2026年3月17日火曜日

【暗唱用81-85】『古今和歌集』巻第2 春歌下③[付・文法解析]

 81〈東宮の雅院にて櫻の花のみかは水にちりて流れけるをみてよめる〉
                      菅野高世
枝よりもあだにちりにし花なればおちても水のあわとこそなれ


 東宮の雅院で、
  桜の花が御溝水(みかわみず。庭に造った水の流れ)に
  散って流れていたのを見て詠んだ歌

                    菅野高世(すがののたかよ)

 枝からさえ、はかなく散ってしまった花なのだから、
 落ちても水の泡となって(消えていく)のだ


 ※東宮 の 雅院 にて[名詞+格助詞+名詞+格助詞]
          →東宮の雅院で

 ※桜 の 花 の[名詞+格助詞+名詞+格助詞(主格)]
       →桜の花が

 ※みかは水 に[名詞+格助詞]
        →御溝水(庭に造った水の流れ)に

 ※ちり て [動詞(ラ四)連用形+接続助詞]
       →散って

 ※流れ ける を[動詞(ラ下二)連用形+助動詞 けり 連体形(過去)+格助詞
         →流れていたのを

 ※みてよめ る[動詞(マ上一)連用形+接続助詞+動詞(マ四)已然形
        +助動詞 り 連体形(完了)]
         →見て詠んだ(歌)


 ▼
 ※枝 より も[名詞+格助詞(起点)+係助詞(強調)]
       →枝からさえ

 ※あだに ちり に し[形容動詞(ナリ)連用形+動詞(ラ四)連用形
           +助動詞 ぬ 連用形(完了)+助動詞 き 連体形(過去)]
            →はかなく散ってしまった

 ※花 なれ ば[名詞+助動詞 なり 已然形(断定)+接続助詞(理由)]
        →花であるので

 ※おち て も[動詞(タ上二)連用形+接続助詞+係助詞(逆接条件)]
        →落ちても

 ※水 の[名詞+格助詞(連体修飾)]
     →水の

 ※あわ と こそ なれ[名詞+格助詞+係助詞(強意)
           +動詞(ラ四)已然形〈係り結び〉]
            →泡となるのだ】



82〈桜の花のちりけるをよみける〉
                      貫之
ことならばさかずやはあらぬ桜花みる我さへにしづ心なし


【 桜の花が散ったことを詠んだ歌

                  貫之(つらゆき)

 (散ったという)ことならば、(いずれまた)
 咲かないことはないのだろう(いや、きっと咲くはずだ)
 桜の花よ、見る私までも、落ちついた心ではいられない


 ※桜 の 花 の[名詞+格助詞(連体修飾)+名詞++格助詞(主格)]
        →桜の花が

 ※ちり ける を[動詞(ラ四)連用形+助動詞 けり 連体形(過去)+格助詞(対象)]
         →散ったことを

 ※よみ ける[動詞(マ四)連用形+助動詞 けり連体形(過去)]
        →詠んだ(歌)


 ▼
 ※こと なら ば[名詞+助動詞 なり 未然形(断定)+接続助詞]
         →(散ったという)ことならば、

 ※さか ず やは[動詞(カ四)未然形+助動詞 ず 連用形(打消)+係助詞(反語)]
   あら ぬ[動詞(ラ変)未然形+助動詞 ず 連体形(打消)]
        →咲かないことはないのだろう(いや、咲く)

 ※桜花[名詞]
     →桜の花

 ※見る  我 さへ に[動詞(マ上一)連体形+代名詞
          +副助詞(添加)+格助詞]
           →見る私までも

 ※しづ心 なし[名詞+形容詞(シク)終止形]
        →落ちついた心でいられない】



83〈桜のごとくちる物はなしと人のいひければよめる〉
桜花とくちりぬともおもほえず人の心ぞ風も吹きあへぬ


【 桜のように散るものはないと人が言ったので詠んだ(歌)

 桜の花が
 早く散ってしまうとは思われない。
 人の心こそ
 風でさえ吹き散らしきれない(うちに変わってしまう)


 ※桜 の ごとく[名詞+格助詞(連体修飾)+助動詞 ごとし 連用形(比況)]
         →桜のように

 ※ちる物は[動詞(ラ四)連体形+名詞+係助詞(取り立て)]
   なし と[形容詞(ク活用)終止形+格助詞(引用)]
        →散る物はないと

 ※人の[名詞+格助詞(主格)]
   いひ けれ ば[動詞(ハ四)連用形+助動詞 けり 已然形(過去)
          +接続助詞(順接確定条件)]
           →人が言ったので

 ※よめ る[動詞(マ四)已然形+助動詞 り 連体形(存続・完了)]
       →詠んだ(歌)


 ▼
 ※桜花[名詞]→桜の花が

 ※とく ちり ぬ とも[形容詞(ク)連用形+動詞(ラ四)連用形
           助動詞 ぬ 終止形(完了)+接続助詞(逆接仮定)]
           →早く散ってしまうとは

 ※おもほえ ず[動詞(ヤ下二)未然形+助動詞 ず 終止形(打消)]
         →思われない

 ※人 の 心 ぞ[名詞+格助詞(連体修飾)+名詞+係助詞(強意。係り結び)]
        →人の心こそ

 ※風 も[名詞+係助詞(添加・強調)]→風でさえ

 ※吹き あへ ぬ[動詞(カ四)連用形+動詞(ハ下二)未然形
          +助動詞 ず 連体形(打消)]
           →吹き散らしきれない】



84〈桜の花のちるをよめる〉
                   紀友則
久方のひかりのどけき春の日にしづ心なく花のちるら


【 桜の花が散るのを詠んだ(歌)

               紀友則(きのとものり)

 光のどかな春の日に
 心落ちつかず
 どうして花が散っているのだろうか


 ※桜 の 花 の[名詞+格助詞(連体修飾)+名詞++格助詞(主格)]
        →桜の花が

 ※ちる を[動詞(ラ四)連体形+格助詞(対象)]
       →散るのを

 ※よめ る[動詞(マ四)已然形+助動詞 り 連体形(存続・完了)]
       →詠んだ(歌)


 ▼
 ※久方の[枕詞](「ひかり」にかかる。通常訳さない)

 ※ひかり のどけき[名詞+形容詞(ク)連体形]
           →光 のどかな
 ※春 の 日 に[名詞+格助詞(連体修飾)+名詞+格助詞(時)]
        →春の日に

 ※しづ心なく[形容詞(ク)連用形]
        →心落ちつかず

 ※花 の 散る らむ[名詞+格助詞(主格)+動詞(ラ四)終止形
          +助動詞 らむ 終止形(現在の原因推量)]
          →どうして花が散っているのだろうか】★超有名!



85〈春宮のたちはきの陣にて、桜の花のちるをよめる〉
                   藤原好風
春風は花のあたりをよきてふけ心づからやうつろふとみむ


【 春宮の帯刀の陣で、桜の花が散るのを詠んだ(歌)

           藤原好風(ふじわらのよしかぜ)

 春の風は花のあたりを避けて吹いてくれ
 (桜の花が)自分から散るのかどうかと、見届けてみよう


 ※春宮 の[名詞+格助詞(連体修飾)]
   たちはき の[名詞+格助詞(連体修飾)]
    陣 にて[名詞+格助詞(場所)]
         →春宮の帯刀の陣で、

 ※桜の花の[名詞+格助詞(連体修飾)+名詞+格助詞(主格)]
   ちる を[動詞(ラ四)連体形+格助詞]
    よめ る[動詞(マ四)已然形+助動詞 り 連体形(完了)]
        →桜の花が散るのを詠んだ


 ▼
 ※春風 は[名詞+係助詞(提示)]
      →春の風は

 ※花のあたりを[名詞+格助詞(連体修飾)+名詞+格助詞]
         →花のあたりを

 ※よきてふけ[動詞(カ四)連用形+接続助詞+動詞(カ四)命令形]
        →避けて吹いてくれ

 ※心づから や[副詞+係助詞(疑問。係り結び→うつろふ)]
   うつろふ と[動詞(ハ四)連体形+格助詞(引用)]
    み む[動詞(マ上一)未然形+助動詞 む 終止形(意志)]
         →自分から散るのかどうかと、見届けてみよう】


※個人的な暗唱用に。本文のテキストは、西本経一(にしした きょういち)校註『日本古典全書 古今和歌集』(毎日新聞社、1948年9月)による。解釈は今はおもに、久曽神昇(きゅうそじん ひたく)全訳注『古今和歌集(一)』(講談社学術文庫、1979年9月)と、小沢正夫(おざわ まさお)・松田茂穂(まつだ しげほ)校注・訳『完訳 日本の古典9 古今和歌集』(小学館、1983年4月)を参照している。
 
※ひたすら暗唱は飽きて来ました。どうせ読むのなら、やはり正確に意味がわかったほうが楽しい。とはいえ、1000年に及ぶ解釈の流れを踏まえる時間的な余裕はないので、まっさらな気持ちで、古典文法の定石通りに読んだらどう解釈できるのか、記していくことにしました。テキストと文法のみでどこまで読めるのか興味がわきました。
 手元にある高校生向けの古典文法の教科書は、①浜本純逸(監修)・黒川行信(編著)『九訂版 読解をたいせつにする体系 古典文法』(数研出版、2020年11月。初版は1990年2月)と、②井島正博(編著)・伊藤博美・中島ひとみ(著)『詳説 古典文法』(筑摩書房、2012年12月)の2冊。また、学習者向けの古語辞典は、③中村幸弘(編)『ベネッセ 全訳 コンパクト古語辞典』(1999年11月)と、④林巨樹・安藤千鶴子(編)『新 全訳 古語辞典』(大修館書店、2017年1月)の2冊。文法解析の内容は、ChatGPT と Copilot の AI でチェックしました。AIによる文法分析は大変便利なものですが、同じAIでも聞き方や、聞く日時によって微妙に違ってくるので、注意が必要。最終的な文責は栗木が負う。とりあえず先に進めることを重視し、慣れてきたら前に戻って推敲するつもりです。


0 件のコメント:

コメントを投稿