やさしい英語の本、通算209冊目は、
オックスフォード・ブックワームズの
レベル4(1,400語レベル)の22冊目として、
イギリスの児童作家
イアン・セレリヤー
(Ian Serrailler, 1912年9月24日-94年11月28日)
の小説『銀のナイフ The Silver Sword 』を読みました。
著者44歳の時(1956年12月)に、
イギリスの出版社ジョナサン・ケープ
(Jonathan Cape)から刊行された作品です。
Ian Serraillier
The Silver Sword
Retold by John Escott
〔Oxford Bookworms Stage 4〕
This simplified edition (c) Oxford University Press 2000
First published in Oxford Bookworms 1995
14,960語
今回割安だったので
上掲の2000年刊行版を手に入れましたが、
表紙のみ変更して、2008年に再販されています。
時期によっては2008年版のほうが手に入れやすいかもしれません。
オックスフォード・ブックワームズの目録で
見かけるまで全く未知の作品でした。
調べてみると、
原著刊行の2年後、岩波少年文庫から
河野六郎(こうのろくろう)氏による翻訳が
刊行されていたこともわかり、一緒に手に入れました。
河野六郎(こうのろくろう)訳
『銀のナイフ』
(岩波少年文庫182、1959年5月◆232頁)
日本ではあまり話題にならなかったのか、
早めに絶版になっていて、古書で少し高値をつけていました。
1,800円ならありかなと思い、購入しました。
訳文はよくこなれていて、
このまま再刊しても問題なく読める水準でした。
訳者の「あとがき」によると、
「著者のヤン・セリヤーという人のことはあまりよくわかりません。
ただ、一九一二年生まれの四十七歳、現在、
イギリス、サセックス州のある中学校で英語の先生をし、
詩人でもあり、また、この本のような子ども向きの本を書いており、
ラジオやテレビにも子ども向きの放送に出ている、
というくらいのことしかわかっていません。」
「この本の話は、
ポーランドの首府ワルシャワに住む一小学校の校長の家族が、
第二次世界大戦中にうけたさまざまな苦労の話です。
父親も母親もナチスに連れ去られてしまった子どもたちが、
ふたたびその両親に会うまでの苦労」
が綴られています。ただし、
「著者もことわっているように、
ほんとうにあった事をもとにしているそうですが、
そのほんとうの事をそのままに書いたら、
きっと悲惨で読むにたえないでしょうが、
それをやはり子どもの世界の出来事として、
なるべく明かるく描こうとしています。」
とあって、事実に取材しながら、
全体として誰にも楽しめる読み物となるように
創意工夫された物語であることがわかります。
実際に読んでみても、
苦しい中にも希望を失わない、
明るさと強さを備えた物語に仕上げてあって、
思いのほか楽しみつつ最後まで読み進めることが出来ました。
一つ気になったのは、
この物語の主人公について、
現在では実際の人名を特定できているのかどうかで、
まるで特定できないのであれば、
歴史書としてのリアリティには少し欠けることになりますが、
いずれにしても第二次世界大戦後、
ヨーロッパで発生した「難民」について
学ぶ良いきっかけになる1冊だと思いました。
※この物語の主人公が実際、誰なのかについては、
日本語の文献では何も言及されていないようです。
英語の文献は未調査です。
この一文を書いていて、
この方面の知識があまりに欠けていることに愕然としました。
戦後ヨーロッパの難民について
良い書物はないか調べてみたところ、
興味にぴったり合うものが見つかりましたが、
600頁越えの大著なので購入するかは思案中。
ベン・シェファード著
忠平美幸(ただひらみゆき)訳
『遠すぎた家路 戦後ヨーロッパの難民たち』
(河出書房新社、2015年3月◇625頁)
とりあえず、まずは
ポーランドの近現代史を押さえておこうと、
読みやすそうな1冊を注文しました。
渡辺克義(わたなべかつよし)著
『物語 ポーランドの歴史 -東欧の「大国」の苦難と再生』
(中公新書、2017年7月◇224頁)
こんな風に、
他への色々な興味を呼び起こす
きっかけになる1冊となりました。
※第209冊目。総計2,260,465語。
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