2017年2月20日月曜日

【読了】ジョージ・エリオット著(新川和江再話)『サイラス・マーナー』(1968年刊行)

イギリスの小説家
ジョージ・エリオット
(George Eliot, 1819年11月22日-80年12月22日)の
小説『サイラス・マーナー』を、

詩人新川和江(しんかわかずえ, 1929年4月22日- )氏による
子供向けの編訳で読みました。

1955年11月に刊行された
工藤好美(くどうよしみ, 1898-1992)・
淀川郁子(よどかわいくこ, 1904-? )両氏による
完訳をもとに再話されたものです。


工藤好美・淀川郁子訳
新川和江文
「サイラス=マーナー」
(小学館〔少年少女世界の名作文学5 イギリス編3〕1968年5月)
 ※小学館〔少年少女世界の名作文学3 イギリス編3-4〕1977年5月に再録。

『サイラス・マーナー』は、ジョージ・エリオットが
41歳の時(1860年11月-61年3月)に執筆された作品です

男性の筆名(ジョージ)を名乗っていますが、女性です。


新川和江氏による再話は、
小学生でも十分読める文章で、
わずか70頁ほど(279-350頁)にまとめてあるので、
手っ取り早くあらすじを知りたい時には最適です。

ただし、
さすがにこれだけでは物足りない感じもあって、
もう少し詳しいもので読み直したくなりました。

完訳版としては、
新川氏の再話のもとになった
工藤好美・淀川郁子両氏による共訳がありますが、
こちらはまだ手に入れていません。


工藤好美・淀川郁子共訳
「サイラス・マーナー」
(河出書房〔世界文学全集 第2期6〕1955年11月)
 ※河出書房新社〔世界文学全集22 特製豪華版〕1961年11月に再録。
 ※文泉堂出版〔ジョージ・エリオット著作集2〕1994年8月に再録。

完訳版は先に、
土井治(どいおさむ)氏の岩波文庫を手に入れました。


土井治訳
『サイラス・マーナー(上・下)』
(岩波文庫、1952年6・7年。改版1巻本、1988年8月)

土井訳は決して読めない文章ではないのですが、
完訳ゆえか多少まどろっこしい感じの文章が続くので、
飽きずに最後まで読み進めるのは難しそうです。


他にないか探してみたところ、

1952年(昭和27年)に講談社から、
世界名作全集の1冊として刊行された
吉田絃二郎(よしだげんじろう)氏の翻訳が見つかりました。

吉田絃二郎訳
『サイラス・マーナー』
(大日本雄弁会講談社〔世界名作全集43〕1952年10月)

こちらは1952年4月の独立回復後すぐの刊行だからか、
紙質が良くないのが難点ですが、

誰にでも読みやすい文章で、
ほどほどの分量(本文320頁)にまとめてあり、
しかも総ルビで、ていねいに作り上げられた1冊でした。

次は吉田訳で読んでみようと思っています。


肝心の感想を書いていません。
ごく保守的な価値観を是とする立場から書かれた小説で、
物語の展開の仕方にも予定調和的なところがあるのですが、
話そのものがおもしろく、話の中身で勝負するタイプの作品であるように感じました。

ブロンテ姉妹のような天才的な感性の冴えがある訳でもなく、
ディケンズのような社会派の視点がある訳でもないので、
今あまり読まれていないのもわかるのですが、

一般的な常識の枠組みにおさまりながら、
飽きさせない魅力のある物語を展開するのは、
実力のある作家なればこそだと思うので、
今後注目して読んでいきたい作家の一人になりました。

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