ペンギン・リーダーズのレベル3(1200語レベル)の12冊目として、
イングランドの劇作家
ウィリアム・シェイクスピア
(William Shakespeare 1564.4-1616.4)の
悲劇『オセロー』を読みました。
推定執筆年は1603-4年、初版は1622年とされているので、
シェイクスピア40代初めの作品ということになります。
※河合祥一郎『あらすじで読むシェイクスピア全作品』(祥伝社新書、2013年12月)38頁参照。
William Shakespeare
Othello
Retold by Rosalie Kerr 〔Penguin Readers Level 3〕
This edition first published by Pearson Education Ltd 2006
11,678語
ペンギンリーダーズのレベル3には、
シェイクスピアの戯曲が5冊収録されていました。
喜劇1冊(『夏の夜の夢』)と、
悲劇3冊(『リア王』『ハムレット』『オセロー』)
の計4冊のほか、
喜劇2作(『ヴェニスの商人』『夏の夜の夢』)と
悲劇2作(『ハムレット』『ジュリアス・シーザー』)
の計4作を手短にまとめた1冊があります。
7月からまとめて読んできた最後の残るのが『オセロー』です。
これだけは一度も観たことも読んだこともなかったので、
後回しになっていました。
***
初めて『オセロー』を読む前に、
取っ掛かりになるものを探したところ、
1952年に製作された
オーソン・ウェルズ(Orson Welles, 1915.5-1985.10)
監督、脚本、主演による映画が廉価で手に入ることを知り、
まずこれを観てみることにしました。
これが大正解。
60年以上前に撮られたとは思われない、
今観ても古さを感じないセンス溢れる演出で、
飽きる間もなく感動のうちに観終えることができました。
オーソン・ウェルズで観たことがあるのは
『市民ケーン』と『ジェイン・エア』と『リア王』だけですが、
初めて凄い俳優だと思いました。
大人向けの漫画版はまだ出ていないので、
手早く『オセロー』の魅力を知りたい方には、
オーソン・ウェルズ監督・脚本・主演の映画をお薦めします。
***
それから読みやすい翻訳も探しましたが、
普段から一番読み慣れている
河合祥一郎訳も安西徹雄訳も出ていなかったので、
新潮文庫の福田恆存訳、
白水uブックスの小田島雄志訳、
ちくま文庫の松岡和子訳を読み比べた結果、
松岡訳を気に入り、購入して読了しました。
松岡和子訳
『オセロー』
(ちくま文庫〔シェイクスピア全集13〕2006年4月)
松岡訳は『夏の夜の夢』や
『ロミオとジュリエット』などの比喩的な表現では、
今ひとつ詩情に乏しいように感じられたのですが、
『オセロー』には
夢見るような詩的表現がほとんどないからか、
平易なよくわかる文章で、難なく読み通すことができました。
***
ここまで下準備をしておいたので、
やさしい英語でも苦労せず、すらすら読み通すことができました。
悲劇は本来苦手なはずなのですが、
シェイクスピアの悲劇は、
人の心の毒となる部分に深く切り込みながら、
ひたすらどこまでも真っ黒に塗りつぶしてしまうわけではなく、
どこかで人の心の正しい側面を信じているところがあるので、
全体として深い感動を覚えます。
愛するがゆえの嫉妬、
出世欲からの恨み、妬み、
他人を騙して追い落としたいと願う心といった、
誰の心にも潜んでいる(けれどもふだんはあまり見えない)
嫌らしく醜い側面と向き合う機会をくれる作品
といえるのかもしれません。
※第142冊目。総計1,246,344語。
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