2016年8月19日金曜日

【読了】シェイクスピア著(安西徹雄訳)『ヴェニスの商人』(光文社古典新訳文庫)

イギリスの劇作家
ウィリアム・シェイクスピア
(William Shakespeare 1564.4-1616.4)の
喜劇『ヴェニスの商人』を読みました。

推定執筆年は1596-98年、初版は1600年なので、
シェイクスピア30代前半の作品ということになります。

最近やさしい英語で読んだので、
この際、翻訳も読んでおこうと思いました。


ウィリアム・シェイクスピア著
安西徹雄(あんざいてつお)訳
『ヴェニスの商人』
(光文社古典新訳文庫、2007年6月)

 ※訳者あとがきに、「一九九〇年の四月、今からもう、十七年も前のことになるが、安西自身の訳・演出で、『ヴェニスの商人』を東京グローブ座で上演した。(中略)本訳書は、前述の上演台本版(当然、主として上演時間を考慮して、かなりのカットが施してある)をもとに、省略した部分はすべて新しく訳して補い、全体にわたって改訂を加えた完訳版である」とある(文庫238・240頁)。

『ヴェニスの商人』には
河合祥一郎(かわいしょういちろう)氏の翻訳も出ているので、
はじめは河合訳で読もうかと思っていたのですが、

これまで河合訳で読んできた
 『ハムレット』
 『ロミオとジュリエット』
 『マクベス』
 『夏の夜の夢』
 『から騒ぎ』と比べて、
今ひとつ文章のリズムに切れを欠くように感じられ、
途中で読むのを止めてしまいました。

ほかに良いものはないか探していたところ、
福田恆存訳、小田島雄志訳、松岡和子訳については、
河合訳をこえるほどではありませんでした。

ただ最新の安西徹雄訳は、
4者の翻訳と比べれば圧倒的にわかりやすく、
現代のふつうの日本語の小説に接するのと同じ感覚で、
すらすら読み進めることができました。

福田恆存訳
『ヴェニスの商人』
(新潮文庫、1967年11月)
 ※初出はシェイクスピア全集5(新潮社、1960年1月)。

小田島雄志訳
『ヴェニスの商人』
(白水uブックス〔シェイクスピア全集14〕1983年10月)

松岡和子訳
『ヴェニスの商人』
(ちくま文庫〔シェイクスピア全集10〕2002年4月)

河合祥一郎訳
『新訳 ヴェニスの商人』
(角川文庫、2005年10月)

もう一つお薦めなのが漫画版です。


バラエティ・アートワークス(企画・漫画)
『ヴェニスの商人 ―まんがで読破』
(株式会社イースト・プレス、2009年7月)

原作に忠実に、
わかりやすく再現されているので、
はじめに手っ取り早く内容をつかみたい時に最適です。

  ***

読み終えてみると、
それなりに面白くはあるのですが、
あからさまなユダヤ人差別が出てくるので、
これがもし金貸しの日本人として描かれるとしたら、
穏やかな気持で読み進めるのは難しいと思いました。

ユダヤ人差別の記述を直してしまうと、
原作をかなり変えることになるので、
舞台での上演には難しい側面があるように感じられました。


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