今年からしばらく守りの経営になるはずが、ありがたいことに夏休み前から程よく問い合わせをいただき、休む間もなく対応に追われていました。
お盆休みに、いずれ読もうと思って「積ん読」状態だった1冊、フランスの作家ヴェルヌの『二年間の休日(十五少年漂流記)』を手に取りました。ふだんは英語で書かれた本(の翻訳)を読むことが多いのですが、ヴェルヌのいくつかの傑作(『海底二万里』『十五少年漂流記』『神秘の島』)は例外。
一時期、ヴェルヌの小説に独特な、専門用語を書き連ねた冗長な文章に辟易し、いっそ適当に編集した簡略版のほうが良いのかもと思い、程よい長さのものを集めてみました。が、実際手にしてみるとどうも違う。結局、最新の完訳版である私市保彦(きさいちやすひこ)訳『二年間の休暇』(岩波少年文庫)に落ちつきました。
ジュール・ヴェルヌ作
私市保彦(きさいちやすひこ)訳
レオン・ブネット挿絵
レオン・ブネット挿絵
『二年間の休日 上・下』
(岩波少年文庫603・604、2012年2月◇349・349頁)
完訳版は、手元に集英社文庫の横塚光雄(よこつかみつお)訳、福音館文庫の朝倉剛(あさくらかたし)訳、創元SF文庫の荒川裕光(あらかわひろみつ)訳、偕成社文庫の大友徳明(おおとものりあき)訳などが置いてありましたが、これらは途中で挫折。今回はじめて何の不満もなく、最後まで読み進めることができました。登場人物が十五人もいると、読んでいて誰がどう動いているのか、焦点が定まらなくなる傾向があるので、そこを乗り越えられるかどうかが分かれ目となります。今回は委細構わず5、6章一気に読み進めたら物語の雰囲気がつかめて、あとは最後まで楽しんで読み終えることができました。
ジュール・ヴェルヌ著
横塚光雄(よこつかみつお)訳
『十五少年漂流記』
『十五少年漂流記』
(集英社文庫、ジュール・ヴェルヌ・コレクション、2009年4月◇542頁)
※もとは『二年間のバカンス ― 十五少年漂流記』(集英社文庫、ジュール・ヴェルヌ・コレクション、1993年9月◇542頁)と題して刊行。単行本の初出は『二年間のバカンス』(集英社コンパクト・ブックス、ヴェルヌ全集5、1967年12月◇373頁)。
※もとは『二年間のバカンス ― 十五少年漂流記』(集英社文庫、ジュール・ヴェルヌ・コレクション、1993年9月◇542頁)と題して刊行。単行本の初出は『二年間のバカンス』(集英社コンパクト・ブックス、ヴェルヌ全集5、1967年12月◇373頁)。
ジュール・ベルヌ作
太田大八(おおただいはち)画
朝倉剛(あさくらかたし)訳
『二年間の休暇(上・下)』
(福音館文庫、2002年6月◇311・226頁)
※初出の単行本は、福音館古典童話シリーズ1(1968年4月◇525頁)。
ジュール・ヴェルヌ著
荒川浩充(あらかわひろみつ)訳
『十五少年漂流記』
(創元SF文庫、1993年8月◇465頁)
ジュール・ヴェルヌ作
レオン・ブネット挿絵
大友徳明(おおとものりあき)訳
『二年間の休暇(上・下)』
(偕成社文庫、1994年12月◇389・408頁)
どうせなら今に至るまでの日本語への翻訳を調べておこうと思い、調べ始めたところ、とんでもない分量に驚かされました。大体のところまででも調べておこうと、整理した結果を次のブログから数回に分けて紹介していきます。
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平安時代「儀式書」研究は停滞気味です。特に誰からも請われない、締切のない原稿を、完成まで持っていく大変さを痛感中。今更焦っても仕方がないので、機が熟するまで放っておくことにしました。次に火がつくまで、たぶんそんなに時間はかからないと思います。
先月ぼんやりと古書目録を眺めていたところ、神道大系の『江家次第』と『儀式・内裏式』が安く出品されているのに気がついて、すぐに購入しました。手元に届いてみると、2010年に閉校した東京のとある短大の図書館に所蔵されていたものでした。保存状態はあまりよくなかったのですが、元が豪華な装幀なので、研究で使い潰す分には問題ありません、
これでようやく念願だった神道大系の朝儀祭祀編『儀式・内裏式』『西宮記』『北山抄』『江家次第』を手元に揃えることができました。故実叢書の『西宮記』『北山抄』『江家次第』、尊経閣善本影印集成の『西宮記』『北山抄』『江次第』、宮内庁書陵部本影印集成の『西宮記』と揃えて、大学図書館に入り浸るしかなかった学生時代を思えば夢のよう。
残るは続神道大系の『侍中群要』と、尊経閣善本影印集成の儀式書の数々を。気長に揃えていきましょう。