江戸川乱歩(1894年10月21日-1965年7月28日)の少年探偵シリーズ『怪人二十面相』『少年探偵団』『妖怪博士』につづく第4作『大金塊』を読みました。春先、久しぶりに読んだ『青銅の魔人』はシリーズ5作目でしたので一つさかのぼったことになりますが、これで最初の5作を読み終えることができました。
5作目までの単行本の初出をまとめておきます。
1『怪人二十面相』(大日本雄弁会講談社、昭和11年12月)1936年
2『少年探偵団』(大日本雄弁会講談社、昭和13年3月)1938年
3『妖怪博士』(大日本雄弁会講談社、昭和14年2月)1939年
4『大金塊』(大日本雄弁会講談社、昭和15年2月)1940年
5『青銅の魔人』(光文社 痛快文庫、昭和24年11月)1949年
第4・5作は終戦をはさんで今から80年ほど前の作品で、そのことを思えば驚くほど読みやすく、新鮮な面白さにあふれていました。ただそうはいっても、さすがに古さを感じさせるところもあって、2冊で多少飽きが来て、まあ次はいいかなと思えて来ました。また少し時間をおいてから続編に挑戦します。
手に入れたテキストは次の三種類です。
江戸川乱歩著『少年探偵 大金塊』
(ポプラ文庫、2008年11月。カバー絵・挿画、柳瀬茂)
※巻末に「この作品は、昭和三十九年にポプラ社から刊行されました」とありました。ほぼ同じ装丁のハードカバー版が1964年8月に刊行されています。個人的には乱歩といえばこの表紙で一番馴染みがありますが、ハードカバー版は今では古本でしか手に入りません。
『文庫版 少年探偵・江戸川乱歩 第4巻 大金塊』
(ポプラ社、2005年2月。装丁、藤田新策。挿絵、佐竹美保)
※巻末に「本書は1998年10月ポプラ社から刊行された作品を文庫版にしたもの」とありました。ほぼ同じ装丁のハードカバー版が1998年に刊行されています。「文庫版」とありますが、現在ふつうに売られている文庫本(新潮文庫、中公文庫、……)よりかなり大きく、ハードカバー版を一回り小さくしてソフトカバーに変えただけの仕様になっています。
『江戸川乱歩全集 第13巻 地獄の道化師』
(光文社文庫、2005年8月)
※「暗黒星」「地獄の道化師」「幽鬼の塔」「大金塊」の4作品を収めています。「大金塊」の【解題】をみると、全集所収の本文は、月刊誌「少年倶楽部」(大日本雄弁会講談社)に昭和14年(1939)1月から翌15年2月まで連載された後、昭和15年2月に大日本雄弁会講談社から刊行されたもの(第2版)を底本とし、適宜、光文社版『少年探偵江戸川乱歩全集4』(昭和26年2月、5版)、光文社版『少年探偵全集4』(昭和36年12月)と対抗したことがわかります。また光文社版(S26)への収録時に、「新仮名とし(…)、漢字を大幅にひらき、送り仮名を送り、読点を増やしたほか、結末で終戦による社会状況の変化に対応した訂正がなされた」とありました(以上、解題721頁参照)。校異表をみる限り、光文社版(S26)がポプラ社版の直接の祖本となっているようですが、未見です。
全集版なら初出時に近いものが読めますが、ポプラ社のと見比べると、漢字の送りをのぞけば文章自体を変えている箇所は少なく、『青銅の魔人』のときほどの大きな違いは感じませんでした。今回は主にソフトカバーのポプラ社版(2005)で読み進めました。
今でいう漫画「名探偵コナン」に匹敵するような存在だったのだろうと思いつつ、また時間があるときに戻って来ようと思います。
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