50 〈題しらず〉
読人しらず
山たかみ人もすさめぬ桜花いたくなわびそ我見はやさむ
〈又は里遠み人もすさめぬ山ざくら〉
51
山ざくらわが見にくれば春がすみ峯にもをにもたちかくしつつ
52 〈染殿のきさきのお前に、花がめに桜の花をささせ給へるをみてよめる〉
前太政大臣
年ふればよはひはおいぬしかはあれど花をしみれば物思もなし
年ふればよはひはおいぬしかはあれど花をしみれば物思もなし
(※「染殿のきさき」 文徳天皇の皇后。太政大臣良房の御女。御名明子)
(※「前太政大臣」 良房のこと)
53 〈渚の院にてさくらをみてよめる〉
在原業平朝臣
世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし
世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし
(※「渚の院」河内の国交野群にあって惟喬親王はここにおはしました)
54 〈題しらず〉
読人しらず
いしばしるたきなくもがな桜花たをりても来むみぬ人のため
55 〈山の桜をみてよめる〉
素性法師
見てのみや人にかたらむ桜花てごとにをりて家づとにせむ
56 〈花ざかりに京をみやりてよめる〉
みわたせば柳さくらをこきまぜて宮こぞ春の錦なりける
57 〈桜の花のもとにて、年の老いぬることを嘆きてよめる〉
紀友則
色もかもおなじ昔にさくらめど年ふる人ぞあらたまるける
58 〈をれる桜をよめる〉
紀貫之
たれしかもとめてをりつる春がすみ立ちかくすらむ山の桜を
59 〈歌たてまつれと仰せられし時に、よみてたてまつれる〉
桜花さきにけらしもあしひきの山のかひよりみゆるしら雲
桜花さきにけらしもあしひきの山のかひよりみゆるしら雲
60 〈寛平の御時きさいの宮の歌合のうた〉
友則
みよし野の山辺にさける桜花雪かとのみぞあやまたれける
みよし野の山辺にさける桜花雪かとのみぞあやまたれける
※個人的な暗唱用に。本文のテキストは、西本経一(にししたきょういち)校註『日本古典全書 古今和歌集』(毎日新聞社、1948年9月)による。解釈は今はおもに、久曽神昇(きゅうそじんひたく)全訳注『古今和歌集(一)』(講談社学術文庫、1979年9月)と、小沢正夫(おざわまさお)・松田茂穂(まつだしげほ)校注・訳『完訳 日本の古典9 古今和歌集』(小学館、1983年4月)を参照している。
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