クライブ・ステープルス・ルイス
(Clive Staples Lewis, 1898年11月29日生-1963年11月22日没)
の長編小説『魔術師のおい The Magician's Nephew 』を読みました。
全7巻からなる『ナルニア国物語』の1冊で、
著者56歳の時(1955年5月)に刊行されました。
***
『ナルニア国物語』は、
瀬田貞二(せたていじ, 1916.4-1979.8)氏の
翻訳で長らく親しまれてきました。
今年の夏に古本屋で
全巻(7冊700円!)を手に入れて、
この機会に読んでみようと思っていたのですが、
9月に土屋京子(つちやきょうこ, 1956- )氏の
新訳が刊行されました。
読み比べてみるとさすがに旧訳から60年をへて、
土屋訳のほうがわかりやすい整った訳文でしたので、
新訳で読み進めることにしました。
瀬田訳と土屋訳には巻次に違いがあります。
瀬田訳は、
1966年5月から12月にかけて岩波書店から刊行されました。
その際、もともとの出版順に番号がつけられていました。
◎瀬田貞二(せたていじ, 1916.4-1979.8)訳
ナルニア国ものがたり(瀬田訳)
1『ライオンと魔女』
(1950年10月英国、同年11月米国)⇒1966年5月刊行
2『カスピアン王子のつのぶえ』
(1951年10月英国、52年9月米国)⇒1966年7月刊行
3『朝びらき丸 東の海へ』
(1952年9月英国・米国)⇒1966年8月刊行
4『銀のいす』
(1953年9月英国、10月米国)⇒1966年10月刊行
5『馬と少年』
(1954年9月英国、10月米国)⇒1966年11月刊行
6『魔術師のおい』
(1955年5月英国、10月米国)⇒1966年9月刊行
7『さいごの戦い』
(1956年3月英国、9月米国)⇒1966年12月刊行
今回、土屋京子氏の新訳では7巻を出版順ではなく、
物語の時系列にそって並べ直してあります。
◎土屋京子(つちやきょうこ, 1956- )訳
ナルニア国物語(土屋訳)
1『魔術師のおい』
(1955年5月英国、10月米国)⇒2016年9月刊行
2『ライオンと魔女と衣装だんす』
(1950年10月英国、同年11月米国)⇒※2016年12月刊行予定。
3『馬と少年』
(1954年9月英国、10月米国)⇒※2017年3月刊行予定。
4『カスピアン王子』
(1951年10月英国、52年9月米国)⇒※2017年6月刊行予定。
5『ドーン・トレッダー号の航海』
(1952年9月英国・米国)⇒※2017年9月刊行予定。
6『銀の椅子』
(1953年9月英国、10月米国)⇒※2017年12月刊行予定。
7『最後の戦い』
(1956年3月英国、9月米国)⇒※2018年3月刊行予定。
土屋氏によると、
「著者C・S・ルイス自身がこの順番で
七巻の作品が読まれるよう希望していたことから、
現在、欧米で出版されている『ナルニア国物語』は
この時系列順の列べかたが標準となっている」
そうです(文庫「訳者あとがき」321頁)。
そんなわけで最初に手にとるのは、
『魔術師のおい』と呼ばれる1冊ということになります。
***
C.S. ルイス著
土屋京子訳
『ナルニア国物語① 魔術師のおい』
(光文社古典新訳文庫、2016年9月)
初めて読んでみると、
ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』や、
J・M・バリーの『ピーター・パン』を読んだ時のような、
独特な毒や、取っ付きにくさを感じることはなく、
常識的な感覚に彩られた
安心して読める子供向けの小説として、
すんなり読み進めることができました。
子供の頃にふと出会っていたら、
もっと大きな感動を味わえたはずですが、
今読んでもふつうに楽しめる内容でした。
ナルニア国創世の場面の状況描写が美しく、
(日本語だと多少まどろっこしい感じもあるので)
英語で読んだらどんなだろうと興味がわいて来ました。
圧倒的な感動とまではいかないのですが、
ぜひ続刊を読み進めたいと思いました。
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