藤原道綱母(ふじわらみちつなのはは。936年?-995年)が、974年頃に記された女流日記『蜻蛉日記』を、杉本苑子(すぎもとそのこ。1925-2017)氏が、1996年に発表された現代語訳『私家版 かげろふ日記』で読みました(Kindle Unlimited)。
藤原道綱母 原作
杉本苑子 著
『私家版 かげろふ日記』
(講談社文庫、2002年1月)
※初出は『ハイスミス』1993年1月号~96年1月号。
単行本は文化出版局、1996年5月に刊行。
電子版は、講談社文庫本をもとに、講談社から2019年6月に発行。
数年前いつもの古本屋で、偶然、講談社文庫の『私家版 かげろふ日記』を見かけ、購入していたのですが、それほど魅力を感じずに途中で投げ出していました。今回の電子版も、はじめのうちは平凡な印象だったのですが、少し我慢していると、夫兼家や子道綱に対する自らの心情を、意外なほど率直に記しているのが好ましくなって来て、興味深く最後まで読み通すことができました。
日記風に自らの結婚生活を振り返った作品なので、創意工夫を凝らした小説とはまた違った趣がありました。当時の女性の生活の様子をうかがえる興味深い作品でした。当時の人々が、和歌を詠むのにそれなりに苦労し、みなが上手に詠めたわけではないことが知られるのは面白い。それと意外に旅行好きなのも、女性は家にこもっていたような印象があったので。
詩人室生犀星(むろうさいせい。1889-1962)氏の現代語訳も有名で Kindle Unlimited に収録されているので、そのうち挑戦しようと思案中。
室生犀星訳
『現代語訳 蜻蛉日記』
(岩波現代文庫、2013年8月)
※初出は①『日本国民文学全集7 王朝日記随筆集』(河出書房、1956年2月)。
その後②『国民の文学7 王朝日記随筆集』(河出書房新社、1964年9月)、
③『日本文学全集3 王朝日記随筆集』(河出書房新社、1965年11月)に再録。
岩波現代文庫は③を底本としている。
※電子書籍版は、ディスカヴァーebook選書(ディスカヴァー・トゥエンティワン、2021年4月)。底本を明記していないが、2013年8月に「初版第1刷発行」とある。
それより随分前に与謝野晶子(よさのあきこ。1878-1942)氏の現代語訳を手元に置いていたことを思い出しました。しかし『源氏物語』の現代語訳と同じく、和歌はもとのまま現代語に翻案されていないので、個人的に魅力は半減。『源氏』よりも和歌が重要な役割を果たしているように思うので、現代語への翻案がほしいところです。
与謝野晶子訳
今西祐一郎補注
『蜻蛉日記』
(平凡社ライブラリー、1996年3月)
※初出は『現代語訳国文学全集9 平安朝女流日記』(非凡閣、1938年4月)。
あと一点、川村裕子(かわむらゆうこ)氏の訳注『蜻蛉日記』に添えられている現代語訳が、こなれていて実に読みやすい。次はこれだけ読んで、あとは原文に当たれば良いかとも考えている。
右大将道綱母(うだいしょうみちつなのはは)著
川村裕子訳注
『新版 蜻蛉日記Ⅰ(上巻・中巻)・Ⅱ(下巻)』
(角川ソフィア文庫、2003年10月)
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