッパの難民たち』
(河出書房新社、2015年3月◇625頁)

とりあえず、まずは
ポーランドの近現代史を押さえておこうと、
読みやすそうな1冊を注文しました。

渡辺克義(わたなべかつよし)著
『物語 ポーランドの歴史 -東欧の「大国」の苦難と再生』
(中公新書、2017年7月◇224頁)

こんな風に、
他への色々な興味を呼び起こす
きっかけになる1冊となりました。


※第209冊目。総計2,260,465語。


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2019年7月14日日曜日

【208冊目】Raymond Chandler, The Big Sleep (Oxford Bookworms Stage 4)

やさしい英語の本、通算208冊目は、
再びオックスフォード・ブックワームズの
レベル4(1,400語レベル)の21冊目として、

アメリカ合衆国シカゴ生まれの小説家
レイモンド・チャンドラー
(Raymond Chandler, 1888年7月23日-59年3月26日)
の長編小説『大いなる眠り The Big Sleepを読みました。

著者50歳の時(1939年春)に出版された最初の長編小説であり

私立探偵フィリップ・マーロウを主人公とする
推理小説(計7作品)の第1作目でもありました。


Raymond Chandler
The Big Sleep

Retold by Rosalie Kerr
〔Oxford Bookworms Stage 4〕
This simplified edition (c) Oxford University Press 2000
First published in Oxford Bookworms 1991
15,960語

今回割安だったので
上掲の2000年刊行版を手に入れましたが、
表紙のみ変更して、2007年に再販されているので、
時期によっては2007年版のほうが手に入れやすいかもしれません。


チャンドラーの作品は、最近、
村上春樹氏の翻訳が次々に刊行されていましたが、
ハードーボイルド小説の先駆けといわれても、
さほど興味のない分野だったことと、
文庫本でかなりの分厚さになることから読むのを躊躇していました。

今回、やさしい英語で、
手短にその魅力に触れられたらいいなと思い、
読んでみることにしました。


翻訳は、
村上春樹(むらかみはるき)氏と
双葉十三郎(ふたばじゅうざぶろう)氏の
2点のみですので両方手に入れました。

双葉訳のほうが、
ある程度わかりやすく整理された訳文になっているので
きれいな活字で手に入るのならありかもしれませんが、
古本でしか手に入らない状態なので、
今は、村上訳を選ぶのが普通でしょう。

村上訳は、
原文の雰囲気をそのまま活かそうとして、
慣れるまで多少読みにくいところもありますが、
チャンドラーの魅力をうまく伝えているように感じました。


双葉十三郎(ふたばじゅうざぶろう)訳
『大いなる眠り』
(東京創元社〔世界推理小説全集26〕1956年1月◆196頁)

 →『大いなる眠り』
  (創元推理文庫、1959年8月◆279頁)



村上春樹(むらかみはるき)訳
『大いなる眠り』
(早川書房、2012年12月◆328頁)

 →『大いなる眠り』
  (ハヤカワ文庫、2014年7月◆386頁)


主に村上訳を片手に読み進めました。

推理小説としての謎解きよりも、
探偵マーロウのざっくばらんとした生き様が
活き活きとかっこよく描かれていて、
何より魅力的な人物像に惹かれているうちに、
最後まで読み終えていました。

ハードボイルドとはいっても、
人が死ぬ場面が直接的に描かれることはほとんどないのも好感が持てました。

これはぜひ、他の作品も読んでみなければ、
と強く思えたことが一番の収穫でした。

さすがに原文のままはまだ無理なので、
村上氏の翻訳で、他の作品も読んでみようと思います。

次は2作目の長編『さらば愛しき女よ』(清水俊二訳)に挑戦してみます。
※村上春樹訳では『さよなら、愛しい人』


※第208冊目。総計2,245,505語。


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