2025年9月7日日曜日

【読了】夏目漱石『それから』(1910年)

 夏目漱石(なつめそうせき。1867年2月~1916年12月)の小説『それから』を、「青空文庫」で読みました。青空文庫版の『それから』は、漱石の自筆原稿にもとづく岩波書店版「漱石全集 第六巻」(1994年5月)を底本としつつ、ルビは漱石の原稿にあったルビのみを付け、岩波編集部が付けたルビを省いています。青空文庫版の巻末には、このほか
 入力:Godot、野口英司、oto
 構成:門田裕志、小林繁雄
 2005年4月16日作成
 2006年5月20日修正
とありました。


 小説『それから』は、1909年6月27日から10月14日まで『東京朝日新聞』『大阪朝日新聞』に連載ののち、1910年1月に春陽堂から単行本が刊行された作品です。2021年に角川文庫版で『三四郎』を読んで、間もなく『それから』にも挑戦していたのですが、ストーリーが平凡な感じがして、退屈になって途中で止めていました。今年の春にふと青空文庫版『それから』を開いてみたところ、歴史的仮名遣いでルビも多めに振ってあって、活字を自由に大きくできたことから、漱石の文体をたいへん瑞々しく新しいものに感じ、これを機会にと読み進めることにしました。

 四分の一ほど読んだところで先が気になって、kindle Unlimited で漫画版『それから』を読んでみたところ、陳腐なストーリーを思い出して一気に熱が冷め、読むスピードがゆっくりに。それでも後半に入り、告白の場面に向かって物語が動き出すと再び興味がわいてきて、スピードアップして最後までたどり着くことができました。後半の心理描写が見事で、しかしどれだけ絶望的な場面でも、ある種突き放したところがあるのは、漱石に独特。透徹した文体の面白さに、気がつくことができました。


夏目漱石(原作)
バラエティ・アートワークス(企画・漫画)
『まんがで読破 それから』
(イースト・プレス、2009年8月)
 ※電子書籍版改訂、2024年7月。


 『三四郎』『それから』と読んできて、それほどの名作には思えませんが、漱石の文章自体には魅力を感じているので、少し時間をおいてから『門』に挑戦しようと思います。