2015年7月6日月曜日

【読了】メアリー・シェリー著(芹澤恵訳)『フランケンシュタイン』(新潮文庫)

イギリスの女性小説家、
メアリー・シェリー(1797.8-1851.2)の
小説『フランケンシュタイン』を読みました。

著者20歳の時(1818.1)に出版された作品です。


メアリー・シェリー著
芹澤恵(せりざわめぐみ)訳
『フランケンシュタイン』
(新潮文庫、2015年1月)


ホラーには興味がないと言いながら、
食わず嫌いにはならぬようにと、

先にブラム・ストーカーの
小説『吸血鬼ドラキュラ』を読みました。

ただ恐いだけでなく、
恋愛あり、冒険ありの
思いのほか娯楽性に富んだ内容で、
充実した時間を起こることができました。

もう1冊気になっていたのが、
『フランケンシュタイン』です。

まだ若く19歳の時に書かれた作品なので、
『吸血鬼ドラキュラ』よりも新しいように感じますが、

実際はドラキュラのほうが
80年ほど後に出版されています
(ブラム・ストーカー49歳の時の作品)。


今回、
新潮文庫から芹澤恵(せりざわめぐみ)氏の
新訳が出たのをきっかけに読んでみることにしました。

ほぼ同時期に、ドラキュラと同じ
田内志文(たうちしもん)氏の翻訳も出たので、

まずは田内氏の訳で読み始めたのですが、
こちらはドラキュラより推敲不足のようで、
今一つわかりづらい文章だったので読むのを止めました。

田内志文(たうちしもん)訳
『新訳 フランケンシュタイン』
(角川文庫、2015年2月)

ほかに3冊手に入れてみましたが、
芹澤訳より読みやすいとは思えませんでした。

小林章夫(こばやしあきお)訳
『フランケンシュタイン』
(光文社古典新訳文庫、2010年10月)

森下弓子(もりしたゆみこ)訳
『フランケンシュタイン』
(創元推理文庫、1984年2月)

山本政喜(やまもとまさき)訳
『フランケンシュタイン』
(角川文庫、1953年。改版、1994年11月)
 ※初出は新人社 世界大衆文学全集11、1948年。


  ***

さてこの作品、
『吸血鬼ドラキュラ』と比べて、
悲しみ、苦しみ、怒り、絶望感といった負の感情が、

ふつうに想像される範囲をこえて、
作品中にところせましと敷き詰められていて、
読んでいて胸が苦しくなってきました。

19歳の女性が書いた作品なので、
10代後半の若者特有の増幅された負の感情が、
作品中に反映されているように思われました。


読んでいて、
若書きならではの荒削りなところ、
とくに感情の描き方に無理があるように感じましたが、
そこが独特の魅力につながっているのかもしれません。

どちらかというと、10代20代くらいの
心に色々なわだかまりを抱えているうちに読んだほうが、
強い共鳴を受けるようにも思いました。


望まれずして生まれてきた子供が、
親に対して抱く負の感情。

生まれると同時に見捨てられ、
周りから忌み嫌われてきた子供が、
親から自分の存在を消し去ろうとされた時に、
どんな負の感情を抱くのか。

読後感はあまりよろしいものでなく、

必ずしもここまで
人間の負の感情と向きあう必要はないようにも思われるのですが、

まだ一度通読しただけなので、
また少し時間を置いて、忘れたころに再読してみようと思います。


※「メアリー・シェリー年譜」(小林章夫訳『フランケンシュタイン』光文社古典新訳文庫、2010年10月所収)参照。

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