2026年3月16日月曜日

【暗唱用76-80】『古今和歌集』巻第2 春歌下②[付・文法解析]

76 〈桜の花のちりける見てよみける〉 
                      素性法師
花ちらす風のやどりはたれかしる我にをしへよ行きて恨みむ


【 桜の花が散ったのを見て詠んだ歌

 花を散らす風の居場所はいったい誰が知っているのか
  私に教えてくれ、行って恨み言をいおう

 ※桜 の 花 の[名詞+格助詞(連体修飾)+名詞+格助詞(主格)]
   ちり ける[動詞(ラ四)連用形+過去の助動詞 けり 連体形]
        →桜の花が散った(のを)

 ※見 て よみ ける[動詞(マ上一)連用形+接続助詞
           +動詞(マ四)連用形+過去の助動詞 けり 連体形]
          →見て詠んだ(歌)


 ▼
 ※花 ちらす[名詞+動詞(サ四)連体形]
       →花を散らす

 ※風 の[名詞+格助詞(連体修飾)]
   やどり は[名詞+係助詞(主題提示)]
        →風の居場所は

 ※たれ か しる[代名詞+係助詞+動詞(ラ四)連体形]
         →いったい誰が知っているのか

 ※我 に[代名詞+格助詞(受け手:間接目的語)]
   をしへよ[動詞(ハ下二)命令形]
        →私に教えてくれ

 ※行き て[動詞(カ四)連用形+接続助詞]
   恨み む[動詞(マ上二)未然形+意志の助動詞 終止形]
       →行って恨もう

 ◯動詞の上二段活用(現代語とだいぶ違う)
   うらみ(ず)
   うらみ(けり・て)
   うらむ
   うらむる(とき)
   うらむれ(ば)
   うらめよ 】



77 〈うりんゐんにて桜の花をよめる〉
                   そうく法師
いざさくら我もちりなむひとさかりありなば人にうきめみえなむ


【 雲林院で桜の花を詠んだ歌

 さあ桜よ、私も散ってしまおう。
 (わが人生に)ひとさかりあったならば、
 (これからは)人には、憂き目にあっているように見えてしまうだろうから


 ※うりんゐん に て[名詞+格助詞+接続助詞]
           →雲林院で

 ※桜 の 花 を[名詞++格助詞(連体修飾)+名詞+格助詞(目的語)]
   よめ る[動詞(マ四)已然形+完了・存続の助動詞 り 連体形]
        →桜の花を詠んだ(歌)

 ※いざ さくら[感動詞+名詞]
        →さあ桜よ、


 ▼
 ※我 も[代名詞+係助詞(添加)]
   ちり な む[動詞(ラ四)連用形+完了・強意の助動詞 ぬ 未然形
        +意志の助動詞 む 終止形]
         →私も散ってしまおう

 ※ひとさかり[名詞]
        →ひとさかり

 ※あり な ば[動詞(ラ変)連用形+完了の助動詞 ぬ 未然形
        +接続助詞(仮定条件)]
        →あったならば

  人 に[名詞+格助詞(対象・受け手)]
      →人には

 ※うきめ[名詞]
   みえ な む[動詞(ヤ下二)連用形+強意の助動詞 ぬ 未然形
         +推量の助動詞 む 終止形]
         →憂き目にあっているように見えてしまうだろう】



78 〈あひしれりける人のまうできて、かへりにける後に、
    よみて花にさしてつかはしける〉 
                       貫之
ひとめみし君もやくると桜花けふはまちみてちらばちらなむ


【 互いに親しくなっていた人が訪ねてきて、帰ってしまった後に、詠んで送った歌

 (あのとき)一目見た君がもしや来るのではと、桜の花よ、
 今日は待ってみて、散るならば、いっそ散ってしまえ。
   (と思っていたら、訪ねてきてくれてうれしかった)


 ※あひ しれ り ける [接頭語+動詞(ラ四)已然形
           +存続の助動詞 り 連用形+過去の助動詞 けり 連体形]
           →互いに親しくなっていた

 ※ひと の[名詞+格助詞]
   まうで きて[動詞(ダ行下二)連用形+接続助詞(連用形接続)]
          →人がやって来て

 ※かへり に ける[動詞(ラ四)連用形+完了の助動詞 ぬ 連用形
          +過去の助動詞 けり 連体形]
   後 に[名詞+格助詞] 
      →帰ってしまった後で

 ※よみて[動詞(マ四)連用形+接続助詞]
      →詠んで

 ※花 に さし て[名詞+格助詞+動詞(サ四)連用形+接続助詞]
         →花に挿して

 ※つかはし ける[動詞(サ四)連用形+過去の助動詞 けり 連体形]
         →お送りした


 ▼
 ※ひとめ み し[名詞+動詞(マ上一)連用形+過去の助動詞 き 連体形]
         →一目見た

 ※君 も [名詞+係助詞+係助詞(疑問・反語)]
   くる と[動詞(カ変)連体形+格助詞(引用)]
       →君もくるだろうかと、

 ※桜花[名詞]

 ※けふ は[名詞+係助詞]
   まち み て[動詞(タ四)連用形
        +補助動詞(マ上一:試行)連用形+接続助詞]
         →今日は試しに待ってみて

 ※ちら ば[動詞(ラ四)未然形+接続助詞(仮定条件)]
   ちら な む[動詞(ラ四)未然形+強意の助動詞 ぬ 未然形
        +意志の助動詞 む 終止形]
         →もし散るならばいっそ散ってしまえ】



79 〈山の桜をみてよめる〉 
春霞なにかくすらむさくら花ちるまをだにもみるべき物を


【 山の桜を見て詠んだ歌

 春霞よ、なにを隠しているのだろうか、
 せめて桜の花が散る間だけでも
  見るべきものなのに


 ※山 の 桜 を[名詞+格助詞(連体修飾)
        +名詞+格助詞(目的語)]

 ※み て よめ る[動詞(マ上一)連用形+接続助詞
         +動詞(マ四)已然形+助動詞 り 連体形(完了)]
          →見て詠んだ(歌)


 ▼
 ※春霞[はるがすみ。名詞]
     →春の霞よ、

 ※なに かくす らむ[代名詞(疑問)+動詞(サ四)終止形
           +助動詞 らむ 終止形(現在推量)]
           →何を隠しているのだろうか。

 ※さくら花[名詞]
       →桜の花が

 ※ちる ま を[動詞(ラ四)連体形+名詞+格助詞(時間)]
   だに も[副助詞(せめて…だけでも)+係助詞(強意)]
       →せめて散る間だけでも

 ※みる べき[動詞(マ上一)終止形+助動詞 べし 連体形(当然)]
   物 を[名詞+接続助詞(逆接)]
      →見るべきものなのに】



80 〈心ちそこなひてわづらひける時に、風にあたらじとて、
   おろしこめてのみ侍りけるあひだに、
   をれる桜のちりがたになれりけるをみてよめる〉 
                    藤原因香朝臣
たれこめて春のゆくへもしらぬまにまちし桜もうつろひにけり


【 体調を崩して病気になった時に、風に当たるまいとして、
  戸を閉めこもってばかりいた間に、(部屋に)折って飾ってある桜が
  なかなか散らない状態になっていたのを見て詠んだ歌

 戸を閉めこもって、春がどこへ行くのかもわからないうちに、
 待ちわびていた(外の)桜も、散ってしまったことだなあ。



 ※心ちそこなひ て[動詞(ハ四)連用形+接続助詞(順接)]
   わづらひ ける[動詞(ハ四)連用形+助動詞 けり 連体形(過去)]
    時に[名詞+格助詞]
       →体調を崩して病気になった時に、

 ※風 に[名詞+格助詞]
   あたら じ[動詞(ラ四)未然形+助動詞 じ 終止形(打消意志)]
    とて[接続助詞(理由)]
     →風に当たるまいとして

 ※おろしこめ て のみ[動詞(マ下二)連用形+接続助詞+副助詞(限定)]
   侍り ける[動詞(ラ変)連用(丁寧、状態の継続)+助動詞(けり)連体形]
    あひだ に[名詞+格助詞]
     →(戸を)閉め切ってばかりいた間に

 ※をれ る[動詞(ラ四)已然形+助動詞 り 連体形(存続)]
   桜 の[名詞+格助詞]
      →折って飾ってある桜が

 ※ちりがた に[名詞+格助詞]
   なれ り ける[動詞(ラ四)已然形+助動詞 り 終止形(存続。結果状態の持続)
          +助動詞 けり 連体形(過去)]
          →なかなか散らない状態になっていたのを

 ※みてよめる[動詞(マ上一)連用形+接続助詞+動詞(マ四)連体形]
        →見て詠んだ(歌)


 ▼
 ※たれこめ て[動詞(マ下二)連用形+接続助詞]
        →(戸を)閉めこもって

 ※春 の ゆくへ も[名詞+格助詞+名詞+係助詞(強調)]
   しら ぬ ま に[動詞(ラ四)未然形+助動詞 ず 連体形(打消)
          +名詞+格助詞]
           →春がどこへ行くのかもわからないうちに

 ※まち し 桜 も[動詞(タ四)連用形+助動詞 き 連体形(過去)
         +名詞+係助詞]
          →待ちわびていた桜も

 ※うつろひ に けり[動詞(ハ四)連用形+助動詞 ぬ 連用形(完了)
           +助動詞 けり 終止形(詠嘆)]
           →散ってしまったことだなあ】



※個人的な暗唱用に。本文のテキストは、西本経一(にしした きょういち)校註『日本古典全書 古今和歌集』(毎日新聞社、1948年9月)による。解釈は今はおもに、久曽神昇(きゅうそじん ひたく)全訳注『古今和歌集(一)』(講談社学術文庫、1979年9月)と、小沢正夫(おざわ まさお)・松田茂穂(まつだ しげほ)校注・訳『完訳 日本の古典9 古今和歌集』(小学館、1983年4月)を参照している。
 
※ひたすら暗唱は飽きて来ました。どうせ読むのなら、やはり正確に意味がわかったほうが楽しい。とはいえ、1000年に及ぶ解釈の流れを踏まえる時間的な余裕はないので、まっさらな気持ちで、古典文法の定石通りに読んだらどう解釈できるのか、記していくことにしました。テキストと文法のみでどこまで読めるのか興味がわきました。
 手元にある高校生向けの古典文法の教科書は、①浜本純逸(監修)・黒川行信(編著)『九訂版 読解をたいせつにする体系 古典文法』(数研出版、2020年11月。初版は1990年2月)と、②井島正博(編著)・伊藤博美・中島ひとみ(著)『詳説 古典文法』(筑摩書房、2012年12月)の2冊。また、学習者向けの古語辞典は、③中村幸弘(編)『ベネッセ 全訳 コンパクト古語辞典』(1999年11月)と、④林巨樹・安藤千鶴子(編)『新 全訳 古語辞典』(大修館書店、2017年1月)の2冊。文法解析の内容は、ChatGPT と Copilot の AI でチェックしました。AIによる文法分析は大変便利なものですが、同じAIでも聞き方や、聞く日時によって微妙に違ってくるので、注意が必要。最終的な文責は栗木が負う。とりあえず先に進めることを重視し、慣れてきたら前に戻って推敲するつもりです。

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