2012年4月14日土曜日

【紹介】田中英道 『日本美術全史』


田中英道『日本美術全史 ―世界から見た名作の系譜』
(講談社学術文庫、平成24年4月。初出は講談社、平成7年6月)


田中英道氏の『日本美術全史』が
講談社学術文庫から復刊されました。

本書は、
日本美術史のわかりやすい通史(兼 入門書)であり、
各時代ごとに、世界レベルで通用する傑作はどれなのか、
田中氏による評価が忌憚なく明らかにされている点で、
他に類の無いユニークな書物となっております。


これは私が、
美術史の面白さに目覚めるきっかけになった一冊です。

もともと音楽には
人一倍の興味を持っておりましたが、
美術への関心は、
この一冊との出会いなくしてあり得なかったと思います。

大学で勉強中、
行動の自由が取りやすい時期に
本書に出会いましたので、

書いてある内容を実地で確かめようと、
たびたび奈良・京都に出かけ、

世界レベルで勝負しうる
美術史上の傑作の数々を
眼に焼き付けることができたのは、

私の大きな財産になっております。


美術の場合、
感動はゆっくりじわりじわりと、
後から響いて来る傾向があるので、

実物をその眼でみて、
感動を体全体で受け止めて、
傑作の持つ迫力をじかに感じ取ることが
何より大切だと思います。


音楽ならば、
生演奏が一番であるにせよ、
CDで過去の優れた演奏を、
家に居ながら何度も聴いて味わい楽しむことができるわけですが、

美術の場合、
小さな図版のカタログや、
レプリカから得られる印象は、
実物のもつ迫力とは到底比べ物になりません。


ぜひ本書を片手に、
日本美術の傑作の数々と出会っていただき、
本物のみが放ちうる圧倒的な迫力を感じ取っていただけたなら、

日本美術の豊かな世界が、
より身近なものとして感じられるようになると思います。


こうした独創的な通史は、日本美術史の
既存の枠組みからは逸脱することになるので、
学会から冷淡な扱いを受けるのはある程度仕方がないのかもしれませんが、

すでに英訳がなされ、順に
イタリア語版、フランス語版も出ることになっているそうです。
(学術文庫版はしがき、参照)

美術全般に興味のある方は、
ぜひ一度手にとってみることをお勧めします。


なお、個人的には
ハードカバー版のほうが図版も見やすいので
好きなのですが、すでに絶版のようです。

文庫本の勢いで、
ハードカバー版も再刊されたらいいなと思います。

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