下村湖人(しもむらこじん 1884-1955)氏の名作『次郎物語』が、岩波文庫にお目見えしたことを知り、購入したのは昨年夏のこと。中学生のころに学校の図書室で出会い、夢中で読んだ記憶が鮮やかに残る一冊です。それ以来、いずれ再読をと思っていました。
下村湖人(しもむらこじん)著
『次郎物語 第一部』(岩波文庫、2020年4月)
※『次郎物語(第二部)』(ポプラ社文庫、1980年2月)所収「年譜」に、
1936年1月(52歳)、『次郎物語』の執筆に着手。雑誌「青年」に連載。
1938年8月(54歳)、『次郎物語』(後の次郎物語第一部)を脱稿。
1941年2月(57歳)、『次郎物語』(後の第一部)を出版。
とある。年譜の編者について明記されていないが、「解説」執筆者の永杉喜輔(ながすぎきすけ)氏が作成されたものであろう。
美しい装丁にも惹かれ、読む気満々だったのですが、いざ読もうとすると活字の小ささが多少厳しく、第一部だけ買ってあとは「積ん読」状態になっていました。
今年に入って、昔読んだのと同じ版なら読みやすいのではと考え、挿絵の記憶を頼りに探してみたところ、ポプラ社文庫版『次郎物語』と一致することがわかりました。廃刊状態でしたが、古本を安値で見つけ、5冊セットで購入しました。こんな感じの表紙です。
下村湖人(しもむらこじん)著
『次郎物語(一部)』(ポプラ社文庫、1980年1月。294頁)
『次郎物語(二部)』(ポプラ社文庫、1980年2月。286頁)
『次郎物語(三部)』(ポプラ社文庫、1980年3月。252頁)
『次郎物語(四部)』(ポプラ社文庫、1980年4月。302頁)
『次郎物語(五部)』(ポプラ社文庫、1980年4月。322頁)
親しみやすい、漫画のようなタッチの次郎像は、ヒサクニヒコ(1944- )氏による「さし絵・装幀」で、個人的には『次郎物語』といえばこの表紙を思い出します。
ただいざ購入してみると、上下2段組に小さめの活字で、老眼が入りつつある身には読みづらく、再び「積ん読」状態になってしまいました。
それから間もなく、インターネット上の青空文庫にも『次郎物語』が収録されていることを知りました。携帯の無料アプリで拝見すると、大きな活字で実に読みやすい。本より軽く、前読んだところを勝手に開いてくれるのもお手軽で、空き時間を見つけ楽しく読み進めるうちに、いつの間にか読み終わっていました。
久しぶりに読んでみても、やはり面白く、幼少時の気難しい次郎の心うちが見事に描き出されていて、古さを感じさせない名作だと思いました。
当時は第三部あたりまで強く感銘を受け、その先はそれほどではなかった記憶もあるので、最後まで続くかはわかりませんが、飽きるまで続きを読んでいこうと思います。
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