2017年1月26日木曜日

【読了】サマセット・モーム著/金原瑞人訳『月と六ペンス』(新潮文庫、2014年)

イギリスの小説家
サマセット・モーム
(Somerset Maugham, 1874年1月25日-1965年12月16日)
の小説『月と六ペンス The Moon and Sixpenceを読みました。
著者45歳の時(1919年)に刊行された作品です

金原瑞人(かねはらみずひと, 1954年11月29日- )氏の翻訳で読みました。
訳者59歳の時(2014年4月)に新潮文庫の1冊として刊行されました。


サマセット・モーム著/金原瑞人訳
『月と六ペンス』
(新潮文庫、2014年4月)

新潮文庫から刊行された時に、
すぐに購入して読みかけたのですが、
出だしの20頁ほどのつまらなさに辟易して、
しばらく「積ん読」状態になっていました。

今年、1月3日から3月20日まで愛知県美術館で
「ゴッホとゴーギャン展」が開催されることを知り、

展示を観に行く前に、
フランスの画家ポール・ゴーギャン
(Paul Gauguin, 1848年6月7日-1903年5月8日)
をモデルにした小説『月と六ペンス』を読んでみようと思いました。

改めて読み始めてみると、
はじめの2章さえ我慢すれば、あとは評判通りの面白さで、
最後まで一気に読み進めることができました。

読んでいて感じるのは、
著者モームの並外れた頭の良さで、

小説全体がすみずみまで、
よくぞここまでというレベルまで緻密に計算され、
知的にコントロールされながら、
全体として読みやすく整理されていて、
とても上手な小説だと感じました。

絵画という言葉では表現しにくいテーマを正面から扱いながら、
ここまで説得力を感じられる小説は初めて読みました。

ただ私とは、
本質的に違う感性をもっているようで、
上手いなと感じるところが多数ありながらも、
あまり共感はしない、
私から少し距離のある小説でもありました。

でもしかし、
ここまで書ける小説家というのも稀なことだと思うので、
もっと他の小説も読んでみたくなりました。


翻訳は、
行方昭夫(なめかたあきお 1931.9- )氏の岩波文庫と、
土屋政雄(つちやまさお 1944.1- )氏の光文社古典新訳文庫
も手に入れました。
読みやすさ重視で、金原訳を選びました。

金原訳で少し読み進めてから、
土屋訳の美しさにも惹かれ、心移りしかけたのですが、
再読の楽しみに、取っておくことにしました。


行方昭夫訳
『月と六ペンス』
(岩波文庫、2010年7月)


土屋政雄訳
『月と六ペンス』
(光文社古典新訳文庫、2008年12月)

金原氏によると、
モームは短編がいっそう面白いそうなので、
次は短編集を読んでみようかと思っているところです。

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