北アイルランド生まれの小説家、クライブ・ステープルス・ルイス(Clive Staples Lewis, 1898年11月29日生-1963年11月22日没)の小説『最後の戦い The Last Battle 』を読みました。
全7巻からなる『ナルニア国物語』の1冊で、著者57歳の時(1956年3月)にシリーズ7番目の作品として刊行されました。物語内の時系列でも最後(7番目)のお話なので、土屋訳の第7巻として刊行されました。
土屋京子訳
『ナルニア国物語⑦ 最後の戦い』
(光文社古典新訳文庫、2018年3月)
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岩波少年文庫の瀬田訳と、光文社古典新訳文庫の土屋訳との関係を整理しておきます。
◎瀬田貞二(せたていじ, 1916.4-1979.8)訳
ナルニア国ものがたり(瀬田訳)
1『ライオンと魔女』
(1966年5月刊行)←〔1950年10月英国、同年11月米国〕
2『カスピアン王子のつのぶえ』
(1966年7月刊行)←〔1951年10月英国、52年9月米国〕
3『朝びらき丸 東の海へ』
(1966年8月刊行)←〔1952年9月英国・米国〕
4『銀のいす』
(1966年10月刊行)←〔1953年9月英国、10月米国〕
5『馬と少年』
(1966年11月刊行)←〔1954年9月英国、10月米国〕
6『魔術師のおい』
(1966年9月刊行)←〔1955年5月英国、10月米国〕
7『さいごの戦い』
(1966年12月刊行)←〔1956年3月英国、9月米国〕
◎土屋京子(つちやきょうこ, 1956- )訳
ナルニア国物語(土屋訳)
1『魔術師のおい』
(2016年9月刊行)←〔1955年5月英国、10月米国〕
2『ライオンと魔女と衣装だんす』
(2016年12月刊行)←〔1950年10月英国、同年11月米国〕
3『馬と少年』
(2017年3月刊行)←〔1954年9月英国、10月米国〕
4『カスピアン王子』
(2017年6月刊行)←〔1951年10月英国、52年9月米国〕
5『ドーン・トレッダー号の航海』
(2017年10月刊行)←〔1952年9月英国・米国〕
6『銀の椅子』
(2017年12月刊行)←〔1953年9月英国、10月米国〕
7『最後の戦い』
(2018年3月刊行)←〔1956年3月英国、9月米国〕
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ようやく最後までたどり着きました。第7巻はこれまでになく、人間の負の感情と向き合う場面が多く、しかもそれに打ち勝つというよりは、戦いつつもあっさりと敗北し、滅亡を受け入れてしまう意外さが印象に残る作品でした。さらに滅亡後、天国的な世界が描かれていくという発想も、聖書になじみのない私には新鮮に感じました。平家物語で、滅んだ平家のその後を描こうとはあまり思わないのではないかと。
ルイスの類まれな筆力のおかげで、最後には大きな感銘が得られたのですが、日本ではまず見られないストーリーの展開に違和感が残りました。しかし『不思議の国のアリス』よりはよほど好ましく、とても興味深い読書体験になりました。普段あまりファンタジーには惹かれないのですが、この「ナルニア国物語」はぜひ今後も繰り返し読んで行きたいと思いました。
幸い土屋訳が出て間もなく、河合祥一郎氏の翻訳も出始めたので、少し時間を置いてから、河合訳で再読しようと考えています。その後は、翻訳を傍らにおいて、原書でも読めたらいいなと思案中です。
河合訳に挑戦する前に、同じ河合祥一郎氏の翻訳で、ドリトル先生シリーズの続きを読んでみようと思っています。調べてみると2014年4月に『ドリトル先生アフリカゆき』を読んで以来、久しぶりの挑戦になります。当時は動物がしゃべるという「ありえなさ」に違和感を感じたのですが、「ナルニア国物語」を経験してしまうと、まあそれくらいいいんじゃないかと思えている自分がいます。
ありがたいことに本業が忙しく、ゆっくり本を読む暇はありませんが、空き時間を見つけて少しずつ読み進めていきます。