2026年3月18日水曜日

【暗唱用86-90】『古今和歌集』巻第2 春歌下④[付・文法解析]

  86〈櫻のちるをよめる〉
                  凡河内躬恒
雪とのみふるだにあるを桜花いかにちれとか風の吹くらむ


 桜が散るのを詠んだ(歌)

             凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)

 ただ雪のように降っているだけであるが、
 「桜の花よ、どのように散れ」といって、
 風が吹いているのだろうか 


 ▽
 ※桜 の[名詞+格助詞(主格)]
      →桜が

 ※ちる を[動詞(ラ四)連体形+格助詞(対象)]
      →散るのを

 ※よめ る[動詞(マ四)已然形+助動詞 り 連体形(完了)]
       →詠んだ(歌)


 ▼
 ※雪 と のみ[名詞+格助詞(引用・比況)+副助詞(限定)]
       →ただ雪のように

 ※ふる だに[動詞(ラ四)連体形+副助詞(最低限)] 
   ある を[動詞(ラ変)連体形+接続助詞(逆接)]
       →降るだけで十分なのに

 ※桜花[名詞]→桜の花よ

 ※いかに ちれ[副詞+動詞(ラ四)已然形]
   と か[格助詞(引用)+係助詞(疑問 ※係り結び)]
       →どのように散れというのか

 ※風 の[名詞+格助詞(主格)]
   吹く らむ[動詞(カ四)連体形
        +助動詞 らむ 連体形(現在推量 ※係り結び)]
         →風が吹いているのだろう】



87〈ひえにのぼりて帰りまうできてよめる〉
                   貫之
山たかみみつつわがこし桜花風は心にまかすべらなり


【 比叡山に登って、帰ってきて詠んだ(歌)

                   貫之(つらゆき)

 山が高いので、眺めながら私が登ってきた
 桜の花を、風はその心に任せて(散らして)いるようだ


 ※ひえ に[名詞+格助詞(場所)]→比叡山に

 ※のぼり て [動詞(ラ四)連用形+接続助詞(単純接続)
        →登って

 ※帰り まうで き て[動詞(ラ四)連用形+動詞(ダ下二)連用形(謙譲)
           +動詞(カ変)連用形+接続助詞(単純接続)]
            →帰って来て

 ※よめ る[動詞(マ四)已然形+助動詞 り 連体形(完了)]
       →詠んだ(歌)


 ▼
 ※山 たか み[名詞+形容詞(ク)の語幹+接尾語]
        →山が高いので

 ※み つつ[動詞(マ上一)連用形+接続助詞(継続・並行)]
   わ が こ し[代名詞+格助詞(主格)+動詞(カ変)連用形
         +助動詞 き 連体形(過去)]
          →見ながら私が来た

 ※桜花[名詞]→桜の花を

 ※風 は 心 に[名詞+係助詞(提示)+名詞+格助詞(基準・対象)]
   まかす べらなり[動詞(サ四)終止形+助動詞 べらなり 終止形(推定)]
        →風は心に任せて(散らして)いるようだ】




88〈題しらず〉
                   大伴黒主
春さめのふるは涙かさくら花ちるを惜しまぬ人しなければ


【            大伴黒主(おおとものくろぬし)

 春雨が降るのは涙なのか
 桜の花が散るのを惜しまぬ人などいないので(そう思う)


 ▼
  ※春さめ の[名詞+格助詞(主格)]→春雨が

 ※ふる は[動詞(ラ四)連体形+係助詞(主題提示)] 
   涙 か[名詞+係助詞(疑問)]
       →降るのは涙なのか

 ※さくら花[名詞]
       →桜の花が

 ※ちる を[動詞(ラ四)連体形+格助詞(対象)]
   惜しま ぬ[動詞(マ四)未然形+助動詞 ず連体形(打消)]
         →散るのを惜しまない

 ※人 し[名詞+副助詞(強意)]
   なけれ ば[形容詞(ク)已然形+接続助詞(原因・理由)]
         →人などいないので】



89〈亭子の院の歌合の歌〉
                   貫之
桜花ちりぬる風のなごりには水なき空に波ぞたちける


【 亭子の院(宇多上皇の御所)で催された歌合の歌

                 貫之(つらゆき)

 桜の花が散ってしまった
  風のなごりには、水のない空に
   波が立っているようだ


 ※亭子の院 の[名詞+格助詞(連体修飾)]
         →亭子の院(宇多上皇の御所)の

 ※歌合 の 歌[名詞+格助詞(連体修飾)+名詞]
        →歌合の歌


 ▼
 ※桜花[名詞]→桜の花が

 ※ちり ぬる[動詞(ラ四)連用形+助動詞 ぬ 連体形(完了)]
   風 の[名詞+格助詞(連体修飾)]
       →散ってしまった風の

 ※なごり に は[名詞+格助詞(時・場合)+係助詞(取り立て・強調)]
         →なごりには

 ※水 なき[名詞+形容詞(ク)連体形]
   空 に[名詞+格助詞(場所)]
       →水のない空に

 ※波 ぞ[名詞+係助詞(強意 ※係り結び)]
   たち ける[動詞(タ四)連用形
        +助動詞 けり 連体形(過去・詠嘆 ※係り結び)]
          →波が立っていることだなあ】



90〈ならのみかどの御歌〉
故郷となりにしならの宮こにも色はかはらず花はさきけり


【 奈良のみかど(平城天皇)の御歌

 ふるさと(旧都)となってしまった奈良の都にも
 (昔と)色は変わらず花は咲いていることだなあ


 ※なら の みかど[名詞+格助詞(連体修飾)+名詞]
   の 御歌[格助詞(連体修飾)+名詞]
        →奈良のみかど(平城天皇)の御歌(みうた)


 ▼
 ※故郷と[名詞+格助詞(結果)]
      →故郷(旧都)と

 ※なり に し[動詞(ラ四)連用+助動詞 ぬ 連用形(完了)
        +助動詞 き 連体形(過去)]
   なら の 宮こ[名詞+格助詞(連体修飾)+名詞]
    に も[格助詞(場所)+係助詞(添加)]
        →なってしまった奈良の都にも

 ※色 は[名詞+係助詞(取り立て)]
   かはら ず[動詞(ラ四)未然形+助動詞 ず 終止形(打消)]
         →色は変わらず

 ※花 は[名詞+係助詞(取り立て)]
   さき けり[動詞(カ四)連用形+助動詞 けり 終止形(詠嘆)]
         →花は咲いていることだなあ】



※個人的な暗唱用に。本文のテキストは、西本経一(にしした きょういち)校註『日本古典全書 古今和歌集』(毎日新聞社、1948年9月)による。解釈は今はおもに、久曽神昇(きゅうそじん ひたく)全訳注『古今和歌集(一)』(講談社学術文庫、1979年9月)と、小沢正夫(おざわ まさお)・松田茂穂(まつだ しげほ)校注・訳『完訳 日本の古典9 古今和歌集』(小学館、1983年4月)を参照している。
 
※ひたすら暗唱は飽きて来ました。どうせ読むのなら、やはり正確に意味がわかったほうが楽しい。とはいえ、1000年に及ぶ解釈の流れを踏まえる時間的な余裕はないので、まっさらな気持ちで、古典文法の定石通りに読んだらどう解釈できるのか、記していくことにしました。テキストと文法のみでどこまで読めるのか興味がわきました。
 手元にある高校生向けの古典文法の教科書は、①浜本純逸(監修)・黒川行信(編著)『九訂版 読解をたいせつにする体系 古典文法』(数研出版、2020年11月。初版は1990年2月)と、②井島正博(編著)・伊藤博美・中島ひとみ(著)『詳説 古典文法』(筑摩書房、2012年12月)の2冊。また、学習者向けの古語辞典は、③中村幸弘(編)『ベネッセ 全訳 コンパクト古語辞典』(1999年11月)と、④林巨樹・安藤千鶴子(編)『新 全訳 古語辞典』(大修館書店、2017年1月)の2冊。文法解析の内容は、ChatGPT と Copilot の AI でチェックしました。AIによる文法分析は大変便利なものですが、同じAIでも聞き方や、聞く日時によって微妙に違ってくるので、注意が必要。最終的な文責は栗木が負う。とりあえず先に進めることを重視し、慣れてきたら前に戻って推敲するつもりです。

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