2018年8月31日金曜日

【188冊目】Charles Dickens, A Tale of Two Cities(Oxford Bookworms Stage 4)

やさしい英語の本、通算188冊目は、
オックスフォード・ブックワームズの
レベル4(1,400語レベル)の2冊目として、

イギリスの小説家
チャールズ・ディケンズ
(1812年2月-1870年6月)の
長編小説『二都物語 A Tale of Two Citiesを読みました。

ディケンズ47歳の時(1859)
週刊誌『ALL THE YEAR ROUND』誌上
(1859年の4/30号から11/26号まで)
に掲載された作品です。


Charles Dickens
A Tale of Two Cities

Retold by Ralph Mowat

〔Oxford Bookworms Level 4〕
This simplified edition (c) Oxford University Press 2008
First published in Oxford Bookworms 1994
14,850語

やさしい英語で多読をはじめて間もない頃、

2011年11月に
マクミラン・リーダーズのレベル2
(600語レベル/6,751語)
で読んで以来、2度目の『二都物語』となりました。

英語では7年ぶりですが、2014年7月に新潮文庫から刊行された
加賀山卓朗(かがやまたくろう)氏の新訳を読了しているので、

実際は3度目の挑戦と言って良いかと思います。


  ***

いざ読んでみると、
ああこんな小説だったなと
前に読んだ記憶がよみがえって来て、
心動かされながら読み進めることができました。

語彙レベルがアップした分、
見慣れない単語が多めに出て来ましたが、
パソコンで程々に調べながら読んでいくと、
前半を越えるころにはあまり調べなくても読めるようになっていました。

完訳で読むと構成が入り組んでいて、
一度ではわかりにくいところがあるのですが、

要約版のおかげで、
不確かだったあらすじをしっかり頭に入れることができました。
より深く作品を理解するきっかけになりそうです。


フランス革命(1789-99)から
60年余りをへて書かれた小説ですが、
革命に批判的な立場から書かれているのが特徴的で、

政治家エドマンド・バーク
(Edmund Burke, 1729-97)の言説をのぞけば、
あまり類例がないように思われます。

バークは政治家なので、
言い回しに独特のまわりくどさがあって、
実際に読んでみると、正確な意図をくみ取りにくいところがあるのですが、

ディケンズは小説家だけあって、
革命の負の側面を誰にでもわかるように描いてあって、
人命を軽んずる暴力革命の怖さを、率直に伝えられているように感じました。

革命から半世紀をへたイギリスで、
フランス革命がどのように受け入れられていたのかを知る
よい材料になると思います。


  ***

翻訳は読みやすさを重視するのなら、
2014年に新潮文庫から刊行された
加賀山卓朗(かがやまたくろう)氏による新訳がお薦めです。


加賀山卓朗(かがやまたくろう)訳
『二都物語』
(新潮文庫、2014年6月)

もともと構成が入り組んでいて、
一度読んで直ちにわかるのは難しいところもあるのですが、
日本語による大人向けの小説として、どこもよくわかるように訳してあるので、
ほかのどなたの翻訳よりもお薦めです。

『二都物語』の翻訳は、
ざっと調べた限りで以下のものが見つかりました。


柳田泉(やなぎだいずみ)訳
『二都物語(上・下)』
(新潮文庫、1937年4月)
 ※初出は新潮社〔世界文学全集18〕1928年10月。


松本泰(まつもとやすし)・
松本恵子(まつもとけいこ)共訳
『二都物語』
(中央公論社〔ヂッケンス物語全集6〕1937年4月)


大久保康雄(おおくぼやすお)訳
『二都物語』
(新文社〔世界名著物語文庫〕1946年7月)


佐々木直次郎(ささきなおじろう)訳
『二都物語(上・中・下)』
(岩波文庫、1936年10月-37年6月。上下2冊に改版、1948年4・10月)


原百代(はらももよ)訳
『二都物語(上・下)』
(岡倉書房、1950年)


阿部知二(あべともじ)訳
『二都物語』
(筑摩書房〔中学生全集64〕1951年12月)


猪俣礼二(いのまたれいじ)訳
『二都物語』
(河出書房〔世界文学全集 第2期6〕1955年11月)


長沢英一郎(ながさわえいいちろう)訳
『二都物語』
(大日本雄弁会講談社〔世界名作全集〕1957年11月)


本多顕彰(ほんだけんしょう)訳
『二都物語』
(角川文庫、1966年2月)
 ※初出は筑摩書房〔世界名作全集13〕1961年*月。
 ※筑摩書房〔エテルナ38-9〕1977年12月に再録。



中野好夫(なかのよしお)訳
『二都物語(上・下)』
(新潮文庫、1967年1月。改版、2012年8月)
 ※初出は集英社〔世界の名作21〕1965年2月。
 ※河出書房新社〔世界文学全集5〕1966年1月に再録。
 ※河出書房新社〔河出世界文学大系28〕1980年11月に再録。
 ※河出書房新社〔河出世界文学全集6〕1989年10月に再録。


田辺洋子(たなべようこ)訳
『二都物語』
(あぽろん社、2010年4月)



池央耿(いけひろあき)訳
『二都物語(上・下)』
(光文社古典新訳文庫、2016年3月)


このうち長らく親しまれてきたのが
新潮文庫の中野好夫(なかのよしお)訳でした。

加賀山訳が出る前に、私も
中野訳に挑戦してみたのですが、
今から半世紀前の訳文だからか、
読んでいて若干冗長な印象が続き、
途中で読むのを止めてしまいました。

一文一文はわかりやすく訳されているので、
悪い訳ではないと思います。

そのほか最近は、光文社古典新訳文庫から
池央耿(いけひろあき)氏による新訳が出ています。

こちらも期待していたのですが、
池氏の訳文は、同じ光文社古典新訳文庫の
『クリスマスキャロル』をみてもわかるように、
現在ふつうには使わない難しい語彙を織り交ぜて、
独特の雰囲気のある文体で書かれていて、
私には合いませんでした。

熱心なファンもいるようなので、
嵌まれば癖になるのかもしれませんが、
「いま、息をしている言葉で、」という
古典新訳文庫の基本方針からは外れているような気がしました。

池訳よりはまだ中野訳のほうが、
ずっとわかりやすかったように思います。


※第188冊目。総計1,933,759語。


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