2013年12月30日月曜日

【読了】ボーム著(宮坂宏美 訳)『完訳 オズの魔法使い』〔平成23年〕

アメリカ合衆国の作家
ライマン・フランク・ボーム(1856.5-1919.5)の
小説『オズの魔法使い』を読みました。

44歳の時(1900)に出版された作品です。


ライマン・フランク・ボーム著
宮坂宏美(みやさかひろみ)訳
『完訳 オズの魔法使い』
(復刊ドットコム〔オズの魔法使いシリーズ1〕平成23年10月)


『オズの魔法使い』は、

昨年(2012)の9月に初めて、
オックスフォード・ブックワームズの1冊として、

やさしい英語で読んでみて面白かったので、
邦訳でも読もうと思っておりました。


14巻も続くオズ・シリーズすべてを
個人で完訳された佐藤高子氏の翻訳も、
今なお現役でそれなりに読みやすいのですが、


佐藤高子訳
『オズの魔法使い』
(ハヤカワ文庫、昭和49年11月)


平成23年10月から、

宮坂宏美(みやさかひろみ)、
ないとうふみこ、
田中亜希子(たなかあきこ)の3氏によって、

オズ・シリーズの長編14巻に、
短編集1巻を加えた計15巻からなる
〔オズの魔法使いシリーズ〕が刊行中なので、

そちらを読んでみることにしました。


これが大正解でした。

どこも翻訳調でない、
誰にでも良くわかる現在の日本語で訳されてあり、

心地良い日本語のリズムに乗って、
スイスイと読み通すことができました。

想像以上の面白さで、
へんてこりんなオズの世界を心から楽しむことができました。

『不思議の国のアリス』をもっとわかりやすくした感じかな、
とふと思い立ちました。


個人訳ではないので、
全巻このレベルで訳されているかは多少心配ですが、

これはぜひ、
続きも読んでみなければと思った次第です。


※Wikipediaの「ライマン・フランク・ボーム」

2013年12月28日土曜日

【読了】吉川英治 著『宮本武蔵(八)』〔新潮文庫〕

吉川英治(明治25年〔1892〕8月~昭和37年〔1962〕9月)が、
43歳の時(昭和12年〔1935〕)から4年かけて執筆した
小説『宮本武蔵』の第8巻を読み終えました。

今年の2月から読み始めていますので、
毎月1冊くらいのペースで、10ヶ月ほどで読み終わったことになります。


吉川英治 著
『宮本武蔵(八)』
〔新潮文庫、平成25年9月〕

 ※全編の初出は
  『朝日新聞』昭和10年(1935)8月23日から
   昭和14年(1939)7月11日まで。

最終巻に入ると、
これまで広げてあった筋書きが、
終結に向かって一つずつ解決していく様子が読み取れて、

あとは最後まで、
一気に読み終えることができました。

読み終わるまでは、
宮本武蔵が亡くなるまでのことが描かれていると思っていたので、

佐々木小次郎との戦いまでで
話がプツリと途切れてしまうのは、
若干意外な感じもありましたが、

もともと史実としての
「宮本武蔵」像にこだわった小説ではないので、
ちょうど良い加減の幕切れのようにも思いました。

また晩年の作である『五輪書』に一切言及されていなかったのも意外でしたが、

40代前半の吉川氏にとって、
晩年の武蔵がたどりついた境地とはまだ一定の距離があったのかもしれません。


全体を読んで感じるのは、

天才的といえる
吉川英治の文章の冴えです。

とてもわかりやすいのですが、
日本人としての心に訴えかけてくる、
独特の雰囲気のある文章で、

このレベルの文章は、
どうあがいても私には書けないな、
としきりに感心しながら読み進めていました。

読後に爽快な印象を残す小説で、
40代前半のうちに一度読んでおけて良かったです。


新潮文庫版の吉川英治、次は年明けに、
長編『新・平家物語』が出るようなので、そちらもまた読んでいこうと思います。


※Wikipediaの「宮本武蔵(小説)」「宮本武蔵」を参照。

【読了】Jane Austen, Persuasion (PR Level2)

やさしい英語の本、通算61冊目、
Penguin Readers の Level2の15冊目は、

イギリスの小説家
ジェーン・オースティン(1775.12-1817.7)の
小説『説得』を読みました。

41歳で亡くなったオースティンの遺作であり、

没後間もなくの1817年12月に、
処女作でありながら出版されて来なかった
小説『ノーサンガー・アビー』と合本で出版されました。


Jane Austen
Persuasion

Retold by Derek Strange
(Penguin Readers Level2)
This adaptation first published by Penguin Books Ltd 1991
This edition first published 2008
6,575語


『ノーサンガー・アビー』に続いて、
これが2冊目のオースティンになります。
1週間ほどで、あっさりと読み通すことができました。


『ノーサンガー・アビー』は、
マクミラン・リーダーズのレベル2であら筋を読んだ時には、
何でもない恋愛小説のどこが良いのかピンと来なかったのですが、

最近、中野康司訳(ちくま文庫)で全編を読んでみて、
オースティン独特の軽さのある恋愛小説に開眼したところです。

オースティンはあら筋だけでは良さがわかりにくいようです。


今回の『説得』も、
やさしい英語であら筋を読んだだけでは、
遺作だけあってそれなりに作り込まれているものの、
オーソドックスな恋愛小説の一つに思えました。

でもこれであら筋は押さえられましたので、

続いて全訳に取りかかろうと、
中野康司(なかのこうじ)訳を手に入れてあります。



ジェイン・オースティン著
中野康司訳
『説得』
(ちくま文庫、平成20年11月)

こちらもまた、意外に面白い!
と思いなおせると良いです。



※通算61冊目。計490,233語。

※Wikipedia の「ジェーン・オースティン」「説得(小説)」を参照。

2013年12月24日火曜日

【読了】Edith Nesbit, The Railway Children (PR Level2)

やさしい英語の本、通算60冊目、
Penguin Readers の Level2の14冊目は、

イギリスの小説家
イーディス・ネズビット(1858.8-1924.5)が執筆した
小説『鉄道きょうだい』(若草の祈り)を読みました。

ネズビット48歳の時(1906年)に出版された作品です。



Edith Nesbit
The Railway Children

Retold by Karen Holmes
(Penguin Readers Level2)
First published by Penguin Books Ltd 1999
This edition published 2008
4,890語


ちょうど全訳を読み終えていたこともありますが、

そうそうこんなあら筋だったなと、
数日であっさり読み終えることができました。

イギリスに蒸気機関車が走っていた時代の、
子供たちと鉄道とをめぐる心温まるお話です。

とある事情によって、
父親としばらく離れ離れにならなければなれなかった
母親ときょうだい3人(姉弟妹)の田舎暮らしが描かれています。

読んでいて、
ほのぼのと暖かい気持ちにさせられる作品です。


   ***

本書は昭和46年(1971)12月に
『若草の祈り』という邦題で日本公開された映画の原作で、

同年10月に岡本浜江氏の翻訳で、
角川文庫から出版されていますが、
現在は絶版のようです。

2年前(2011.12)に、
中村妙子(なかむらたえこ)氏による新訳が出版されており、
丁寧なつくりの表装とともに、オススメの1冊です。



イーディス・ネズビット著
中村妙子 訳
『鉄道きょうだい』
(教文館、平成23年12月)


※通算60冊目。計473,007語。

※Wikipedia の「イーディス・ネズビット」を参照。

2013年12月19日木曜日

【読了】オースティン著(中野康司 訳)『ノーサンガー・アビー』〔ちくま文庫、平成21年〕

イギリスの小説家
ジェイン・オースティン(1775.12-1817.7)の
小説『ノーサンガー・アビー』を読みました。

22-23歳の頃(1798-99)に執筆され、
27歳の時(1803)に出版されるはずだったのが中止になり、

40歳の時(1816)に再度出版に向けて準備していたものの、
実現しないまま翌年7月にオースティンが亡くなったため、

亡くなる直前に完成された小説『説得』と一緒に、
1817年12月に出版された作品です。


ジェイン・オースティン著
中野康司 訳
『ノーサンガー・アビー』
(ちくま文庫、平成21年9月)

恋愛小説というと、
ふつうはやや重めのものを連想しがちですが、

オースティンが冗談好き、
おしゃべり好きの明るい人柄だったのか、

軽めのタッチで、
多分にユーモアを含みつつ描かれた恋愛小説です。

この時代に、
これだけ軽妙洒脱な明るい小説が書かれていたことを知って驚きました。


女性同士のおしゃべりを、
横からながめているような雰囲気で、

それほど深刻にならずに、
明るい気持ちで全編楽しむことができました。

後から処女作ということを聞くと、
確かに多少、構成面で甘く感じられるところもあったのですが、

軽めに楽しめる恋愛小説として、
個人的には十分満足しました。


中野氏の訳文は、
とてもよくこなれており、
ふつうの現代小説を読むように、
すらすら読み進めることができました。

中野氏は全6作ある長編をすべて翻訳されていますので、
ぜひ他の作品にも挑戦していこうと思います。


※Wikipediaの「ジェーン・オースティン」「ノーサンガー僧院」を参照。

2013年12月18日水曜日

【読了】ネズビット著(中村妙子 訳)『鉄道きょうだい』〔教文館、平成23年〕

イギリスの小説家
イーディス・ネズビット(1858.8-1924.5)が執筆した
小説『鉄道きょうだい』(若草の祈り)を読みました。

ネズビット48歳の時(1906年)に出版された作品です。


イーディス・ネズビット著
中村妙子(なかむらたえこ)訳
『鉄道きょうだい』
〔教文館、平成23年11月〕


本書については何も知らなかったのですが、
ペンギン・リーダーズの目録をながめていた時に、
『The Railway Children』の書名が気になり調べてみたところ、

昭和46年(1971)12月に
『若草の祈り』という邦題で公開された映画の原作で、

同年10月に岡本浜江氏の翻訳で、
角川文庫から出版されていることもわかりました。

こちらは平成3年(1991)頃まで再版されていたようですが、
今は古本でしか手に入りません。


古本で手に入れようか迷っていた時に、
中村妙子(なかむらたえこ)氏による新訳が
『鉄道きょうだい』の邦題で出ていることを知り、
早速手に入れて読んでみました。


父が突然姿を消したのち、
母とともに田舎で過ごすことになった
3人きょうだい(姉弟妹)によって繰り広げられる
さまざまな生活模様が描かれています。

住まいの近くに鉄道の駅があって、
鉄道に関わる人びととの心温まる交流なども描かれており、
当時のイギリスの鉄道の様子が知られるのは興味深かったです。

父親が姿を消したのは
政治的な理由がからんで来るのですが、

物語の中では、
父親がいない、という現実にのみ向き合って、
ネズビットの政治的な主義主張が絡んでくることはないので、

ハッピーエンドの結末とともに、
楽しんで読める児童文学の名作の一つだと思いました。


中村妙子氏の翻訳もよくこなれており、
丁寧な表装とともに、よい一冊と出会えました。


※Wikipediaの「イーディス・ネズビット」を参照。

【読了】谷崎潤一郎著『細雪(上)』〔新潮文庫〕

谷崎潤一郎
(明治19年〔1886〕7月-昭和40年〔1965〕7月)の
小説『細雪(ささめゆき)』の上巻を読みました。

57歳の秋(昭和17年〔1942〕10月頃)から、
62歳の春(昭和23年〔1948〕5月)にかけて執筆された小説です。


谷崎潤一郎著
『細雪(上)』
(新潮文庫、昭和30年10月)
 ※平成23年3月改版。

谷崎潤一郎は、
近々「谷崎源氏」を読もうと思っているのですが、

その前に谷崎本人の作品で、
面白そうなものはないかなと思って探しているうちに、
『細雪』に出会いました。

中公文庫と新潮文庫から出ていますが、最近、
新潮文庫のほうが改版され、活字が大きくなりましたので、
読んでみることにしました。


まずは上巻を読んでみると、

昭和10年代の関西を舞台とした
上流社会に生きる4人姉妹のお話で、

恋愛小説というほどに、
色々なことが起きるわけでもないのですが、

なぜか先へ先へと読ませる力のある文章で、

関西弁には馴染みがないはずが、
古き良き時代の日本を懐かしむ感じがして、

独特の魅力を味わうことができました。


私の父や母が生まれた頃の出来事なので、
別世界というほどの距離は感じずに、

むしろ読んでいて懐かしい感じがして、

現代小説を読むのと何も変わりなく、
楽しい時間を過ごすことができました。


胸躍らせる恋愛や、
起伏に富んだ冒険が展開されるわけでもなく、

日常が語られていくだけなのに、
なぜか面白い。

恐らく20、30代の私に、
この物語の面白さはわからなかったと思いますので、

それだけ年を重ねたということなのでしょう。


※Wikipediaの「谷崎潤一郎」「細雪」を参照。

2013年12月14日土曜日

【読了】Nathaniel Hawthorne, The Scarlet Letter (PR Level2)

やさしい英語の本、通算59冊目、
Penguin Readers の Level2の13冊目は、

アメリカ合衆国の小説家
ナサニエル・ホーソーン(1804.7-1864.5)が執筆した
小説『緋文字(ひもんじ)』を読みました。

ホーソーン45歳の時(1850.3)に出版された作品です。


Nathaniel Hawthorne
The Scarlet Letter

Retold by Chris Rice
(Penguin Readers Level2)
First published by Penguin Books 2000
This edition published 2008
7,411語


『緋文字』という作品は、
これまで全く知らなかたのですが、
ペンギン・リーダーズのホームページを見て気になって、
購入してみました。


まずは翻訳をと思い、


ホーソーン著/小川高義(おがわたかよし)訳
『緋文字』〔光文社古典新訳文庫、平成25年2月〕

を手に取ってみました。

読みやすい訳文だと思うのですが、
延々と80頁も続く

「税関―『緋文字』序」

のつまらなさにうんざりし、

肝心の本文に入ってからも
言いまわしにまどろっこしい所があって、
それほど惹き込まれることもなかったので、
読むのをやめてしまいました。

結局初めから、
やさしい英語で読んでみることになりましたが、

わずか7000語にまとめてありますので、
どこも滞ることはなく、すらすら読み通すことができました。

ざっとあらすじを知ってみると、
悲劇を含んだ一種の恋愛小説として、
興味深い内容の作品であることがわかりました。

ただし、
キリスト教的な考え方を背景としているので、
深いところは完訳でじっくり向き合わないと
わからないようにも感じました。


恐らく、
古典的な格調高さを多少残した訳文のほうが
内容的に似合っているような気がしましたので、
もう少し時間を置いてから、


ホーソーン著/八木敏雄(やぎとしお)訳
『完訳 緋文字』〔岩波文庫、平成4年12月〕

に挑戦しようと思っています。



※通算59冊目。計468,117語。

※Wikipedia の「ナサニエル・ホーソーン」「緋文字」を参照。

2013年12月13日金曜日

【読了】塩野七生著『ローマ人の物語18 悪名高き皇帝たち [二]』

読み進めている塩野七生氏の『ローマ人の物語』、
第18巻を読み終えました。


塩野七生著
『ローマ人の物語18 悪名高き皇帝たち[二]』
(新潮文庫、平成17年9月)

 ※初出の単行本は第Ⅶ巻、新潮社、平成10年9月。

  第1部 皇帝ティベリウス(承前)
  (在位、紀元14年9月17日~37年3月16日)

  第2部 皇帝カリグラ ―本名 ガイウス・カエサル ―
  (在位、紀元37年3月18日~41年1月24日)


文庫本第18巻には、
第2代皇帝ティベリウス(BC42-AD37 在位AD14-37)
が亡くなるまでと、

あとを継いだ
第3代皇帝カリグラ(AD12-41 在位AD37-41)
が若くして暗殺されるまでを収録してあります。


西洋史を多少ひもとけば知っていて当然の人物なのでしょうが、

不勉強ゆえ、
ティベリウスについても、
カリグラについても初めて読みました。

このあたりの歴史について何も知識がないものが読んでも、

不思議と引き寄せられる塩野氏の文章力で、
楽しみながらまた1冊読み終わっていました。


優れた特質をそなえた支配者が、
カエサル→アウグストゥス→ティベリウス
と3代続いた後、

それほどの能力をもたない人物が
若くして皇帝となった場合、何が起きるのか。


読んでいてもどかしい気持ちになりましたが、

そもそも類まれな資質をもった人物が、
3代続けて国の支配者となること自体、
めったにないことなのだ、と理解すべきなのでしょう。

ローマでさえ、
いつも優れた指導者に導かれていたわけではないことを
知るのも大切なことなだと思いました。


※Wikipediaの「ティベリウス」「カリグラ」を参照。