2021年11月2日火曜日

愛知県図書館へ(研究報告)

 秋休みの最終日、家から1時間ほどかけて、愛知県図書館へ調べ物に行ってきました。

「青縹書」「青縹紙」の逸文を再検討する上で、『図書寮叢刊 御産部類記』をみる必要に迫られました。宮内庁書陵部のホームページ上に写真版が公開されていますが、翻刻が出ている以上、見ておくのが筋でしょう。いっそ購入しようかとも思いましたが、古書でまずまずの値がついていたので今回は見送りました。近くの図書館で検索をかけると、愛知県図書館に所蔵されていることがわかったので、この機会に拝見し、必要箇所をコピーして来ました。

『西宮記』と『北山抄』の関係を追求しようと、『北山抄』に手を広げたところ、『北山抄』の研究者として大江匡房の名が自然に上がってきました。今のところ『江家次第』そのものについて扱うつもりはないのですが、『江記』『江家次第』『江家年中行事』『年中行事秘抄』などの研究史だけでも正確に把握しておこうと代表的な論文をいろいろ味読中。昨年手に入れた『江記逸文集成』がここに来て役立っています。

今年は受験生の方に多く入塾していただいたため、論文の執筆に使える時間はごくわずかです。その分思案を巡らす時間をたくさんいただいたと思って、機が熟すまで検討を重ねます。

健康に気をつけて、いざ冬期講習の準備に。


2021年10月28日木曜日

【読了】下村湖人著『次郎物語 第一部』

下村湖人(しもむらこじん 1884-1955)氏の名作『次郎物語』が、岩波文庫にお目見えしたことを知り、購入したのは昨年夏のこと。中学生のころに学校の図書室で出会い、夢中で読んだ記憶が鮮やかに残る一冊です。それ以来、いずれ再読をと思っていました。

下村湖人(しもむらこじん)

『次郎物語 第一部』(岩波文庫、2020年4月)

※『次郎物語(第二部)』(ポプラ社文庫、1980年2月)所収「年譜」に、

  1936年1月(52歳)、『次郎物語』の執筆に着手。雑誌「青年」に連載。

  1938年8月(54歳)、『次郎物語』(後の次郎物語第一部)を脱稿。

  1941年2月(57歳)、『次郎物語』(後の第一部)を出版

 とある。年譜の編者について明記されていないが、「解説」執筆者の永杉喜輔(ながすぎきすけ)氏が作成されたものであろう。

美しい装丁にも惹かれ、読む気満々だったのですが、いざ読もうとすると活字の小ささが多少厳しく、第一部だけ買ってあとは「積ん読」状態になっていました。

今年に入って、昔読んだのと同じ版なら読みやすいのではと考え、挿絵の記憶を頼りに探してみたところ、ポプラ社文庫版『次郎物語』と一致することがわかりました。廃刊状態でしたが、古本を安値で見つけ、5冊セットで購入しました。こんな感じの表紙です。

























下村湖人(しもむらこじん)著

 『次郎物語(一部)』(ポプラ社文庫、1980年1月。294頁)

 『次郎物語(二部)』(ポプラ社文庫、1980年2月。286頁)

 『次郎物語(三部)』(ポプラ社文庫、1980年3月。252頁)

 『次郎物語(四部)』(ポプラ社文庫、1980年4月。302頁)

 『次郎物語(五部)』(ポプラ社文庫、1980年4月。322頁)


親しみやすい、漫画のようなタッチの次郎像は、ヒサクニヒコ(1944- )氏による「さし絵・装幀」で、個人的には『次郎物語』といえばこの表紙を思い出します。

ただいざ購入してみると、上下2段組に小さめの活字で、老眼が入りつつある身には読みづらく、再び「積ん読」状態になってしまいました。

それから間もなく、インターネット上の青空文庫にも『次郎物語』が収録されていることを知りました。携帯の無料アプリで拝見すると、大きな活字で実に読みやすい。本より軽く、前読んだところを勝手に開いてくれるのもお手軽で、空き時間を見つけ楽しく読み進めるうちに、いつの間にか読み終わっていました。

久しぶりに読んでみても、やはり面白く、幼少時の気難しい次郎の心うちが見事に描き出されていて、古さを感じさせない名作だと思いました。

当時は第三部あたりまで強く感銘を受け、その先はそれほどではなかった記憶もあるので、最後まで続くかはわかりませんが、飽きるまで続きを読んでいこうと思います。

2021年8月12日木曜日

暑中見舞(研究報告)

今年もありがたいことに、忙しい夏を送らせていただいています。夏期講習の折、論文に集中する時間はなかなか作れませんが、立ち止まってしまうことのないように、牛歩の日々を続けています。

「九条本『官奏抄』の成立」に関する「論文A」は、少し寝かせたほうがよい段階に来たので、しばらく棚上げすることにしました。その間、論文Aの中から『北山抄』の成立にかかわる部分を切り離し、「論文B」としてかたちにしていく予定です。論文A・Bはそれほど日を置かずに発表する必要があるので、論文Bのほうもそろそろ書き出すべきと考えました。

最近は『北山抄』の代表的な先行研究を精読したり、見落としていた論文の遠隔複写を国会図書館にたのんだり、基礎作業を積み重ねていました。『西宮記』と比べれば、『北山抄』のテキストの問題はある程度解決されているので、その内容を読み解く研究も蓄積されつつあるのが印象に残りました。『西宮記』もかくありたい。

この他、「雑類略説」についての再論、無追記本『西宮記』の成立に関する論文、『清涼記』と『新儀式』の関係についての論文など、ぜひとも書かねばならぬと思いつつ、まとまった執筆時間をとれないのが悩ましいところです。十余年先(引退後)の楽しみに取っておいても良いのですが、60をこえたらどれくらい頭が回るのかわからないので、できるだけ今のうちに形にしておきたいものです。

数日の休暇の後、夏期講習の後半へと、気を引き締めて参ります。

2021年5月12日水曜日

研究報告

いつまでも「中間」報告はおかしいので、今回からは「研究報告」とします。春先は本業がそれなりに忙しく、思うように執筆は進みませんでした。相変わらず第1章に苦心しています。

論文の中で、平安朝漢文日記の「部類記」の成立について触れる必要があったので、近年発表された研究に目を通していました。そんな中、壮大なスケールで全体像を描く興味深い論文を見つけました。そんなこともあるのかなと精読してみると、仮説が先に立ち、必ずしも証明されていないことがわかりました。これまでなかった視点を提起するのは大切ですが、肝心の論拠に乏しい場合、そのままよりどころにするのは危険と判断せざるを得ません。

昔書いた拙論も批判の対象にされていたので、何か反論できないか思案しましたが、曖昧な書き方をされている部分が多いと、反論は意外と難しい。今書いている論文のなかに取り込むのは断念し、別稿を準備することにしました。史料の整理に少し時間がかかりそうですが、現行本『西宮記』の成立に深く関わる源経頼の、日次記『左経記』とその部類記『類聚雑例』の成立過程について分析する論文になると思います。

そんなこんなで、平安朝漢文日記(古記録)についての知見をリニューアルするのに少し手間取っていました。次はお盆のころに。第1章がだいたい仕上がっているといいな。

2021年5月7日金曜日

【読了】夏目漱石著『三四郎』(角川文庫)

 今さら感もありますが、夏目漱石(慶応3年〔1867〕1月5日~大正5年〔1916〕12月9日)の小説『三四郎』を読みました。漱石42歳の時、明治42年(1909)5月に春陽堂から出版されました。初期3部作の1作目で、この後『それから』『門』へと続いていきます。

 だいぶ前に総ルビの漱石全集を購入し、初期の作品をいくつか読んだのですが、今一つ何が良いのかわからないところがあって、中断していました。その後『三四郎』『それから』『門』の初期三部作をマンガで読む機会がありました。これが意外な面白さ。今でいう連ドラを観る感覚で、軽めに楽しめば良いのかなと思い直しました。

夏目漱石 著/加藤礼次朗 漫画『三四郎』

(ホーム社漫画文庫、2010年8月)

夏目漱石著/富沢みどり 漫画『それから』

(ホーム社漫画文庫、2010年9月)

夏目漱石著/井上大助 漫画『門』

(ホーム社漫画文庫、2010年10月)


 文庫本をいくつか手に取ったなかで、どうせなら今の日本語を読むのと同じ感覚で、楽に読み通せるものをと思い、見比べてみたところ、角川文庫の用字が一番読みやすかったので、こちらを購入しました。表紙のデザインもお気に入りで、あともう少し活字が大きければ言うことなしです。

夏目漱石 著『三四郎』

(角川文庫、初版、1951年10月。145刷、2019年2月)

 内容的に、大学進学とともに上京して、都会で青春時代を送ったような人には、より多く共鳴できるものがあるのだろうなと思いました。角川文庫による編集のおかげでかなり読みやすくなっていますが、今では用いない独特な言い回しもところどころ出て来て、現代文として少し荒削りな印象も残りました。

 続いて『それから』に挑戦をと思い、購入したのですが、じっくり読んでいると、その間、自分の研究が疎かになっていることに気がつきました。読書は老後の楽しみに取っておいても何とかなるので、漱石は少し置いておくことにしましょう。

2021年5月5日水曜日

【読了】ヒュー・ロフティング著/河合祥一郎訳『新訳 ドリトル先生航海記』(角川つばさ文庫)

 イギリス出身の児童文学作家ヒュー・ロフティング(Hugh Lofting, 1886年1月14日~1947年9月26日)の児童小説『ドリトル先生航海記 The Voyages of Doctor Dolittleを読みました。アメリカの出版社 Frederick A. Stokes Company から、ロフティング36歳のとき(1922年8月)に出版された作品です。1920年に出版された『ドリトル先生アフリカへ行く』に続くシリーズ第2作目です。

 第1作『アフリカへ行く』のほうは7年前に読み終えていました。その時はそれほどピンと来なかったので続編は読んで来なかったのですが、ここに来て少し、動物とおしゃべりするのも悪くないかと、ロフティングのやさしい世界観に馴染んできて、改めて続編を読んでみる気になりました。

 近年、シリーズ全巻の新訳を出された河合祥一郎(かわいしょういちろう)氏の翻訳で読みました。

ヒュー・ロフティング著

河合祥一郎(かわいしょういちろう)訳

『新訳 ドリトル先生航海記』

(角川つばさ文庫、2011年7月)


 河合訳は昨年、大人向きに書き直した角川文庫版も出ています。ただもともと子供向きの作品なので、読みやすいのが一番だと思い、角川つばさ文庫のほうで読み進めました。

ヒュー・ロフティング著

河合祥一郎(かわいしょういちろう)訳

『新訳 ドリトル先生航海記』

(角川文庫、2020年2月)


 周知の井伏鱒二(いぶせますじ)訳『ドリトル先生航海記』は、もともとに講談社の世界名作全集24(1952年2月)として刊行されたのが最初です。その8年後に岩波少年文庫194(1960年9月)として、またその翌年に岩波書店のドリトル先生物語全集2(1961年10月)として、それぞれ再刊されました。

 私が知っていたのは岩波少年文庫のほうです。昔はそれほど興味を覚えなかったのですが、今読んでみると、小中学生のころまでに、このシリーズに夢中になる機会があったなら、自分が知らなかった新しい世界が広がっていたのだろうなと思いました。総じて明るく優しい気分に包まれた、夢にあふれる楽しい作品でした。

ヒュー・ロフティング著

井伏鱒二(いぶせますじ)訳

『ドリトル先生航海記』

(岩波少年文庫022、改版、2000年6月。初版は1960年9月)


 まだ全巻一気に読まなければ!というほどハマっているわけではないので、また少し時間を置いてから、ゆっくり読み進めていこうと思います。

2021年1月14日木曜日

中間報告 その2

一昨年の秋から再開している「平安時代儀式書」研究の中間報告その2です。

夏までに、論文Aの「第2章」と「第3章」を大まかに仕上げてあったので、この秋からは、さかのぼって「はじめに」と「第1章」に取り組んでいました。思っていたより難航しましたが、年末までに「はじめに」を仕上げ、年明けからは「第1章」に本格的に取り組んでいます。

いろいろな書き方があると思いますが、パソコンを導入してからは、とりあえず書きやすいところから、書きたいことを全部書いて、後から冗長なところを削るスタイルで書き進めています。一般的に削れば削るほどわかりやすくなるのですが、削りすぎるとスキの多い論文になってしまうので、程良いバランスで止めるのが難しいです。

今後は、第1章を大まかに仕上げつつ、第2・3章に推敲を加えてより完全なものに近づけていく予定です。夏までには全体(第1・2・3章)を筋の通ったかたちに整えて、秋頃からは全体の推敲を行うのが理想です。

この論文に取り組むなかで、新しい論文への着想も得ました。『北山抄』の素材論について新しい発見があり、そこから切り込んで、成立時期について若干の修正を行う予定です(論文C)。

論文Bは、論文Aが峠をこえたら本気で書き出すつもりなので、恐らく夏頃からの執筆スタートになるでしょう。それまでは構想を温めて、断片的なアイデアを書き留めていきます。