完訳で、
イングランドの劇作家
ウィリアム・シェイクスピア(1564.4-1616.4)の
戯曲『ハムレット』を読みました。
シェイクスピア39歳の時(1603)に初めて出版された作品です。
ウィリアム・シェイクスピア著
河合祥一郎(かわいしょういちろう)訳
『新訳 ハムレット』
(角川文庫、平成15年5月)
『ハムレット』には版の問題があります。
(巻末「訳者あとがき」221・222頁を参照。)
初版本の
1603年の第1クォート版〔Q1:約2,154行〕は、
テクストの乱れがひどく、不完全なものとして、
ふつう底本とされることはありません。
信頼できる版には、
1604年の第2クォート版〔Q2:約3,674行〕と、
1623年のフォリオ版〔F:約3,535行〕の2つがあります。
それまでの翻訳の多くは、
Q2とFの折衷版を底本としてきたのですが、
草稿レベルのQ2に、
シェイクスピアが改訂を加えて上演用のFができた、
という考え方から、
Fを翻訳の底本とし、
Q2固有のセリフは脚注に盛り込む
というスタイルで翻訳されたのが本書です。
本書は、
平成15年(2003)8-9月に行われた、
狂言師 野村萬斎(のむらまんさい 1966.4-)氏が主演する
「ハムレット」公演のために、
河合祥一郎氏が訳した台本をもとに、
公演でカットされた部分を補った上で、
平成15年5月に刊行されたものです。
パッと見、小さめの活字で
読みにくそうだったのですが、
実際に読んでみると、
言葉の感覚に独特の冴えがあって、
読んでいてカッコイイ!と感じる翻訳でした。
公演台本の部分は、
野村萬斎氏が「徹底的に吟味」され、
二人の共同作業によって仕上げられたそうなので、
そうした経緯が、
本書の読みやすさに
影響を与えているように感じました。
最初に『ハムレット』を読んだのは、
安西徹雄(あんざいてつお)氏の翻訳でした。
安西徹雄 訳
『ハムレットQ1』
(光文社古典新訳文庫、平成22年2月)
上記Q1を底本としてある点で、
かなり特色のある翻訳なのですが、
この時はまだQ1どころか、
シェイクスピアといわれても何もわからない状態でしたので、
難なくすらすら読み通せたこと以外、
どんな内容だったのか余り記憶に残っていません。
続いて読んだのは、
福田恆存(ふくだつねあり)氏の翻訳でした。
福田恆存訳
『ハムレット』
(新潮文庫、昭和42年9月。改版、平成22年10月)
※初出は『シェイクスピア全集10 ハムレット』(新潮社、昭和34年10月)
日本語のリズムを重視した訳文で、
実際の舞台を観るような雰囲気があって、
まずまず楽しめた記憶があります。
ただし今となっては古めの言い回しが多く、
現在の日本語として
多少の読みにくさを感じさせる訳文だと思います。
ほかに現代の翻訳として、
読みやすさで抜きん出ていたのは、
小田島雄志(おだしまゆうし)氏と
松岡和子(まつおかかずこ)氏のおふたりなのですが、
まだ読み通していません。
もう購入してあるので、
少し時間を置いてから挑戦しようと思っています。
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