2012年6月28日木曜日

【読了】塩野七生『ローマ人の物語』11

塩野七生氏の『ローマ人の物語』、
11冊目を読み終えました。


塩野七生 著
『ローマ人の物語11 ユリウス・カエサル ルビコン以後[上]』
(新潮文庫、平成16年10月。初出は平成8年4月)

※第六章 壮年後期 Virilitas
 紀元前四九年一月~前四四年三月
 (カエサル五十歳―五十五歳)


ユリウス・カエサルの評伝の後半、
6冊中の4冊目に入りました。

主に、カエサル本人が『内乱記』に記した内容と重複し、

ルビコン川を渡ってから、
ポンペイウスとの戦いが決着するまでを描いています。

したり顔で記すようなことは何も知りません。

ただそんな私にとっても、
塩野氏の叙述はとてもわかりやすく、
先へ先へと読み進めることができました。

まだ2冊残っていますが、
確かにこれはすごい人物がいたものだと、
カエサルのファンになっている私がおりました。


巻末でクレオパトラが登場したところで、

数年前に観た、
エリザベス・テイラーの演じる
映画「クレオパトラ」の場面を思い出しました。

歴史的な背景をなにも知らなかったので、
DVDで、かなり退屈しながら観た記憶がありますが、

今ならまた違った感想になるのかな、
と思っております。

2012年6月26日火曜日

【読了】與謝野晶子 『全訳 源氏物語 四』



紫式部 著/與謝野晶子 訳
『全訳 源氏物語 四 新装版』
(角川文庫、平成20年5月)

※第4巻には、
 「柏木(かしわぎ)」
 「横笛(よこぶえ)」
 「鈴虫(すずむし)」
 「夕霧(ゆうぎり)一」
 「夕霧(ゆうぎり)二」
 「御法(みのり)」
 「まぼろし」
 「雲隠れ(くもがくれ)」
 「匂宮(におうみや)」
 「紅梅(こうばい)」
 「竹河(たけかわ)」
 「橋姫(はしひめ)」
 「椎が本(しいがもと)」
 「総角(あげまき)」
までの計14帖が収録されています。


與謝野晶子全訳の『源氏物語』、
ようやく第4巻を読み終えました。

前の巻を読んでから、
いつの間にか3ヶ月以上たってしまいました。

年度替わりにいろいろと、
新しい本を読みはじめたこともありますが、


光源氏が亡くなるまでで、
いったん力尽きたというか、

その後の展開について、
紫式部自身、少し立ち止まって、
模索しながら書き進めているようなところがありました。


私自身、まだここから先のストーリーを
よく知らないこともありますが、

時折中断し、また思い出したように
読み進めることをくり返しておりました。


「雲隠れ」以降、
紫式部以外の誰かが書いたのではないか、
とする学説もあるようですが、

この点については、
物語がもう少し頭に入ってきてから
改めて考えることにします。

今のところ、
あえて別人と考えざるを得ないほどの
違和感は感じませんでした。


與謝野源氏、
あと1冊残っています。
何とか秋までには、区切りをつけたいと思っております。

2012年6月23日土曜日

【読了】L.M.Montgomery, Anne of Green Gables (PAR Level 2)

やさしい英語の本、通算23冊目、
Peguin Active Reading の Level 2 から、

カナダの小説家
ルーシー・モード・モンゴメリ(1874年生 1942年没)
の名作『赤毛のアン』を読みました。


L.M.Montgomery
Anne of Green Gables

Retold by Anne Collins
(Penguin Active Reading Level 2)
2007年刊(7,856語)


『赤毛のアン』の書名は、
物心ついたころから知っていましたが、
十代二十代のころは、女の子が読む本と思い込んで、
ほとんど見向きもしませんでした。

三十代も半ばを過ぎたころに、
ふと、読んでみようと思いたち、
文庫本で、風景画の表紙が美しい、
掛川恭子氏の手になる「完訳クラシック 赤毛のアン」
のシリーズを読んで行きました。

確か6冊目まで読んだところで中断してしまったので、
まだ全巻読み終えてはいませんが、
はじめの数冊目までの圧倒的な魅力は
十分に感じ取ることができました。

『赤毛のアン』は、ぜひ原著でも、
楽しめるようになりたいと思っております。


さてこの Penguin Active Reading Level 2
に収録されているリトールド版は、

やさしすぎの感もありますが、
美しい挿絵とともに、1週間もかからず、
楽しんで読み終えることができました。

有名な場面はすべて含んでいますから、
そういえばこういう話だったよなと、
あらすじをざっとたどり直すのに最適です。



『赤毛のアン』は、
村岡花子氏が日本に紹介されて以来、
国民に広く親しまれてきた作品ですので、
優れた翻訳がたくさん出ています。

いくつかご紹介します。

わかりやすさでダントツなのが、
掛川恭子氏の翻訳です。


掛川恭子 訳『完訳クラシック 赤毛のアン1 赤毛のアン』
(講談社文庫、平成17年4月。初出は講談社、平成11年5月)

シリーズが文庫本で
すべて揃っているところもありがたく、

『源氏物語』を読了次第、
もう一度、挑戦したいと思っております。



外せないのが、
定盤ともいえる村岡花子氏の翻訳です。



村岡花子 訳『赤毛のアン・シリーズ1 赤毛のアン』
(新潮文庫、平成20年2月)
※花岡美枝・恵里両氏による補訳、改訂版。
※新潮文庫への旧版収録は昭和29年7月。

前に少し読んでみたときには、
訳文が固く古めかしい感じがして遠ざけていたのですが、

最近読みなおしてみると、
作品の成立した時代(1908年)の雰囲気を
よく伝える味わい深い、品のある訳文だと、
思いなおすようになりました。

音読したときのリズムの心地良さは、
村岡訳が一番だと思います。



一つ注意しておきたいのは、
村岡花子訳には2種類あることです。

新潮文庫に収録されている村岡花子訳は
「である」調で統一されているのに対して、

同じく村岡花子訳として、
講談社青い鳥文庫に収録されているものは
「です・ます」調で統一されていて、

印象のまったく異なる訳文となっております。


村岡花子 訳『赤毛のアン(新装版)』
(講談社青い鳥文庫、平成20年7月)
※村岡美枝氏による改訂版。
※講談社青い鳥文庫への旧版収録は昭和59年7月。
 このときの解説は村岡みどり氏。

講談社青い鳥文庫に初収録(昭和59年)されたのは、
村岡花子氏の没後(昭和43年)しばらくたってからなので、

「です・ます」調への改変は、
ご子息の手による可能性もありますが、
巻末には文体の変更についてまったく言及がないので、
花子氏が原稿のみ用意されていた可能性もあります。

今のところ経緯は不明としておきます。


講談社青い鳥文庫は、総ルビ付きで、
挿絵もかわいらしいので、
最初に手に取る方も多いと思われますが、

「です・ます」調の訳文がややまどろっこしく、
新潮文庫本の歯切れのよい訳文を知っている身からすると、
今ひとつの感がありました。

ただし初めて読む分には、
なんら問題のない訳文だと思います。



総ルビ付きで、かわいらしい挿絵もあって、
とにかく読みやすく編集されているものとしては、



木村由利子 訳『新訳 赤毛のアン』
(集英社みらい文庫、平成23年3月)

が一番お薦めです。

小中学生のうちに、
作品の魅力にの気がつくためには、
これで十分だと思いますし、大人が読んでも楽しめました。


※計23冊 計197,270語

【読了】中村仁一 『大往生したけりゃ医療とかかわるな ― 「自然死」 のすすめ』



中村仁一 著
『大往生したけりゃ医療とかかわるな ― 「自然死」 のすすめ』
(幻冬舎新書、平成24年1月)

本屋さんで偶然手にとって、一気に読み終えました。

伝統的な宗教に批判的なところもあって、
若干行き過ぎの感もありますが、
色々と考えさせられる1冊でした。


お医者さんの立場から、

7、80年生きて来て、
本人に自覚症状がないうちに進行していたような癌は、

自らの寿命として受け入れて、
下手に最新の医療技術で立ち向かおうとしなければ、

痛みにのたうちまわることもなく、
「自然死」を迎えることができる、

という指摘は、たいへん勉強になりました。



どう死ぬのかという問題は、基本的に、
自分の思い通りになることではありません。

そのためもあってか、
ふだんはあまり詳しく考えないで、

死に直面する状況が生じ、
自分ではほとんど意志を表明できなくなってから、

身近な家族任せ、そして病院任せで、

良かれと思ってしてくれる医療、介護を受けて、
寿命を迎えるというのが

よくあるケースだと思います。



しかし、終末期医療の中には、
寿命を長く保たせることにのみ重点をおき、

患者が、個人としての尊厳を保ちつつ、
心安らかに、穏やかな気持で死んでいくことについては、

必ずしも最優先の課題となっていない面がある、

という指摘も、
お医者さんの立場からいわれると、

ああやっぱりそうなんだ、
と納得できる所がありました。



もちろん
一概には言えないこともあるはずですが、

仮に自分ならどうされたいのか、
そして身近な家族についてどうしてあげるのが最善なのか、

考える上での、一つの良い材料になると思いました。



死の間際において
何を優先すべきなのか、という問題は、

医療というよりは、むしろ
個人の生き方、信条、宗教観といった
「心」の問題、価値観の問題なので、

すぐに一つの結論には絞り込みにくいかもしれません。


むしろ国民ひとりひとりが、よく考えて、
幸福に思えるいくつかの死に様を、
それぞれに選んでいけるようになったら、

いいなと思います。

2012年6月19日火曜日

【読了】坂井三郎 『大空のサムライ 上』


坂井三郎 著
『大空のサムライ 上 ― 死闘の果てに悔いなし』
(講談社プラスアルファ文庫、平成13年4月)


『大空のサムライ』の書名は前から知っていましたが、
その重要性に気づくことなく、今まで過ごして参りました。


近現代史には昔から興味があるのですが、
車や船や飛行機にあまり興味がないからか、

具体的な戦史となると、
どこから手を付けたらよいのかわからなかった
というのが正直なところです。


最近、中川八洋氏の『山本五十六の大罪』を読み、

海軍の実情を語る際の傍証として、
坂井氏の著書(零戦の最後)が引用されていたのを見て、

自分でも読んでみようと思いたちました。


現在、すぐに手に入るのが、
講談社プラスアルファ文庫に収録されている
上下2冊本でしたので、そちらを購入しました。

まだ上巻を読み終わっただけですが、
こういう現場で戦った軍人さんの眼からみた、
戦史というものを、

私はこれまであまり重視して来なかったなあ、
と反省しました。


読んでまず驚いたのは、
記述が非常に詳細なことでした。

記憶をたどるだけでは、
とてもこれだけのものは書けない、
と思いました。


詳しくはまだこれから調べますが、
詳細な日記をつけておられたとのことです。

それなら合点がいきますが、

その日に起こった戦闘について、
ふりかえって詳細な記録をつけ続けること自体、
簡単なことではないはずなので、
坂井氏の能力の高さに感心しました。


冷静に考えれば、
戦闘機を操縦し、敵機を撃墜することは、
精神論だけでどうにかなるわけはなく、

高度な知的水準を備えた人たちが、
零戦に搭乗されていたことを知っただけでも、
本書を読んだ価値がありました。


まだ知らないことばかりの状態ですので、

今後、勉強を続けながら、
たびたび再読していきたいと思います。


なおよく売れた本であるからか、

書誌的にほぼ同じ内容のものが、
書名のみ変えて何度か出版されているようです。

とりあえず、わかったことだけ記しておきます。

講談社プラスアルファ文庫が出た翌年に、

光人社NF文庫から、
『大空のサムライ』3冊本に、
対談本1冊をそえたのものが出ています。

『大空のサムライ ― かえらざる零戦隊』
 (光人社NF文庫、新装改訂版、平成15年4月)
『続・大空のサムライ ― 回想のエースたち』
 (光人社NF文庫、新装改訂版、平成15年4月)
『戦話・大空のサムライ ― 可能性に挑戦し征服する極意』
 (光人社NF文庫、新装改訂版、平成15年4月)

坂井三郎・高城肇 著
『大空のサムライ・完結編 ― 撃墜王との対話』
 (光人社NF文庫、平成15年7月)


一番はじめに、これらの元本として、

『坂井三郎 空戦記録』(講談社、新版、平成4年12月)

が出版されているようです。

これらの各冊の関係、初出年代は、
これから調べ、わかりしだいブログを更新していきます

2012年6月11日月曜日

【読了】R.D.Blackmore , Lorna Doone (MMR Beginner)

やさしい英語の本、通算22冊目、
マクミラン・リーダーズのビギナー・レベル17冊目は、

イギリスの作家
リチャード・ドダリッジ・ブラックモア(1825年生 1900年没)の
歴史(恋愛)小説『ローナ・ドゥーン』を読みました。



Richard Dodderidge Blackmore
Lorna Doone

Retold by Jhon Escott
 (Macmillan Readers Beginner)
1999年刊(10,453語)


R・D・ブラックモアについては、
これまで全く知りませんでした。

1869年に発表された『ローナ・ドゥーン』は
彼の代表作としてイギリスではよく知られた作品で、
何度か映画化もされているようですが、
日本では未公開です。

ブラックモアの作品は、他のも含めて、
邦訳は出版されていないようです。

英米文学はほとんど日本語で読めるのかしらん、
と思っていましたが、意外と翻訳されていないものもありますね。

歴史的な背景をふまえた小説だと、

かなり詳しく歴史や地理について
勉強していないと翻訳できないでしょうから、
何でもかんでも、というわけにはいかないでしょう。


ブラックモアについて、
おそらく世界文学事典の類いをひけば、
もう少しわかることもあるでしょうが、
あいにく手もとにないので、

今後新たにわかることがあれば、
ブログにアップして行きます。


本書の内容は、
時代的な背景が飲み込めるまでに
少し時間がかかりましたが、

正統派の恋愛小説で、
こうあって欲しいと思う方向に話が進んでいき、
ふつうに楽しんで読み進めることができました。

もとはかなりの大著のようなので、
原著を楽しむまでにはまだ時間がかかりそうですが、

もう少し詳しくしたリトールド版も出ているようなので、
今後読んでいきたいと思います。


※計22冊 計189,414語。もうすぐ20万語到達です

2012年6月4日月曜日

【読了】スティーブンソン著 『宝島』(金原瑞人 訳)

イギリスの作家
スティーブンソンの名作『宝島』を
金原瑞人氏の翻訳で読みました。


ロバート・ルイス・スティーブンソン著/金原瑞人 訳
『宝島』(偕成社文庫、平成6年10月)

スティーブンソンの作品は、
先に英語のリトールド版で『ジキル博士とハイド氏』を読みましたので、
次は『宝島』をと思っておりました。

少年時代、
冒険小説は好きな方でしたが、
不思議と『宝島』は読まぬまま、
40を迎えておりました。


リトールド版の方もすでに購入してありますが、
翻訳の方を少し読みだしたところが、

そのまま引き込まれて、
一気に最後まで読み終えておりました。


確かにこれは、
よく練り上げられた小説で、
ほどほどな長さで次から次へと場面が展開し、

次はどうなるのだろう、
その次はどうなるのだろうと思っているうちに、
あっという間に終りを迎えておりました。


少年時代のことをふり返りつつ、
大人が読んでも十分におもしろい、
よくできた娯楽小説だと思います。


翻訳はよく読み比べたわけではありませんが、

本屋で何冊か手に取ってみて、
一番歯切れよく、読みやすかった
金原瑞人氏の訳を購入しました。


他にもすぐに手に入る翻訳としては、
次のものがあるようです。

 佐々木直次郎・稲沢秀夫 訳(新潮文庫、改版、昭和26年3月)
 阿部知ニ 訳(岩波文庫、改版、昭和38年6月)
 飯島淳秀 訳(講談社青い鳥文庫、平成6年7月)
 海保眞夫 訳(岩波少年文庫、平成12年10月)
 坂井晴彦 訳(福音館文庫、平成14年6月)
 村上博基 訳(光文社古典新訳文庫、平成20年2月)


作品の醍醐味はわかりましたので、
他の翻訳も楽しみつつ、これはぜひ、原著の英文も楽しみたい、
と思いました。