2016年3月14日月曜日

【読了】Janet Hardy-Gould, Amelia Earhart (OBW Stage2)

そろそろ200万語に向けて、
一つ上のレベルを読み進めていきますが、

その前に、1000語レベルまでで、
読み残している何冊かを一気に読み終えようと思っています。

1,000語とはいっても、実際に読んでいると、
公立高校の1、2年生が読むリーダーと同じくらいの印象です。

200万語に到達するあたりで、
センター試験レベルの長文が、
すらすら読めるようになるといいです。


やさしい英語の本、通算128冊目は、
オックスフォード・ブックワームズの
ステージ2(700語レベル)の25冊目として、

英語学習者向けに
やさしい英語の本を書き下ろされている
ジャネット・ハーディ=グールド氏による、

アメリカ合衆国の女性飛行士
アメリア・イヤハート(1897.7-1937.7)の伝記を読みました。


Janet Hardy- Gould
Amelia Earhart

〔Oxford Bookworms Stage 2〕
Oxford University Press 2014
First published in Oxford Bookworms 2014
8,703語

アメリア・イアハートとは、
アメリカ合衆国のパイロット
チャールズ・リンドバーグ(1902.2-1974.8)に続いて、
大西洋単独無着陸飛行に成功し、
(リンドバーグ1927年⇒イアハート1932年)

その他にも数々の記録を樹立した女性パイロットで、
アメリカの国民に今なお絶大な人気を誇っているそうです。

30代の最後(1937)に行った赤道上世界一周飛行の途上、
南太平洋上において消息を絶ってしまったため、
その最期について様々な議論があるようです。

飛行機には特に興味がない私が読んでも、

アメリカ人らしい独立精神にあふれた
自由な生き様が印象的で、思わずひき込まれ、
わくわくしながら読み進めることができました。


日本語の文献はないか探してみると、
青木冨貴子(あおきふきこ)氏の監修・解説、
堀ノ内雅一(ほりのうちまさかず)氏のシナリオ、
佐野未央子(さのみおこ)氏の漫画による伝記が、
2012年に刊行されていました。


青木冨木子(監修・解説)
佐野未央子(漫画)
堀ノ内雅一(シナリオ)
『学習漫画 世界の伝記NEXT アメリア・イヤハート』
(集英社、2012年3月)

手に入れてみると、
思いのほかの力作で、
イヤハートの自由な生き様に惹き込まれ、

もし若いころに読んでいたら、
私も空への憧れを抱いていたのではないかと思うほどでした。

飛行機の世界は何も知らないので、
もう少し色々読んでから、書き足していこうと思います。


※通算128冊目。計1,067,161語。

※Wikipediaの「アメリア・イアハート」を参照。

2016年2月29日月曜日

【読了】Arnold Bennett, The Card (OBW Stage3)

やさしい英語の本、通算127冊目は、
オックスフォード・ブックワームズの
ステージ3(1000語レベル)の19冊目として、

イギリスの作家
アーノルド・ベネット(1867.5-1931.5)の
小説 『ザ・カード 当世人気男』 を読みました。

著者43歳の時(1911.2)に出版された作品です


Arnold Bennett
The Card

Retold by Nick Bullard
〔Oxford Bookworms Stage 3〕
First published in the Oxford Bookworms Library 2002
This simplified edition (c)Oxford Universty Press 2008
11,100語

一通り読み終えたはずの
オクスフォード・ブックワームズのステージ3の中に、
気になる一冊を見つけました。

まったく知らない作家でしたが、
少し調べてみると吉田健一氏の翻訳も出ていたことから、
私が無知なだけと思い、
翻訳とともに手に入れて読んでみることにしました。

これが思いのほか面白い、
生きる知恵にあふれた痛快な小説で、
楽しみながら読み進めることができました。

貧しい家柄に生まれた主人公が、
小さな失敗をはさみつつも、
それを上回る成功を重ねて徐々に成り上がっていくお話でした。

どうやってお金を儲けるのか、
という俗なテーマを扱いながら、
自助の精神に貫かれた主人公の明るい性格のもと、
清々しい読後感が残るのは、
ベネットの筆力の賜物でしょう。

日本でこういう
カラッとした明るい印象の、
生きる知恵を巧みにおりまぜた小説ってあるのかな、
と思い起こしてみると、
井原西鶴の名が浮かんできました。

似てるといえるほど読んでいるわけではないので、
近々西鶴を読んでみようと思います。


  ***

翻訳は吉田健一氏のがあるのみです。

当世人気男 (1978年) (世界ユーモア文庫〈8〉)

吉田健一(よしだけんいち)訳
『当世人気男』
(筑摩書房、1969年6月)
 ※初出は筑摩書房〔世界ユーモア文学全集5〕1961年4月。
 ※筑摩書房〔世界ユーモア文庫08〕新装版、1978年2月に再録。

古本で1978年の「新装版」を手に入れてみましたが、
紙質が悪く黄ばんでかなり読みにくいレベルだったので、
初出の1961年版を手に入れたところ、
こちらは今でも十分読める紙質でした。

吉田氏ならではの、
よく練られたわかりやすい翻訳に仕上がっているようなので、
こちらで読んでみようと思います。


なお、このブログを書くために、
ベネットについて調べはじめて気がついたのですが、

ベネットは随筆の名手でもあって、
学生の頃に渡部昇一氏の翻訳で、
彼のエッセイを読んでいたことに気がつきました。

本題からそれて来るので、
とりあえず書名だけ整理しておきます。
渡部訳の分以外は網羅してありません。


渡部昇一訳・解説
『自分の時間』
(三笠書房、1982年7月)
 ※三笠書房〔知的生き方文庫〕1990年2月に再録。
 ※三笠書房、1994年12月、2003年2月に再刊。
 ※原著名How to live on 24 hours a day 』(1910)

渡部昇一訳・解説
『自分を最高に生きる』
(三笠書房、1983年4月)
 ※三笠書房〔知的生き方文庫〕1986年1月に再録。
 ※三笠書房、1993年6月に再録。改題『自己を最高に生かす!』
 ※原著名How to make the best of life 』(1910)

渡部昇一訳・解説
『「自分脳」で生きる』
(三笠書房、1984年4月)
 ※原著名The human machine(1908.11)

渡部昇一・下谷和幸(しもたにかずゆき)訳
『自分の脳力を“持ち腐れ”にするな!』
(三笠書房、1990年4月)
 ※原著名Mental Efficiency 』(1911)

北沢あかね訳
『人生を豊かにする時間術』
(ソフトバンクパブリッシング〔フォーエバー選書〕2005年4月)
 ※原著名How to live on 24 hours a day 』(1910)
 ※原著名Married life
       (別名 The Plain man and His Wife )』(1913)
 ※原著名Friendship and happiness
       (別名 The Feast of St.Friend )』(1911)


もう少しいろいろ読み直してから、
改めて書き直そうと思います。


※通算127冊目。計1,058,458語。

※Wikipediaの「アーノルド・ベネット」を参照。

2016年2月15日月曜日

【読了】Jack London, White Fang (MMR Level 3)

やさしい英語の本、通算126冊目は、

マクミラン・リーダーズの
レベル3(1100語レベル)の13冊目として、

アメリカ合衆国の作家
ジャック・ロンドン(1876.1-1916.11)の
小説『白い牙』を読みました。

著者30歳の時、
月刊誌『THE OUTING MAGAZINE』
1906年5・6・7・8・9・10月号に掲載されました。


Jack London
White Fang

〔Macmillan Readers Level 3〕
This version of White Fang by Jack London was retold by
Rachel Bladon for Macmillan Readers
First published 2008
This version first published 2008
12,656語

3年程前(2013年2月)に、
ペンギン・リーダーズのレベル2
(600語レベル/総語数7,746語)で読んで以来、
2冊目の『白い牙』です。

先に取り上げた
『野性の呼び声』の続編というべき作品で、
個人的には『白い牙』のほうが好みに合います。

野性の狼ホワイト・ファング(白い牙)が、
幼いうちに人間に捕らえられ、
人間とともに生きていくうちに、
時に粗暴で残虐な扱いを受けながらも、
最終的に、信頼しうる飼い主から深い愛情を得、
幸せになるまでが描かれています。

前作は犬ぞりの場面がたくさん出て来て、
冗長に感じるところもあったのですが、
今回は物語としての構成が巧みで、
飽くことなく読み進めることができました。

前作同様、
生きることの残酷な現実からも目をそらさずに描き込みながら、
前作とは違って最後はハッピーエンドで終わるので、

続編のほうが、
誰にでもわかりやすく親しみやすい作品だと思いました。

やさしい英語では、
10,000語をこえてくると
それなりに読みでがあるのですが、
さほど苦労することもなく、
読み進めることが出来ました。


  ***

翻訳は、
白石佑光氏と辻井栄滋氏のお二人のが、
特に優れていると思います。
読みやすさ重視なら辻井氏、
文学的な薫りを愉しむなら白石氏でしょうか。


白石佑光訳
『白い牙』
(新潮文庫、1958年11月。47刷改版、2006年4月)


辻井栄滋訳
『白牙』
(現代教養文庫、2002年6月)
 ※辻井訳『決定版 ジャック・ロンドン選集2 ボクシング小説集・白牙』(本の友社、2005年11月)に再録。

他にも以下の翻訳が見つかりましたが、
深町氏のほかは実物をまだ目にしていません。

深町眞理子訳
『白い牙』
(光文社古典新訳文庫、2009年3月)

堺利彦訳
『ホワイト・ファング ― 白牙』
(叢文閣、1925年10月)

本多顕彰訳
『白い牙』
(岩波文庫、1936年2月)

北村喜八訳
『白い牙』
(新潮文庫、1940年6月)
 ※初出は新潮社〔世界文学全集 第2期9〕1931年12月。

山本政喜訳
『白い牙』
(角川文庫、1953年)
 ※初出は万有社、1950年3月。

阿部知二訳
『白い牙・荒野の呼び声』
(東京創元社〔世界ロマン全集 第28巻〕1957年10月)

白木茂訳
『白い牙』
(ポプラ社〔世界の名著33〕1969年2月)

辺見栄訳
『白い牙』
(講談社〔世界動物文学全集30〕1981年4月)

大野進編訳
『白い牙』
(ぎょうせい〔新装 少年少女世界名作全集17〕1995年2月)

神宮輝夫編訳
『白い牙』
(講談社〔痛快 世界の冒険文学20〕1999年5月)

1925年にはすでに翻訳されていたことに驚きました。
まずは白石訳か辻井訳を読み終えてから、
さらに以前の翻訳も集めていこうかと思います。


※通算126冊目。計1,047,358語。

2016年2月2日火曜日

【読了】Mary Shelley, Frankenstein (MMR Level 3)

やさしい英語の本、通算125冊目は、

マクミラン・リーダーズの
レベル3(1100語レベル)の12冊目として、

イギリスの女性小説家、
メアリー・シェリー(1797.8-1851.2)の
小説『フランケンシュタイン』を読みました。

著者20歳の時(1818.1)に出版された作品です


Mary Shelley
Frankenstein

〔Macmillan Readers Level 3〕
This retold version of Margaret Tarner for for Macmillan Readers
First published 1986
This edition first published 2010
6,879語

昨年8月に、
オックスフォード・ブックワームズの
ステージ3(1,000語レベル)で読んで以来(総語数9,685語)、
2度目の『フランケンシュタイン』です。

語彙レベルは多少上がっていますが、
総語数が3,000語少なくなっているからか、
苦労なくすらすら読み進めることができました。

なお前回は、
原作の内容がほぼそのまま要約されていたのに対して、

今回のはわずかですが、
原作にアレンジが加えてありました。

編者の創意によるものなのか、
映画などの典拠があるのかは定かでありません。

原作にこめられていた
行き場ない強い負の感情が多少弱められて、
その分読みやすく仕上がっているように感じました。

個人的には、
マイナスの感情が立ち込める
暗い雰囲気の悲しいお話なので、
積極的に読みたいとは思いません。

ただし、
人から愛されることを拒絶された若者が抱える
心の闇、苦しさ、切なさ、醜さを、深く掘り下げた作品として、
それなりに読むべきところはあると思いました。

落ち込んでいる時だと
自分も一緒に引きずり込まれそうな
強い負の力があるので、

少し距離を置いてから、
また忘れたころに読み返そうと思います。


翻訳は、
読みやすさ重視であれば、
芹澤恵(せりざわめぐみ)氏の新潮文庫がお勧めです。


芹澤恵訳
『フランケンシュタイン』
(新潮文庫、2014年12月)

他に手に入れた
以下の翻訳の中では一番滞りなく、
最後まで読み通すことができました。

田内志文訳
『新訳 フランケンシュタイン』
(角川文庫、2015年2月)

小林章夫訳
『フランケンシュタイン』
(光文社古典新訳文庫、2010年10月)

森下弓子訳
『フランケンシュタイン』
(創元推理文庫、1984年2月)

山本政喜訳
『フランケンシュタイン』
(角川文庫、1994年11月)


※通算125冊目。計1,034,702語。

※Wikipediaの「メアリー・シェリー」「フランケンシュタイン」を参照。

2016年1月31日日曜日

『古今和歌集』巻第十一 戀歌一 その3(529-551)

『古今和歌集』の恋歌一 その3として、
次の23首(529-551)を読みました。

本文は、
 西下経一校注
 『日本古典全書 古今和歌集』
 (朝日新聞社、1948年9月)
に従いました。ただし、
読みやすくするために、句切れで改行し、
句間を一字ずつあけました。

句切れは、
 佐伯梅友校注
 『古今和歌集』
 (ワイド版 岩波文庫、1991年6月)
の解釈に従いました。

さらに、
個人的に共感できた歌に☆印をつけ、
わかりやすかった二人の歌意を併記しました。

【奥村釈】
 奥村恆哉校注
 『新潮日本古典集成 古今和歌集』
 (新潮社、1978年7月)

【小町谷釈】
 小町谷照彦訳注
 『古今和歌集』
 (ちくま学芸文庫、2010年3月。初出は旺文社文庫、1982年6月)


  ******
  ******

◎古今和歌集巻第十一 戀歌一(その3)529-551

☆529☆
かがり火に あらぬわが身の
なぞもかく 涙の河に うきてもゆらむ
【奥村釈】
 鵜飼(うかい)の篝火は、
 水の上であかあかと燃える。
 その篝火でもない私なのに、
 なぜこうも涙の川に浮んで、
 燃えてばかりいなければならないのだろう。
【小町谷釈】
 鵜飼(うかい)の篝火でもない私の身なのに、
 どうしてこのように涙の川に浮かんで燃えているのだろう。

☆530☆
篝火の かげとなる身の わびしきは
ながれてしたに もゆるなりけり
【奥村釈】
 鵜飼の篝火の影同然になったわが身のわびしさは、
 篝火が水底(みなぞこ)でゆらゆら燃えるように、
 心の中だけで燃えつづけなければならない、
 まさにそのことだ。
【小町谷釈】
 篝火の水に映る影のようになった私の身の悲しさは、
 流れる水底に篝火の光が燃えて見えるように、
 泣きながら心の奥底で思いの火に燃えていることだよ。

531
はやきせに みるめおひせば
我が袖の 涙の川に うゑましものを

532
おきへにも よらぬ玉もの
浪の上に 亂(みだ)れてのみや 戀ひわたりなむ

533
あしがもの さわぐ入江の 白浪の
しらずや
人を かくこひむとは

534
人しれぬ 思をつねに するがなる ふじの山こそ
わが身なりけれ

☆535☆
とぶ鳥の こゑもきこえぬ おく山の
ふかき心を 人はしらなむ
【奥村釈】
 飛ぶ鳥の声さえ聞えない深山のように、
 私が深く思いを抱いていることを、
 せめてあの人だけは知ってほしい。
【小町谷釈】
 飛ぶ鳥の声さえも聞えない奥深い山のような、
 深い恋の思いを心の中に秘めていることを、
 あの人は知ってほしい。

536
相坂の ゆふつけ鳥も
わがごとく 人や戀しき
ねのみなくらむ

537
あふさかの 關にながるる いはし水
いはで心に おもひこそすれ

538
うき草の うへはしげれる ふちなれや
ふかき心を しる人のなき


  ******

539
打ちわびて よばはむこゑに
山彦(びこ)の こたへぬ山は あらじと思(おも)ふ

☆540☆
心がへ する物にもが
かた戀は くるしき物と 人にしらせむ
【奥村釈】
 心を取りかえることができたらよいのに…。
 そうして、
 片思いがどんなに苦しいものか、
 あの人に思い知らせてやりたい。
【小町谷釈】
 心が取り換えられるものであったらよいのに、
 片思いはどんなにつらいものか、
 あの人に思い知らせてやりたいから。

541
よそにして こふれば苦(くる)し
いれひもの おなじ心に いざむすびてむ

☆542☆
春たてば きゆる氷の
のこりなく 君が心は 我にとけなむ
【奥村釈】
 春になるととける氷のように、
 あなたの心も、
 すっかり私にうちとけてほしい。
【小町谷釈】
 春になると解ける氷のように、
 あなたの心は私にあます所なくうち解けてほしい。

543
あけたてば 蝉のをりはへ なきくらし
よるは螢の もえこそわたれ

☆544☆
夏蟲の 身をいたづらに なすことも
ひとつ思(おもひ)に よりてなりけり
【奥村釈】
 夏の虫は、
 火に飛び込んでわれとわが身を焼き滅ぼしてしまう。
 それというのも、
 恋の火にわが身を焼きさいなんでいる私と、
 そっくりそのままの身の上だからだ。
【小町谷釈】
 夏虫が灯火に飛び込んで身を焼き滅ぼしてしまうことも、
 思えば私と同じような恋の思いの火によってだったのだ。

545
ゆふされば いとどひがたき わが袖に
秋の露さへ おきそはりつつ

546
いつとても 戀しからずは あらねども
秋の夕(ゆふべ)は あやしかりけり
【奥村釈】
 何時といって恋しくない時などないけれど、
 秋の夕暮というものは、
 わけても不思議に恋しさがつのる。
【小町谷釈】
 いつといって恋しくない時はないけれども、
 秋の夕暮は不思議に人恋しさがつのることだよ。

547
秋の田の ほにこそ人を 戀ひざらめ
などか心に わすれしもせむ

548
あきの田の ほの上(うへ)をてらす いなづまの 光のまにも
我やわするる


  ******

549
人めもる 我かは
あやな
花薄(すすき) などかほにいでて 戀ひずしもあらぬ

550
あは雪の たまればかてに くだけつつ
わが物思の しげき比かな

551
おく山の すがのねしのぎ ふる雪の
けぬとかいはむ
戀のしげきに


  ******
  ******

今回の23首(529-551)のうち、
私が特に共感できた(☆印)のは、
次の七首でした。

☆529☆
かがり火に あらぬわが身の
なぞもかく 涙の河に うきてもゆらむ

☆530☆
篝火の かげとなる身の わびしきは
ながれてしたに もゆるなりけり

☆535☆
とぶ鳥の こゑもきこえぬ おく山の
ふかき心を 人はしらなむ

☆540☆
心がへ する物にもが
かた戀は くるしき物と 人にしらせむ

☆542☆
春たてば きゆる氷の
のこりなく 君が心は 我にとけなむ

☆544☆
夏蟲の 身をいたづらに なすことも
ひとつ思(おもひ)に よりてなりけり

☆546☆
いつとても 戀しからずは あらねども
秋の夕(ゆふべ)は あやしかりけり


釈文を片手に、
一首ずつ読み解いていくと、

素朴な表現の中にひそんだ
深い感情に気がついて、
心を動かされます。

千年前の言葉を、千年後に生きる
一個人の凡庸な感性で選んでいくと
どんな歌が残るのでしょうか。