マーク・トウェイン著/土屋京子 訳
『トム・ソーヤの冒険』(光文社古典新訳文庫、平成24年6月)
ようやく読み終えました。
土屋京子氏の翻訳を選んだのは、
最初の数頁を読んで、波長が合ったことが一番ですが、
「マーク・トウェインの文章は、「ゴシック」なのである。
比喩や形容詞が大仰で、饒舌。
場面展開が芝居がかっていて、持って回った表現が多い。
現代の書き手ならば動詞や形容詞で「ほぐして」書くところを、
硬質な名詞を多用して示唆的・抽象的に表現する。」
「トウェインの文章は、いわばゴシック建築の大聖堂のように重厚で古めかしい。
そして、そのゴシック的なところが魅力なのである。」
(本書536・537頁)
という土屋氏の指摘に興味をもったのも一因です。
そうした文体ゆえか、今回、
全訳に近いものをいくつか手に取ってみましたが、
意外に読みにくいものが多く、
訳者のみなさんの苦労の跡がしのばれました。
文体への相性は人それぞれでしょうが、
ほんの少し堅めの、
しかし独特の魅力のある文章で、
これまでよりも一段深いところで、
『トム・ソーヤ』の世界を楽しめたと思います。
お薦めです。
願わくは続編『ハックルベリー・フィンの冒険』のほうも、
土屋氏の翻訳でぜひ読んでみたいと思っております。
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