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2016年11月21日月曜日

【読了】ユン・チアン&ジョン・ハリディ著『真説 毛沢東(下)』

中華人民共和国出身、イギリス在住の著作家
ユン・チアン(張戎 1952.3- )と、

イギリス在住のロシア史研究家
ジョン・ハリディ(John Halliday)の共著による

毛沢東(1893.12-1976.9)の評伝
“MAO The Unknown Story”の翻訳
『真説 毛沢東(下)』を読みました。

2005年に土屋京子(つちやきょうこ)氏の翻訳で出版された
『マオ 誰も知らなかった毛沢東(下)』を改題のうえ再刊したものです。


ユン・チアン&ジョン・ハリディ共著
土屋京子(つちやきょうこ)訳
『真説 毛沢東(下)』
(講談社α文庫、2016年6月)
 ※初出は講談社、2005年11月。原題『マオ 誰も知らなかった毛沢東(下)』

 ※下巻末の追記に、
 「この本の原著“MAO The Unknown Story”が出版されたのは、
  二〇〇五年六月でした。その後、
  著者が原著のところどころに加筆、削除、修正をほどこし、
  現在、著者の意向を最も正確に反映しているのは
  ヴィンテージ・ブックスから二〇〇七年に出された版です。
   今回、単行本『マオ 誰も知らなかった毛沢東』を
  講談社+α文庫から『真説毛沢東 誰も知らなかった実像』として
  出版しなおす機会に、最新版の“MAO”にもとづいて、
  日本語の訳文も数十ヵ所の加筆、削除、訂正をおこないました。
                   二〇一六年五月  土屋京子」
 とある(下巻705頁)。

無事に下巻も読み終わりました。

大戦の4年後、
中華人民共和国が成立して以降の、
毛沢東の後半生が描かれていました。

各章それぞれに、
数冊の研究書が必要となる分量を、
圧縮して一章につめこんでいるので、

個々の記述にまで踏み込むと、
若干食い足りない印象も残りました。
章立ては以下の通りです。


第5部 超大国の夢
 第32章 スターリンと張り合う
     1949-49年★毛沢東53-55歳
 第33章 二大巨頭の格闘
     1949-50年★毛沢東55-56歳
 第34章 朝鮮戦争を始めた理由
     1949-50年★毛沢東55-56歳
 第35章 朝鮮戦争をしゃぶりつくす
     1950-53年★毛沢東56-59歳
 第36章 軍事超大国計画
     1953-54年★毛沢東59-60歳
 第37章 農民を敵に回す
     1953-56年★毛沢東59-62歳
 第38章 フルシチョフを揺さぶる
     1956-59年★毛沢東62-65歳
 第39章 百花斉放の罠
     1957-58年★毛沢東63-64歳
 第40章 大躍進―国民の半数が死のうとも
     1958-61年★毛沢東64-67歳
 第41章 彭徳懐の孤独な戦い
     1958-59年★毛沢東64-65歳
 第42章 チベット動乱
     1950-61年★毛沢東56-67歳
 第43章 毛沢東主義を世界に売り込む
     1959-64年★毛沢東65-70歳
 第44章 劉少奇の奇襲
     1961-62年★毛沢東67-68歳
 第45章 原子爆弾
     1962-64年★毛沢東68-70歳
 第46章 不安と挫折の日々
     1962-65年★毛沢東68-71歳

第6部 復讐の味
 第47章 林彪との取引
     1965-66年★毛沢東71-72歳
 第48章 文革という名の大粛清
     1966-67年★毛沢東72-73歳
 第49章 復讐の後味
     1966-74年★毛沢東72-80歳
 第50章 新たな執行体制
     1967-70年★毛沢東73-76歳
 第51章 戦争騒ぎ
     1969-71年★毛沢東75-77歳
 第52章 林彪事件
     1970-71年★毛沢東76-77歳
 第53章 毛沢東主義、世界でもつまずく
     1966-70年★毛沢東72-76歳
 第54章 反共ニクソン、赤に呑まれる
     1970-73年★毛沢東76-79歳
 第55章 周恩来の癌を進行させる
     1972-74年★毛沢東78-80歳
 第56章 江青の文革
     1966-75年★毛沢東72-81歳
 第57章 老人毛沢東、保身を図る
     1973-76年★毛沢東79-82歳
 第58章 最後の日々
     1974-76年★毛沢東80-82歳


朝鮮戦争について、
大躍進について、
チベット侵略について、
文化大革命について、

どれも一章どころか
数冊費やしても語りつくせない大きなテーマなので、
本書をもとに大きな流れをつかんで、
より深く学んでいくきっかけになれば良いのでしょう。

下巻からの内容は、
それなりに自分でも勉強してきたからか、
上巻ほどの目新しさはありませんでしたが、

これまで個々に学んできた歴史的事件を、
大きな流れの中でつなげて理解できたのが、
一番の収穫でした。

細かい歴史的事実を一つずつ積み上げていくタイプの
「毛沢東伝」ではないので、
年表的な使い方を期待する場合は今一つかと思いますが、

毛沢東の生涯を、
中国史の大きな流れの中で、
中国共産党の立場からは離れて理解しようとする場合は、
大きな助けになる一冊でした。


最後に1点、土屋京子氏の翻訳が、
もとから日本語で書かれていたのかと見間違うほどに、
読みやすい訳文に仕上がっていたことも、
読書の大きな助けになりました。

大部な書物なので、その点ありがたかったです。



※Wikipediaの「ユン・チアン」「ジョン・ハリディ」を参照。

2016年10月12日水曜日

【読了】ユン・チアン&ジョン・ハリディ著『真説 毛沢東(上)』

中華人民共和国出身、イギリス在住の著作家
ユン・チアン(張戎 1952.3- )氏と、

イギリス在住のロシア史研究家
ジョン・ハリディ(John Halliday)氏の共著による

毛沢東(1893.12-1976.9)の評伝
“MAO The Unknown Story”の翻訳
『真説 毛沢東 誰も知らなかった実像(上)』を読みました。

2005年に土屋京子(つちやきょうこ)氏の翻訳で出版された
『マオ 誰も知らなかった毛沢東(上)』を改題のうえ再刊したものです。


ユン・チアン&ジョン・ハリディ共著
土屋京子(つちやきょうこ)訳
『真説 毛沢東 誰も知らなかった実像(上)』
(講談社α文庫、2016年6月)

 ※下巻末の追記に、
 「この本の原著“MAO The Unknown Story”が出版されたのは、二〇〇五年六月でした。その後、著者が原著のところどころに加筆、削除、修正をほどこし、現在、著者の意向を最も正確に反映しているのはヴィンテージ・ブックスから二〇〇七年に出された版です。/今回、単行本『マオ 誰も知らなかった毛沢東』を講談社+α文庫から『真説毛沢東 誰も知らなかった実像』として出版しなおす機会に、最新版の “MAO” にもとづいて、日本語の訳文も数十ヵ所の加筆、削除、訂正をおこないました。/二〇一六年五月  土屋京子」
 とある(下巻705頁)。

2005年に単行本が出た時に、
ぜひ読もうと思って手に入れたのですが、
1100頁(562頁+556頁;単行本)を超える大著に、
いずれ時間ができたらと躊躇しているうちに10年過ぎていました。

今回、せっかく再刊されたので、
文庫なら取っ付きやすくて良いかもと手に取って、
読み出してみたところ止まらなくなり、
そのまま上巻を読み終えていました。

まだ下巻が残っていますが、
文庫の上巻だけで773頁もあったので、
途中で挫折しないようにブログにアップしておきます。

参考までに上巻の章立てをまとめておきます。

第1部 信念のあやふやな男
 第1章 故郷韶山を出る
     1893-1911年★毛沢東誕生-17歳
 第2章 共産党員となる
     1911-20年★毛沢東17-26歳
 第3章 なまぬるい共産主義者
     1920-25年★毛沢東26-31歳
 第4章 国民党内での浮沈
     1925-27年★毛沢東31-33歳

第2部 党の覇権をめざして
 第5章 紅軍を乗っ取り、土匪を平らげる
     1927-28年★毛沢東33-34歳
 第6章 朱徳を押さえこむ
     1927-30年★毛沢東34-36歳
 第7章 さらなる野望、妻の刑死
     1927-30年★毛沢東33-36歳
 第8章 血の粛清で「主席」へ
     1929-31年★毛沢東35-37歳
 第9章 中華ソビエト共和国
     1931-34年★毛沢東37-40歳
 第10章 逆風の中で孤立する
     1931-34年★毛沢東37-40歳
 第11章 長征から外されかける
     1933-34年★毛沢東39-40歳
 第12章 長征(一)蒋介石の心算
     1934年★毛沢東40歳
 第13章 長征(ニ)黒幕として実権を握る
     1934-35年★毛沢東40-41歳
 第14章 長征(三)モスクワを独占する
     1935年★毛沢東41歳

第3部 権力基盤を築く
 第15章 劉志丹の死
     1935-36年★毛沢東41-42歳
 第16章 西安事件
     1935-36年★毛沢東41-42歳
 第17章 「共匪」から国政へ
     1936年★毛沢東42-43歳
 第18章 新しいイメージ、新しい生活、新しい妻
     1937-38年★毛沢東43-44歳
 第19章 戦争拡大の陰に共産党スパイ
     1937-38年★毛沢東43-44歳
 第20章 抗日より政敵排除・蒋介石打倒
     1937-40年★毛沢東43-46歳
 第21章 中国の分割を望む
     1939-40年★毛沢東45-46歳
 第22章 新四軍を死の罠にはめる
     1940-41年★毛沢東46-47歳
 第23章 恐怖の力で基盤を固める
     1941-45年★毛沢東47-51歳
 第24章 王明に毒を盛る
     1941-45年★毛沢東47-51歳
 第25章 中国共産党最高指導者
     1942-45年★毛沢東48-51歳

第4部 中国の覇者へ
 第26章 「革命的阿片戦争」
     1937-45年★毛沢東43-51歳
 第27章 ソ連軍がやってくる!
     1945-46年★毛沢東51-52歳
 第28章 ワシントンに救われる
     1944-47年★毛沢東50-53歳
 第29章 スパイ、裏切り、私情で敗れた蒋介石
     1945-49年★毛沢東51-55歳
 第30章 中国征服
     1946-49年★毛沢東52-55歳
 第31章 共産中国ただひとりの百万長者
     1949-53年★毛沢東55-59歳


毛沢東(1893-1976)の人生を
幼いころから順にたどっているのですが、
細かな歴史的事実を丹念に考証していくというよりは、

毛沢東の人生について大枠を語りながら、
中国の近現代史の大きな流れを、
改めて語り直そうとする意図があるようで、

ソ連から中国への影響を紐解きつつ、
この時期の中国史を俯瞰できるように描かれていて、
たいへん勉強になりました。

個人的に興味深かったのが、
ソ連時代のスパイ関係の史料を用いて、
中国共産党の成立にソ連がどのように関与していたのか、
相当踏み込んで言及しているところです。

ソ連あってこその中国共産党、
ソ連あってこその毛沢東であったことが、
具体的にかなりよくわかるように描かれているので、

今も現役の中国共産党にとって、
確かに本書の存在はまずいのだろうと感じました。

史料の扱い方をみると、
小説家ががんばってどうにかなるレベルでは全くないので、
ロンドン大学キングス・カレッジの前上級客員特別研究員であった
ロシア研究家ジョン・ハリディ氏の研究によるところが大きいように思われました。


ソ連の傀儡としての東ヨーロッパに対応する存在として、
ソ連の傀儡としての中華人民共和国があると考えると、

ヨーロッパにおいては
一番の毒牙であった独裁者ヒトラーが倒されたのに対して、

東アジアにおいては、
人を殺すことにかけてはヒトラーも真っ青なレベルの
毛沢東が生き残ったまま戦後を迎え、
彼を支えた中国共産党はいまだに現役であるという。

この現状は、
ヒトラーがスターリンと手を結んで、
ヨーロッパの大半を占領したまま戦後を生きのび、
今なおナチス党が現役で活躍するヨーロッパを想像したらよいでしょう。

そんな大きな視点を与えてくれている点で、
私にとってとても重要な1冊になりそうです。


なお本書にはほとんど言及されていませんが、
ソ連のスパイは当然、同じくらいの頻度で
日本にも関与していたはずなので、

日本の近現代史において、
ソ連のスパイがどのように関与していたのか、
ソ連時代の史料を用いれば、
まだまだ研究の余地があるように思われました。

でもしかし、
ロシア語と中国語と英語と日本語に堪能な、
思想的な偏向のない歴史の研究者というのは、
日本ではほぼありえない前提なのかもしれません。

そんな感想を抱きつつ、
下巻へと進みます。


※Wikipediaの「ユン・チアン」「ジョン・ハリディ」を参照。