岡崎久彦氏の日本近代外交史5部作、
5冊目をようやく読み終えました。
岡崎久彦 『吉田茂とその時代』
(PHP文庫、平成15年11月。初出は平成14年8月)
4冊目を読み終えたのは5月の初めでしたので、
時間が少しかかり過ぎましたが、
たいへん勉強になりました。
全体を読み終えての感想。
1・2冊目の、
歴史書としての完成度の高さから考えると、
3・4・5冊目へと進むにつれて、
違和感を覚えるところが増え、
5冊合わせて傑作と呼ぶのは
躊躇せざるを得ない結果となりました。
努めて客観的に書こうと
努力されていることは疑いないのですが、
岡崎氏の史観が、
ごく穏当ながらも「民族系」に属し、
その範疇を出るものでないことは明らかであり、
記述を少し過激化すれば、
左翼の史観とさほど変わらなくなる、
民族系のもつ致命的な欠点を
そのまま受け継いでいる点には
注意する必要があると思いました。
岡崎氏自身、
3冊目以降は、原史料にさかのぼることなく、
先行研究を自分なりに咀嚼した結果を
叙述し直した作品であると述べておられるので、
学会の研究成果の一番穏当なところを
わかりやすくまとめた作品として読めば、
よい仕事がされていると言えるかもしれません。
しかし日本の歴史学会が、
今なお左翼に牛耳られていることは
周知の事実ですので、
その中から、
いくら岡崎氏が、自らの責任で、
できるだけ穏当な部分を拾い出そうとされても、
自ずから限界があったと言うべきでしょう。
たとえば、
評価が定まる前とはいえ、
1990年代に刊行された
ヘレン・ミアーズの『アメリカの鏡・日本』や、
小堀桂一郎氏の『東京裁判 日本の弁明』『再検証 東京裁判』
などを肯定的に紹介されるのには疑問がありました。
ただし現状として、
これを上回る出来の、読みやすい通史があるか、
といわれると、見当たらないことも確かです。
いろいろ考えるきっかけにもなり、
有意義な時間を過ごすことができました。
さて次は、
チャーチルの『第二次世界大戦』
を読もうと思っています。
※ミアーズについては、中川八洋「大東亜戦争肯定論は、『極左思想』の温床」(『亡国の「東アジア共同体」』北星堂、平成19年6月)270~273・285頁を参照。
※小堀桂一郎については、中川八洋 「“畸型の共産主義者”小堀桂一郎の女系主義」( 『小林よしのり「新天皇論」の禍毒』オークラ出版、平成23年7月)を参照。
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