2018年12月30日日曜日

【196冊目】Joseph Conrad, Lord Jim(Oxford Bookworms Stage 4)

やさしい英語の本、通算196冊目は、
オックスフォード・ブックワームズの
レベル4(1,400語レベル)の10冊目として、

ロシア領ポーランドに生まれ、
イギリスに帰化した作家ジョゼフ・コンラッド
(Joseph Conrad, 1857年12月3日-1924年8月3日)の
小説『ロード・ジム Lord Jimを読みました。

作者41歳から42歳の時
イギリスの月刊誌『ブラックウッド』の
1899年10月号から1900年11月号に掲載されました。


Joseph Conrad
Lord Jim

〔Oxford Bookworms Level 4〕
This simplified edition (c) Oxford University Press 2008
First published in Oxford Bookworms 1997
19,160語

インターネットで、
オックスフォード・ブックワームの目録を眺めているうちに、
気になって購入した1冊です。

まったく知らなかったのですが、
書名のみ知る小説『闇の奥』の著者
コンラッドによる小説ということで、

2011年には
柴田元幸(しばたもとゆき)氏による
新訳も刊行されていたことを知り、
「海洋冒険小説の傑作」という見出しに惹かれ、
柴田訳をとなりに置きながら読み進めてみました。


柴田元幸(しばたもとゆき)訳
『ロード・ジム』
(河出書房新社〔池澤夏樹個人編集=世界文学全集Ⅲ-03〕2011年3月◇469頁)

柴田訳はさすがに良くこなれた訳文で、
滞りなくすいすい読み進められますが、

469頁もある大著なので、
まとまった時間が取れるときでないと、
読了するのは難しそうです。

今回はやさしい英語での挑戦なので、
本文86頁で読めてしまうのはありがたいです。

実際に読んでみると、
著者の鬱蒼とした行き場のない感情をいっぱいに詰め込んだ、
熱量の高い小説で、

海洋冒険小説という枠組みには納まらない、
強い印象が残りました。

自らの心の弱さを弱さとして受け入れられない、
若さの残る主人公が、
自らの名誉を最終的に回復していく小説、
と言えないこともないのですが、

暗めの筆致で、
ここまで描かなくてもと思うくらいびっしりと、
複雑な構成で書き込まれているので、

読んでいて共感よりは、
そこまでして付き合いたくない気持ちにもさせられました。

もっと若いころ、
10代か20代くらいまでに読んでいたら、
違う印象を受けたかもしれません。

若さゆえの整理のつかない、
もやもやした自分の心と向かい合いたい時に読むと、
共感しそうな作品でした。

今の私が読むには、少し重すぎました。

英文はそのままでも大体読めますが、
あらすじが頭に入っていないと分かりづらい所もあるので、
翻訳を参照することをお薦めします。

コンラッドの作品、
不思議な魅力を感じたことも確かなので、
また少し時間を置いて挑戦したいと思います。


※第196冊目。総計2,071,337語。


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2018年12月15日土曜日

【195冊目】Robert Louis Stevenson, Treasure Island(Oxford Bookworms Stage 4)

やさしい英語の本、通算195冊目は、
オックスフォード・ブックワームズの
レベル4(1,400語レベル)の9冊目として、

スコットランド生まれの小説家
ロバート・ルイス・スティーヴンソン
(Robert Louis Stevenson, 1850年11月13日-1894年12月3日)
の小説『宝島 Treasure Islandを読みました。

筆者が31歳の時、
イギリスの児童文学の週刊誌『Young Folks』の
1881年10月1日号から1882年1月28日号に
筆名「Captain George North」、
題名Treasure Island, or the mutiny of the Hispaniola
で発表されました。

単行本は33歳の時(1883年11月)に、
Treasure Islandの書名で刊行されました。


Robert Louis Stevenson
Treasure Island

〔Oxford Bookworms Level 4〕
This simplified edition (c) Oxford University Press 2008
First published in Oxford Bookworms 1993
15,125語

やさしい英語では、

2012年12月に
マクミラン・リーダーズのレベル3
(1,100語レベル/9,863語)、

2014年2月に
 ペンギン・リーダーズのレベル2
 (600語レベル/5,723語)

で読んで以来、3度目の挑戦となりました。

あらすじはもう頭に入っているので、
記憶をたどり直す感覚で、
最後まで楽しみつつ読み進めることができました。

スティーヴンソンの作品は、
『宝島』に限らず、
はじめのうち独特の読みにくさがあって、
今一つ馴染めないことが多かったのですが、

読み込むほどに味わいが増してきて、
これはぜひ、原文のままでも楽しめるようになってみたいと
思えるようになって来ました。


  ***

翻訳は、読みやすさ重視なら、
偕成社文庫の金原瑞人(かねはらみずひと)訳がお薦めですが、

今回、スティーヴンソンらしさを含め、
できるだけ忠実に反映した翻訳として、
岩波少年文庫の海保眞夫(かいほまさお)訳をとなりに置いて読み進めました。

多少生真面目な印象の訳文なので、
小中学生がこれを読んで夢中になるかはわかりませんが、
大人が読む分には良くできた翻訳だと思いました。

その他、
すぐに手に入る翻訳をいくつか購入したので、
合わせて掲げておきます(全く網羅的ではありません)。

名作であるだけに、
少し前のものでも特に読みにくさを感じない、
優れた翻訳が多くありました。

個人的には、
講談社青い鳥文庫の飯島淳秀(いいじまよしひで)訳も、
勢いのある訳文で気に入っています。


鈴木恵(すずきめぐみ)訳
『宝島』
(新潮文庫、2016年7月◇366頁)


村上博基(むらかみひろき)訳
『宝島』
(光文社古典新訳文庫、2008年2月◇413頁)


海保眞夫(かいほまさお)訳
『宝島』
(岩波少年文庫、2000年10月◇391頁)


金原瑞人(かねはらみずひと)訳
『宝島』
(偕成社文庫、1994年10月◇382頁)


坂井晴彦(さかいはるひこ)訳
『宝島』
(福音館書店、1976年10月◇460頁)

 ⇒『宝島』
  (福音館文庫、2002年6月◇476頁)


飯島淳秀(いいじまよしひで)訳
『宝島』
(ポプラ社版〔世界の名著27〕1969年1月◇334頁)

 ⇒『宝島』
  (講談社青い鳥文庫、1994年7月◇389頁)


阿部知二(あべともじ)訳
『宝島』
(岩波文庫、1963年6月◇310頁)

 ⇒『宝島』
  (岩波少年文庫、1967年12月◇367頁)


野尻抱影(のじりほうえい)訳
『宝島』
(筑摩書房、1956年◇323頁)

 ⇒『宝島・ジーキル博士とハイド氏』
  (東京創元社〔世界大ロマン全集56〕1959年1月)

 ⇒『宝島・ジーキル博士とハイド氏』
  (ちくま文庫、1990年7月◇427頁)


佐々木直次郎(ささきなおじろう)訳
『宝島』
(岩波文庫、1935年10月◇323頁)

 ⇒『宝島』
  (岩波少年文庫1、1950年12月◇370頁)

 ⇒『宝島』
  (新潮文庫、1951年3月◇288頁)

佐々木直次郎(ささきなおじろう)
・稲沢秀夫(いなざわひでお)共訳
『宝島』
(新潮文庫、1970年*月。70刷改版、1997年7月◇336頁)

※佐々木氏は1943年に亡くなっている。
 その後の各バージョン出版の経緯については調査中。


※第195冊目。総計2,052,177語。




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