やさしい英語の本、通算123冊目は、
マクミラン・リーダーズの
レベル3(1100語レベル)の10冊目として、
アメリカ合衆国の作家
マーク・トウェイン(1835.11-1910.4)の
小説『王子と乞食』を読みました。
著者46歳の時(1881.12)に出版された作品です。
Mark Twain
The Prince and the Pauper
〔Macmillan Readers Level 3〕
Text, design and illustration (c)Macmillan Publishers Limited 2013
This version of The Prince and the Pauper by Mark Twain was retold by Chris Rose for Macmillan Readers.
First published 2013
11,537語
昨年(2014年2月)に、
ペンギン・リーダーズのレベル2(600語レベル)で読んで以来、
2回目の『王子と乞食』です。
王子と乞食という
全く違う環境で生きてきた2人が、
偶然出会って、偶然2人が入れかわるという、
ありえない場面設定のお話だからか、
翻訳で読むと、
なんだか嘘くさいお話が延々と続いていくようで、
今一つ面白さが伝わって来ないのですが、
やさしい英語版だと、
飽きる間もなく次々話が進んでいくからか、
よく出来たお話として楽しむことができました。
16世紀前半のイングランドで、
世継問題のもつれから6人の妻をめとり、
そのうち2人を処刑、2人を離縁した
破天荒な王として知られるヘンリー8世は、
ローマ教皇庁から「イングランド国教会」を分離させ、
イングランド宗教改革を主導した「ルネッサンス王」
としても知られていますが、
本書はこのヘンリー8世の崩御と、
彼のただ一人の王子エドワードが、
エドワード6世として即位するまでの経緯を
織り込んだ歴史小説という側面もあるので、
イギリスの歴史をより深く学んでいくと、
さらに面白くなって来るかもしれません。
(以上、君塚直隆『物語 イギリスの歴史(上)』中公新書、2015年5月を参照)
***
翻訳はいくつか手に取りましたが、
まだしっくり来るものに出会えていません。
初めに手に取ったのは、
大久保博(おおくぼひろし)氏の翻訳です。
大久保博訳
『王子と乞食』
(角川書店、2003年5月)
1881年刊行の初版本に収録されていた
192点のイラストを完全収録するこだわりようで、
わかりやすい日本語でていねいに訳されているので、
まずは模範的な訳業といえると思います。
しかし「です・ます」調の
生真面目な訳文が災いしたのか、
実際読んでみるとしだいに飽きが来て、
途中で読むのを止めてしまいました。
こんなに退屈な作品ではないはずだ!と。
続いて、
読みやすさ重視で
もう少し簡単なのを試してみようと思い、
河田智雄(かわだともお)氏の翻訳を読んでみました。
河田智雄訳
『王子とこじき(上・下)』
(偕成社文庫、1979年1・2月)
こちらは大久保訳よりやさしく、
小学生くらいから読めるように訳してありますので、
無事に最後まで読み終えることができました。
しかし正直なところ、
前半を読み終えたあたりで、先の見える展開に飽きが来て、
少々じれったい思いをしながら読み進めたことを告白しておきます。
この後さらに、
どうせなら完訳でなくてもと思い、
翻案されている所もある村岡花子(むらおかはなこ)氏の翻訳を手に取りました。
村岡花子訳
『王子の乞食』
(岩波文庫、1934年7月。24刷改版、1958年5月)
※初出は平凡社〔世界家庭文学大系 第2巻〕1927年10月。
岩波文庫の「訳者のことば」には、
世界家庭文学大系の刊行=「昭和四年」(1929)とあるが、
昭和二年(1927)の誤りである。
日本の国民が、
最初に『王子の乞食』に出会ったのは、
この村岡訳だったようです。
初出は90年近く前なので、
言い回しに多少気になるところもありますが、
今でも十分読める味わい深い文章です。
ただし前2者を圧倒して、
一気に読み切れるレベルかといえば、
そこまでの魅力は感じませんでした。
トウェインの作品自体に、
全体として前向きで明るいイメージがあるものの、
社会への風刺というか、棘や毒を含んでいるところがあるので、
ひたすら上品で、
ていねいな美しい日本語に移しかえてしまうと、
作品の本質からは少しずれているように感じるのかもしれません。
最近さらにもう1冊と思い、
山本長一(やまもとちょういち)氏の翻訳を選んでみました。
山本長一訳
『王子と乞食』
(彩流社〔マーク・トウェイン コレクション13〕1999年4月)
山本訳は、先に同じシリーズの
『ハックルベリィ・フィンの冒険』(1996年3月)を読んで、
難しくてわかりにくい印象があったので、
後回しになっていたのですが、
こちらは前3者とは違ったスタイルで、
適度に毒のある文体になっていて、
新鮮な印象を受けました。
まだ読み始めたばかりなので、
無事に読み終えたら、ブログでまた報告します。
※通算123冊目。計1,016,597語。
※Wikipediaの「マーク・トウェイン」「王子と乞食」を参照。
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