2013年10月30日水曜日

【読了】ユゴー著(佐藤朔訳)『レ・ミゼラブル(五)』〔新潮文庫〕

フランスの作家
ヴィクトル・ユゴー(1802.2-1885.5)が
43歳から60歳(1845-1862)にかけて、
17年間を費やして執筆した大作

『レ・ミゼラブル』
第五部「ジャン・ヴァルジャン」
を読み終えました。



ヴィクトル・ユゴー著/佐藤朔訳
『レ・ミゼラブル(五)』
(新潮文庫、改版、平成24年11月。昭和42年9月)

 ※第五部 ジャン・ヴァルジャン
  第一章 壁に囲まれた戦争
  第二章 巨獣のはらわた
  第三章 泥で、しかも魂
  第四章 脱線したジャヴェール
  第五章 孫と祖父
  第六章 眠れない夜
  第七章 苦杯の最後の一口
  第八章 黄昏の薄れる光
  第九章 最後の闇、最後の曙


ようやく全巻読み終わりました。
今年の1月26日(土)に第1巻を読み終えているので、

年明けから読み始めたとすると、
読了まで10ヶ月かかったことになります。

3・4巻でユゴーの政治的な主張が絡んでくると、
陳腐な感じがして足踏みしていましたが、

5巻も後半に入り、
政治的な話が消えると、
息を吹き返した感じになって、

そのまま一気に終結に向け、駆け抜けていきました。


全体として、

ユゴーが人びとの喜怒哀楽、
複雑な感情の絡み合いを描いている部分は、

すっと心に入って来て、
共感のうちに読み進めることが出来たのですが、

ユゴーの政治家としての主張が混じってくると、
一気に物語が滞り、色褪せて感じられました。


全体的に、
推敲前の原稿をそのまま読んでいる感じがあるので、

あまり面白くない部分をカットした編訳版のほうが、
読まれているのも理解できました。


佐藤氏の翻訳は、
日本語としてのリズム、流れを重視したもので、
テンポ良く読み進めることができたので、
とても満足しています。

ただし高校レベル位までの熟語(漢字)は
ふつうに出てくるので、大人向けといえるかもしれません。


いくつか手に取った完訳版の中で、
訳文がいちばんわかりやすかったのは
辻昶(つじ とおる)氏の翻訳だったのですが、

わかりやすい分、日本語としての
流れが若干失われている感じがありました。

熟読はしていないので、
次に読むならこれ、と思っています。


ヴィクトル・ユゴー著/辻昶 訳
『レ・ミゼラブル〈1-5〉』
(潮出版社、潮文学ライブラリー、平成21年7-9月)


※Wikipediaの「ヴィクトル・ユーゴー」「レ・ミゼラブル」を参照。

2013年10月16日水曜日

【読了】Thomas Hardy, The Withered Arm (OBW Stage1)

やさしい英語の本、通算54冊目、
Oxfprd Bookworms の Stage1の10冊目は、

イギリスの小説家
トーマス・ハーディ(1840.6-1928.1)の
短編小説『呪われた腕(萎えた腕)』を読みました。

ハーディ43歳の時(1887)に執筆された作品で、

翌年(1888)出版された
第1短編集『ウェセックス物語』に収録されています。


Thomas Hardy
The Withered Arm

Retold by Jennifer Basset
(Oxford Bookworms Stage1)

This simplified edition (C) Oxford University Press 2008
First published in Oxford Bookworms 2004
5,735語


ハーディを読むのは、
多読をはじめたころ(2011年9月)に、

Mcmillan Readers の Level2で
『らっぱ隊長 (The Trumpet-Major)』を読んで以来のことです。

1、2週間かけるつもりだったのですが、
波長が合ったのか、2日で読み終わりました。

幽霊あり、迷信あり、死刑場ありで、
おどろおどろしい感じの小説ですが、
先へ先へと読ませる力がありました。


翻訳は、

トーマス・ハーディ著/河野一郎 訳
『ハーディ短編集』(新潮文庫、昭和32年12月)

に「呪われた腕」と題して収録されています。
今は絶版ですが、一番安く手に入るので近々購入する予定です。

もう一つ、
もとの短編集『ウェセックス物語』自体も邦訳は出ていますが、
多少お高いです。

藤田繁・内田能嗣 監訳
『トマス・ハーディ短編全集〈第一巻〉ウェセックス物語』
(大阪教育図書、平成13年2月)

こちらに「萎えた腕」(小林千春 訳)と題して収録されています。

『らっぱ隊長』の時はあまりピンと来なかったのですが、
ハーディって面白いかもしれない、と思い始めました。


※通算54冊目。計436,550語。

※Wikipedia の「トーマス・ハーディ」を参照。
※宮本義久「ウェセックス物語試論」(『長崎大学教養部紀要 人文科学篇』第32巻第1号、平成3年7月)を参照。

2013年10月14日月曜日

【読了】Alexandre Dumas, The Three Musketeers (PR Level2)

やさしい英語の本、通算53冊目、
Penguin Readers の Level2の12冊目は、

フランスの小説家、
アレクサンドル・デュマ(1802.7.24-1870.12)の
小説『三銃士』を読みました。

デュマ41歳の時(1844.3.14-7.14)に発表された新聞小説です。
原作はフランス語です。



Alexandre Dumas
The Three Musketeers

Retold by Diane Mowat
(Penguin Readers Level2)

First published by Penguin Books 2000
This edition published 2008
8,557語


今年の6月にも、
Macmillan Readers の Level2(Beginner) で読んでいるので、
2度目の『三銃士』となりました。

フランス語の地名に少し手間どりましたが、
人名は覚えていたので前よりスムーズでした。

Macmillan Readers より2000語ほど少ないのですが、
こちらの方が多少読みにくく感じました。

『三銃士』は初めのうち、
面白さのツボが良くわからなかったのですが、
翻案されているとはいえ何度か読んでくると、

周知のストーリーが展開するさまを、
それなりに楽しめるようになって来ました。

そろそろ完訳で読んでみようと思っていますが、
かなりの大著なのでなかなか時間が取れません。

翻訳は『三銃士』だけなら選択肢がたくさんあるのですが、

続編も含めた「ダルタニャン物語」全12巻の個人訳をなしとげられた
鈴木力衛(すずき りきえ)氏の翻訳で読もうと思い、購入はしてあります。


鈴木力衛訳
『ダルタニャン物語1 友を選ばば三銃士』
(ブッキング、平成13年月)


鈴木力衛訳
『ダルタニャン物語2 妖婦ミレディーの秘密』
(ブッキング、平成13年2月)

写真では伝わりませんが、美しい装丁のいい感じの書物です。

1冊の編訳版はいろいろ出ていますが、


藤本ひとみ 編訳『三銃士』
(講談社青い鳥文庫、平成21年11月)

がオススメです。絵柄が子供向けなので手に取るのを躊躇してしまいますが、中身はしっかりしているので、『三銃士』入門には最適だと思います。


通算53冊目。計430,815語

※Wikipedia の「アレクサンドル・デュマ・ペール」を参照。

2013年10月12日土曜日

【読了】ヤンソン著(冨原眞弓訳)『小さなトロールと大きな洪水』

フィンランドの首都ヘルシンキ生まれの
画家、小説家トーベ・ヤンソン(1914.8-2001.6)の

ムーミン・シリーズ第1作、
小説『小さなトロールと大きな洪水』を読みました。

ヤンソン31歳の時(1945)に出版された作品です。

注目されぬまま絶版になり、
1991年まで再販されなかったため、

ムーミンシリーズの第1作として
一般に認識されたのは1990年代に入ってからだそうです。


ヤンソンはフィンランド生まれですが、
スウェーデン語系のフィンランド人なので、

ムーミンの原作はフィンランド語ではなく、
スウェーデン語で書かれているそうです。


 トーベ・ヤンソン著
冨原眞弓(とみはらまゆみ)訳
『小さなトロールと大きな洪水』
(講談社文庫、平成23年9月)
 ※初出は講談社 ムーミン童話全集、平成4年(1992)6月。
  講談社青い鳥文庫、平成11年2月に再録。

来年はヤンソン生誕100年のためか、
本屋で見かける機会も増えてきましたので、
1冊手に取ってみることにしました。

ムーミンといえばアニメの印象が強いのですが、
私が生まれたころには最初の放送が終わっていました。

その後の再放送で度々見かけていたからか、
ムーミンやスナフキンの姿かたちは覚えていましたが、

当時こうしたファンタジー系のお話に
夢中になることはほとんどなかったので、
今に至るまで、一体どんな物語なのかは知らないままでした。


最近になって興味が出て来たものの、
どれから読んだら良いのかわからなくて、
『たのしいムーミン一家』と『ムーミン谷の彗星』を購入しましたが、

舞台設定の説明もなく、
いきなり話が展開してくので、
違和感が大きくなって中断してしまいました。

そこで、
1番最初にさかのぼれば良いのかなと思って、
今回『小さなトロールと大きな洪水』を読んでみると、

ムーミントロールって何?
という基本的なところから説明されていて、

またこれから様々な物語が展開していく
「ムーミン谷」に辿りつくまでの経緯も明らかになって、

ムーミン・シリーズを読み進めていく上での、
土台が整えられているように感じました。


これなら他の作品も楽しめそうです。

シリーズは9冊しかないので、

不思議な不思議な、
しかし北欧のほの暗さも感じさせる、
独特なファンタジーの世界を楽しんでいこうと思います。


※Wikipediaの「トーベ・ヤンソン」「ムーミン(アニメ)」を参照。