イギリスの作家 A.A.ミルン(Alan Alexander Milne, 1882-1/18~1956-1/31)氏の児童小説『 Winnie-the-Pooh 』を、2017年6月に刊行された森絵都(もりえと)氏の翻訳(『クマのプー』角川文庫)で読みました。原書は1926年10月、ミルン氏44歳のときにイギリスのメシュエン出版(Methuen Publishing)から刊行されました。挿絵はE・H・シェパード(Ernest Howard Shepard, 1879-12/10~1976-3/24)氏。
森絵都 訳
村上勉(むらかみつとむ)絵
『クマのプー』
(角川文庫、2017年6月◇236頁)
手元には長らく、石井桃子(いしいももこ 1907-3/10~2008-4/2)氏の翻訳された『クマのプーさん』(岩波少年文庫〔新版〕2000年6月/〔旧版〕1956年10月)を置いてありました。石井訳は、1940年12月に岩波書店から『熊のプーさん』と題して刊行されたのが初出で、わりと最近になるまで『 Winnie-the-Pooh 』といえば石井訳の『クマのプーさん』を読む以外ありませんでした。シェパード氏の魅力的な挿絵とともに、今なお定番の位置を占めているといって良いでしょう。
ただ翻訳から80年以上も過ぎて、訳文に古めかしさが出てくるのは仕方のないところで、はじめて読むと案外読みにくく、個人的には今一つ馴染めないまま、「積ん読」状態が続いていました。
石井桃子 訳
E.H.シェパード 絵
E.H.シェパード 絵
『クマのプーさん』
(岩波少年文庫008〔新版〕2000年6月◇253頁)
※岩波少年文庫124(旧版)1956年10月◇256頁
その後、2014年3月に新潮社から阿川佐和子(あがわさわこ)氏の新訳『ウィニー・ザ・プー』が刊行された時すぐに手に入れてみましたが、阿川氏の個性的な文体と、内容を反映しない新しいイラストに今一つ馴染むことができませんでした。イラスト自体は可愛らしい、違和感のないものだったのですが、ストーリーの流れがあまり反映されておらず、初めて読む者にとって意図を理解しかねるところがありました。あくまで石井訳とシェパードの絵に慣れ親しんだ方々が、新しい刺激を求めて読むのに適しているように感じました。
阿川佐和子 訳
100%ORANGE(イラストレーション)
『ウィニー・ザ・プー』
『ウィニー・ザ・プー』
(新潮文庫、2016年7月◇222頁)
※単行本は新潮社、2014年3月◇206頁
阿川訳が新潮文庫に再録された翌年(2017年6月)、初めて角川文庫にお目見えしたのが、森絵都(もりえと)氏の翻訳された『クマのプー』でした。阿川訳の印象が強く残っていたため、あえて読まなくても良いかと手に取らずにいたのですが、最近ふと気になって読んでみたところ、言葉の選び方が実に的確。かゆいところに手が届く、今の言葉による優れた訳文で、納得のうちに読み終えることができました。村上勉(むらかみつとむ)氏による挿絵もシェパードのそれを忘れさせる見事な出来栄えで、文庫のみでひっそりと知られているのが惜しくなりました。近い将来、角川みらい文庫などにも収録して、広く知られるようになってもらいたい1冊です。
続いて第2作『プー通りの家』に進みます。
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