2014年8月25日月曜日

【読了】Bram Stoker, Dracula (OBW Stage2)

やさしい英語の本、通算83冊目、
Oxford Bookworms のStage2(700語レベル)の16冊目は、

アイルランドの小説家
ブラム・ストーカー(1847.11-1912.4)の
恐怖小説『ドラキュラ』を読みました。

ブラム50歳の時(1897)に出版された作品です。


Bram Stoker
Dracula
Retold by Diane Mowat
(Oxford Bookworms Stage2)
This edition (c)Oxford University Press 2008
First published in Oxford Bookworms 1996
7,875語

ホラーものにはほとんど興味がないのですが、
やさしい英語のシリーズをいろいろ見ていくと、

『ドラキュラ』の他にも
『フランケンシュタイン』や、
エドガー・アラン・ポーなどの恐怖小説が、
英文学の一分野をなしていることに気がつかされます。

読まず嫌いはいけないので、
1冊手に取ってみることにしました。

吸血鬼にもドラキュラにも
特に興味のない人生を送ってきたので、

その手の映画を観る機会もありませんでしたが、

ブラム・ストーカーの
『ドラキュラ』によって初めて、
「吸血鬼ドラキュラ」像が描き出されたそうです。


実際読んでみると、
場面展開の巧みさ、
登場人物の心理描写の巧みさで、
思わず引き込まれて、一気に読み終えることができました。

確かに恐いのですが、
病的な不自然な恐さはあまりなく、
これなら私にも読める、と思いました。

ぜひ翻訳をと思っていたところ、
田内志文(たうちしもん)氏による新訳が

今年の5月に出ていましたので、
購入して読んでいるところです。


田内志文訳
『吸血鬼ドラキュラ』
(角川文庫、平成26年5月)

まだ4分の1くらいしか読んでいません。

田内氏のわかりやすい翻訳によるところも大きいと思いますが、

情景描写にも優れていて、
ぐいぐい読ませる力のある小説であって、
読む楽しさを存分に味わえます。



平井呈一訳
『吸血鬼ドラキュラ』
(創元推理文庫、昭和46年4月)

『吸血鬼ドラキュラ』といえば、
平井呈一(ひらいていいち)氏の翻訳が長らく定番だったようですが、

今読むと古めの言いまわしが多く、
かなり読みづらく感じるので、

初めて読むのであれば、
田内氏の新訳の方をお薦めします。


※通算83冊目。計649,313語。

※Wikipediaの「ブラム・ストーカー」「ドラキュラ」を参照。

2014年8月21日木曜日

【読了】D.H. Lawrence, Love among the Haystacks (OBW Stage2)

やさしい英語の本、通算82冊目、
Oxford Bookworms のStage2(700語レベル)の15冊目は、

イギリスの小説家
デーヴィッド・ハーバート・ローレンス(1885.9-1930.3)の
短編小説『乾し草小屋の恋』を読みました。

ローレンス26歳の時(1911.11)に
いったんは仕上がっていたものの、

投稿した雑誌から突き返されたため、
推敲を繰り返しているうちに亡くなってしまい、

没後1930年に初めて刊行された作品です。


D. H. Lawrence
Love among the Haystacks

Retold by Jennifer Bassett
(Oxford Bookworms Stage2)
This simplified edition (c)Oxford University Press 2008
First published in Oxford Bookworms 2004
7,030語

D.H.ローレンス、
どこかで聞いた気がして調べてみると、

名のみ知る
『チャタレイ夫人の恋人』
の著者でした。

実際に読んだことはないので、
初ローレンスになります。


イギリスの農場で、
干し草刈りの仕事を手伝う兄弟が、

ふと巡りあった
素朴な恋愛の一齣を切り抜いてみせた小説です。


読んでいて嫌な印象はないのですが、

意外にあっさりしていて、
深みに乏しい気がしました。

恋愛のみずみずしい一齣を、
新鮮な印象で描き出すことに心を砕いていたのでしょうか。


これだけではまだ何とも言えませんが、

じゃあもう一冊、
と言えるほどの興味はわいて来ませんでした。


翻訳は、

乾し草小屋の恋―ロレンス短篇集 (福武文庫)

D.H.ロレンス著
西村孝次(にしむらこうじ)訳
『乾し草小屋の恋 ―ロレンス短篇集』
(福武文庫、平成4年11月)

が見つかりました。

正確な訳文で、
どんな作品か理解するには十分ですが、

恐らく
発表時には感じられたであろう
作品の新鮮な印象が伝わってくるには、
多少堅めな感じがしました。

まだこの作品だけでは、
ロレンスのファンにはなれそうにありません。


※通算82冊目。計630,787語。

※Wikipediaの「デーヴィッド・ハーバート・ローレンス」を参照。

2014年8月15日金曜日

【読了】サン=テグジュペリ著(倉橋由美子 訳)『新訳 星の王子さま』

フランスの作家
アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ(1900.6-1944.7)の
小説『星の王子さま』を読みました。

テグジュペリが亡くなる前年、
43歳の時(1943)に刊行された作品です。


アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ著
倉橋由美子(くらはしゆみこ)訳
『新訳 星の王子さま』
(宝島社文庫、平成18年6月。初出の単行本は宝島社、平成17年7月)

書名だけ知っていて、
読まずにいた1冊です。

ふと手にした
倉橋由美子(くらはしゆみこ)氏の翻訳を気に入り、
いずれ読もうと思いつつ、しばらく積んでありました。

夏に入り、
何となく手にして読みはじめたところ、
そのまま一気に読み終えていました。


1度読んだだけで、
まだ何かがわかったといえる段階では全然ないのですが、

くりかえし読むに足る、
不思議な魅力のある繊細な作品であることは良くわかりました。


子供時代の
豊かな感受性をなくしつつある
大人の自分との対話であるようにも感じました。


美しい詩を読むような、
ふわりとしたつかみどころのない、
でも全体として十分なまとまりをもった
不思議な魅力のある小説でした。


   ***

翻訳はざっと調べただけでも
たくさん見つかりました。


内藤濯(ないとうあろう)訳
『星の王子さま』
(岩波少年文庫、昭和28年3月)

小島俊明 訳
『新訳 星の王子さま』
(中央公論新社、平成17年6月)
 ※中公文庫、平成18年3月に再録。

三野博司 訳
『星の王子さま』
(論創社 RONSO fantasy collection、平成17年6月)

倉橋由美子(くらはしゆみこ)訳
『新訳 星の王子さま』
(宝島社、平成17年7月)
 ※宝島社文庫、平成18年6月に再録。


山崎庸一郎 訳
『小さな王子さま』
(みすず書房、平成17年8月)

 ※山崎庸一郎著『『星の王子さま』のひと』(新潮文庫、平成12年5月)。初出は『サン=テグジュペリの生涯』(新潮選書、昭和46年)に興味がありますが、未見。

池澤夏樹 訳
『星の王子さま』
(集英社文庫、平成17年8月)

藤田尊潮 訳
『小さな王子 ―新訳『星の王子さま』』
(八坂書房、平成17年10月)

川上勉・甘樂美登利 訳
『プチ・プランス ―新訳 星の王子さま』
(グラフ社、平成17年10月)

石井洋二郎 訳
『星の王子さま』
(ちくま文庫、平成17年12月)

稲垣直樹 訳
『星の王子さま』
(平凡社ライブラリー、平成18年1月)

河野万里子 訳
『星の王子さま』
(新潮文庫、平成18年3月)

河原泰則 訳
『小さな星の王子さま』
(春秋社、平成18年5月)

谷川かおる訳
『星の王子さま』
(ポプラポケット文庫、平成18年7月)


野崎歓 訳
『小さな王子』
(光文社古典新訳文庫、平成18年9月)

三田誠広 訳
『星の王子さま』
(講談社青い鳥文庫、平成18年11月)

浅岡夢二 訳/葉祥明 絵
『星の王子さま』
(ゴマブックス、平成20年11月)

管啓次郎 訳
『星の王子さま』
(角川文庫、平成23年6月)


管啓次郎 訳/西原理恵子 絵
『星の王子さま』
(角川つばさ文庫、平成23年6月)

内藤あいさ訳
『星の王子さま』
(文芸社文庫、平成25年9月)


このうち山崎庸一郎氏のお仕事に興味がありますが、未見です。

ざっと目を通した中では、

野崎歓(のざきかん)訳の光文社古典新訳文庫 は、
今回の倉橋訳と双璧で、近々読んでみるつもりです。


もう一つ、
西原理恵子氏の絵が強烈ですが、
訳文もかなり斬新な、

管啓次郎(すがせいじろう)訳の角川つばさ文庫 も、
興味があります。


最初の感想としてはこれくらいでしょうか。


※Wikipediaの「アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ」「星の王子さま」を参照。

2014年8月11日月曜日

【読了】Captain Marryat, The Children of the New Forest (OBW Stage2)

やさしい英語の本、通算81冊目、
Oxford Bookworms のStage2(700語レベル)の14冊目は、

イギリスの作家
フレデリック・マリアット(1792.7-1848.8)の
小説『ニューフォレストの子供たち』を読みました。

マリアットが亡くなる前年、
55歳の時(1847)に刊行された作品です。


Captain Marryat
The Children of the New Forest

Retold by Rowena Akinyemi
(Oxford Bookworms Stage2)
This simplified edition (c)Oxford University Press 2008
First published in Oxford Bookworms 1996
6,605語


マリアットについて何も知らないので、
巻末の「ABOUT THE AUTHOR」を参照すると、

マリアットは1792年、ロンドン生まれ。

14歳の時(1806)イギリス海軍に入隊し、
28歳の時(1820)艦長に昇進したことにちなみ、

キャプテン・マリアットとも呼ばれたそうです。

38歳の時(1830)に海軍を除隊して以降、
作家活動に専念するようになりました。

一般向けの代表作として、

 Peter Simple (1834)
 Mr Midshipman Easy (1836)

の2作が挙げられています。

邦訳は、

伊藤俊男訳
『ピーター・シムプル』
(岩波文庫、上中下3冊、昭和16年10月、同17年5・9月)

があり、最近復刊されたようですが、未見です。


児童文学に取り組むようになったのは後年のことで、
この分野の代表作として、

 Masterman Ready (1841)
 The Children of the New Forest (1847)

の2作が上げられています。

近年はむしろ、
子供向けの作品で知られているようですが、
日本ではほとんど紹介されていないままのようです。


翻訳は私家版で、

ニューフォレストの子どもたち (1983年)

前川俊子訳
『ニューフォレストの子どもたち』
(私家版 岩波ブックセンター信山社、昭和58年5月 254頁)

が出ており私家版ですが、
古本で見つかったので手に入れてみたところ、
巻末の「あとがき」(253頁)に、

「忠実に全訳したためあまりに枚数がかさみ、
 これでは活字離れを嘆かれている世代に読んでもらえないのではと考え、
 さらにダイジェスト版作成のために年月を費やしてしまいました」

とあり、編訳版であることがわかりました。

とはいえ、
上下2段組で250頁になる分量で、
読み応えのある一冊に仕上がっています。

10数年かけて全訳したのち、
さらに12年かけて編訳版を完成しているので、

ていねいに推敲を重ねた
すぐれた翻訳になっていると思います。

このまま、
岩波少年文庫や偕成社文庫に収められていても、
何の遜色もありません。

近々読んでみようと思います。


  ***

父母を失った4人兄弟姉妹が
ニューフォレストの森で助け合いながら生き抜き、
それぞれに成長していく様を描いた歴史冒険小説です。


1645年のネイズビーの戦いで、
チャールズ1世率いる国王軍についた父が戦死。

(清教徒革命におけるイングランド内戦で、
 議会軍側の勝利を決定づけた戦い)

数ヶ月後に母をも失った4人兄弟姉妹が、

クロムウェル率いる
議会軍の連中に生家を焼かれ、
逃げのびたニューフォレストの森での暮らしが物語の中心となっています。

1649年にチャールズ1世が処刑され、
クロムウェルの独裁による共和国時代をへて、

1660年に王政復古し、
チャールズ2世が即位するまでが、
小説の背景として描かれてますので、

歴史冒険小説としても面白く読めると思います。


ぜひとも全文を読んでみたくなりました。


※通算81冊目。計623,757語。

※森護著『英国王室史話(下)』(中公文庫、平成12年3月)を参照。

※Wikipediaの「ネイズビーの戦い」「チャールズ1世(イングランド王)」「チャールズ2世(イングランド王)」「オリバー・クロムウェル」「清教徒革命」の各項目を参照。

2014年8月5日火曜日

【読了】シュウエル著(土井すぎの訳)『黒馬物語』〔岩波少年文庫〕

イギリスの作家
アンナ・シュウエル(1820.3-1878.4)の
小説『黒馬物語』を読みました。

57歳の時(1877.11)に刊行された、
シュウエル生涯唯一の作品です。

アンナ・シュウエル著
土井すぎの訳
『黒馬物語』
(岩波少年文庫、昭和28年8月。第33刷改版、昭和62年5月)

今年の1月に、
ペンギン・リーダーズのレベル2(400語レベル)で、
初めて『黒馬物語』を読んだあと、

いくつか翻訳を探してみた中で、
一番好感のもてた土井氏の翻訳を読み終えました。

今から61年前の翻訳であり、
文体には多少の古さを感じさせるのですが、

非常にていねいな言葉づかいで
すみずみまで心配りの効いた翻訳であり、

読み慣れてくると、
土井氏の作品への愛情が良く伝わってきて、
心地よく読み進めることができました。

ふだん馬が身近にいるわけではないので、
専門の方からみてどうなのかはわかりませんが、

読んでいて、
シュウエルが馬と馬に関わる人々のことを、
愛情深い眼で、実によく観ているな、と感心しました。


翻訳は、

白石佑光訳
『黒馬物語』
(新潮文庫、昭和35年7月)

藤原英司訳
「黒馬物語」
(講談社『世界動物文学全集7』昭和54年5月)
 ※この他、グレンドン・スワースアウト著/安達昭雄訳「動物と子供たちの詩」と、バージニア・マッケンナ著/藤原英司訳「私の友だちには尻尾がある」を併録してある。

の二つを手に入れましたが、
ほかにも次の翻訳が見つかりました(未見)。

前田美恵子訳
『黒馬物語』
(春陽堂少年少女文庫 世界の名作・日本の名作、昭和54年2月)

渡辺美里訳
『黒馬物語』
(ハヤカワ文庫、昭和49年)

吉田勝江訳
『黒馬物語』
(角川文庫、昭和30年)
 ※小学館 少年少女世界名作文学全集33、昭和39年5月に再録。

喜多謙訳
『黒馬物語』
(偕成社、世界名作文庫、昭和26年)
 ※偕成社 少年少女世界の名作13 改訂新版、昭和58年1月に再録。

山田昌司訳
『黒馬物語』
(岩波文庫、昭和25年)

子供向けも含めるとまだまだあるようですが、
いずれも最近のものではないので、

そろそろ新しい翻訳がほしいところです。
お勧めの名作です。


※Wikipediaの「アンナ・シュウエル」を参照。