やさしい英語の本、通算180冊目は、
IBCパブリッシング・ラダーシリーズの
レベル2(1300語レベル)の18冊目として、
アメリカ合衆国の映画監督
ウィリアム・ワイラー
(William Wyler, 1902-1981)が監督を務め、
1953年8月に米国公開された
映画『ローマの休日 Roman Holiday 』の小説版を読みました。
Ian McLellan Hunter
Roman Holiday(ローマの休日)
Retold by Nina Wegner
〔Ladder Series Level 2〕
IBC Publishing,Inc. 2011年2月
10,000語
この映画の台本は、
イギリスの脚本家
イアン・マクレラン・ハンター
(Ian McLellan Hunter, 1915-1991)
が執筆し、
撮影に際して、
イギリスの脚本家
ジョン・ダイトン
(John Dighton, 1909-1989)
が編集を加えたものとされてきました。
ハンターは
1953年のアカデミー最優秀原案賞
(Academy Award for Best Story)を、
ハンターとダイトンは、
1953年のアカデミー脚色賞
(Academy Award for Writing Adapted Screenplay)を受賞しています。
しかし実際は、
アメリカ合衆国の脚本家
ダルトン・トランボ
(Dalton Trumbo, 1905-1976)
がもとの脚本を執筆していたことが知られており、
トランポはレッド・パージの影響で、
名前を明らかにして仕事ができない状況だったので、
ハンターが自分の名前をかしていたことが、
後に明らかにされたため、
1992年に改めて、トランポに
1953年のアカデミー最優秀原案賞
が贈呈され、ハンターの名は削除されることになりました。
つまり台本については、
原案(脚本)
ダルトン・トランボ
脚本(脚案)
イアン・マクレラン・ハンター
ジョン・ダイトン
の3名を想定するのが正しい認識ということになります。
***
近くに映画館がなかったので、
映画をそれなりに観るようになったのは、
20代前半を過ぎて、過去の名画が
DVDで出回るようになってからのことでした。
『ローマの休日』は、
映画を観るようになってすぐに嵌った作品で、
半世紀前の映画が、まったく色褪せず、
瑞々しい感動を呼び起こすことに驚かされました。
今でも1作だけ好きな映画をあげるなら、
迷わず上げるくらい好きな作品なので、
今回、小説版を読むことで、
変にがっかりさせられても嫌だなと思っていたのですが、
映画から逸脱することなく、
やさしい英語で忠実に展開がたどられていたので、
映画の場面場面を思い出しながら、
楽しんで読み進めることができました。
この場合、
映画を観るのが一番手っ取り早いと思いますが、
映画の台本の対訳がいくつか出版されており、
手元には、
『ローマの休日 ROMAN HOLIDAY 』
(マガジンハウス〔cine-script book〕1992年2月)
が置いてあります。
そのほか探してみると、
日本語の小説に翻案しているものも見つかったので、
2点手に入れてみました。
池谷律代(いけやりつよ)訳
『ローマの休日』
(ソニーマガジンズ、1998年7月◇295頁)
百瀬しのぶ(翻案)
『ローマの休日』
(ソニーマガジンズ〔ヴィレッジブックス〕2001年12月◇251頁)
池谷氏の方には「訳」とありますが、
ざっと通読した限りでは、映画の脚本をもとに、
本格的な小説風に翻案してあるようなので、
「編訳」とするのが正しいでしょう。
「あとがき」に出版の経緯が
一切記されていないので詳細は不明ですが、
池谷氏は竹書房文庫などで、
映画の脚本をもとに翻案した小説を多数手がけ、
そちらには「編訳」とあるものも多いので、
池谷氏による翻案小説と推測しておきます。
百瀬氏の方は、映画に忠実に、
わかりやすい日本語で語り直した翻案です。
やさし過ぎるように思われましたが、
今回のやさしい英語を読む際には、
一番役に立ちました。
※第180冊目。総計1,813,203語。
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