◆思軒訳『十五少年』現代語訳の時代(その二、1920年代)
④霜田史光「十五少年漂流物語」(1924)
→『十五少年漂流記』(1925)
⑤長門峡水「〈冒険奇譚〉十五少年孤島探検」(1926 )
⑥奥野庄太郎『十五少年漂流記』(1927→1930)
1920年代に確認できた思軒訳『十五少年』にもとづく現代語訳は④⑤⑥の3点である。
⑤長門峡水「〈冒険奇譚〉十五少年孤島探検」(1926 )
⑥奥野庄太郎『十五少年漂流記』(1927→1930)
1920年代に確認できた思軒訳『十五少年』にもとづく現代語訳は④⑤⑥の3点である。
*******************************
④霜田史光(しもたしこう。1896-1933)「十五少年漂流物語」(『金の星』第6巻3~12号、1924年3~12月。※未完)。単行本は連載終了後、ジユウール・ヴエルヌ 著/霜田史光訳述/寺内萬治郎(てらうちまんじろう。1890-1964)装幀・挿画『十五少年漂流記』(金塔社、1925年2月◇269頁)として刊行。その後『少年文学名著選集1 十五少年漂流記』(金の星社、1926年12月◇269頁)として再刊。
1点目は、霜田史光(しもたしこう)による編訳である。はじめに「十五少年漂流物語」という題名で、雑誌『金の星』(金の星社)第6巻3~12号(1924年3~12月)に計10回掲載されたが、原著でいう第28章の途中までで中断。最終号(24年12月)の末尾には、「まだ話の終らない内に遂に十二月号となつて了ひました。で、止むなくこゝで一段落して、後は近日、本社から出版する単行本に掲載いたします。悪からずお赦しを願ひます。(記者)」と記された。その2ヶ月後、1925年2月に金塔社から刊行されたのが、霜田史光『十五少年漂流記』であった。『十五少年漂流記』を単行本の書名として用いた初例がこれである。その後、金の星社の『少年文学名著選集1 十五少年漂流記』(1926年12月)としても再刊されている。
******************************
⑤長門峡水(ながときょうすい。?-?)「〈大冒険奇譚〉十五少年孤島探検」(『少年少女譚海』博文館、第7巻2・3号、1926年2・3月)※未完。2点目は、長門峡水(ながときょうすい)による編訳「〈大冒険奇譚〉十五少年孤島探検」である。博文館の雑誌『少年少女譚海』第7巻2・3号(1926年2・3月)に2回掲載された。第2号に「第一回」「第二回」、第3号に「第三回」が掲載され、原著でいう第1・2・3章が抄訳されている。「第四回」以下が発表された形跡はない。ただ第2号の本文冒頭には「この物語は、長門峡水氏が特に譚海愛読者の為に全力を尽してかいて下すつたもので、全篇悉く熱血のみなぎつてゐるものです。どうぞ第一回より熱心におよみ下さらんことを切望します」と、また巻末の編輯だよりには「本号より発表します長門峡水氏の『十五少年孤島探検』は、同君が特に譚海愛読者の為めに苦心の熱筆を振はれたので二百枚以上の長篇物語で、第一回より最後迄、息もつけぬ面白いものです。(下略)」とある。さらに第3号の本文末尾には「(つゞく)」と、また巻末の編輯だよりには「『加藤十勇士』や『八郎為朝』、『十五少年孤島探検』の物語は次号から回を進むにつれてますヽヽ痛快に面白くなります」とある。これらの事から、本来はより長期にわたる連載を予定していたものの、何らかの理由で急遽最初の2・3号のみで打ち切りとなったことがわかる。長門峡水というペンネームで発表された作品がこれしか見当たらないことから、打ち切りの理由など今のところ詳しくは不明という他ない。
******************************
⑥奥野庄太郎(おくのしょうたろう。1886-1967)編、丹宗律光(たんしゅうりっこう)装画『〈学習室文庫〉十五少年漂流記』(中文館書店、1927年10月◇74頁)。編者名を伏せたまま、『学校家庭文庫4 ロビンソン物語 外二編』(九段書房、1927年10月◇206頁)のなかに「十五少年漂流記」と題して収録(136-206頁)。その後、奥野庄太郎著『東西童話新選 文の巻』(中文館書店、1930年9月◇488頁)のなかに「十五少年漂流記」と題して収録(2~73頁)。
3点目は、奥野庄太郎(おくのしょうたろう)による編訳『〈学習室文庫〉十五少年漂流記』(中文館書店、1927年10月)である。こちらは同年同月に、奥野氏の名をふせたまま『学校家庭文庫4 ロビンソン物語 外二編』(九段書房、1927年10月)のなかに「十五少年漂流記」と題して収録されている。その後、奥野庄太郎著『東西童話新選 文の巻』(中文館書店、1930年9月)のなかに「十五少年漂流記」と題して収録された。同冊にはそのほか「クオレ物語」「トムソーヤ物語」「なるほど物語」「オルレアンの少女」「指輪の持主」「小公子」「ダンテ物語」の7話(計8話)が収録された。巻頭の「はしがき」に、「此の本のお話は最初『学習室文庫』のものとして書いたのですが、その本は日本の多くのお子供様方から歓迎され既に一万部を売り尽したのです。そして更に装幀の立派なものが欲しいといふ要求がありますので、前記のごとく同文庫中から選抜したものです」と、出版の経緯が記されている。
0 件のコメント:
コメントを投稿