中村仁一 著
『大往生したけりゃ医療とかかわるな ― 「自然死」 のすすめ』
(幻冬舎新書、平成24年1月)
本屋さんで偶然手にとって、一気に読み終えました。
伝統的な宗教に批判的なところもあって、
若干行き過ぎの感もありますが、
色々と考えさせられる1冊でした。
お医者さんの立場から、
7、80年生きて来て、
本人に自覚症状がないうちに進行していたような癌は、
自らの寿命として受け入れて、
下手に最新の医療技術で立ち向かおうとしなければ、
痛みにのたうちまわることもなく、
「自然死」を迎えることができる、
という指摘は、たいへん勉強になりました。
どう死ぬのかという問題は、基本的に、
自分の思い通りになることではありません。
そのためもあってか、
ふだんはあまり詳しく考えないで、
死に直面する状況が生じ、
自分ではほとんど意志を表明できなくなってから、
身近な家族任せ、そして病院任せで、
良かれと思ってしてくれる医療、介護を受けて、
寿命を迎えるというのが
よくあるケースだと思います。
しかし、終末期医療の中には、
寿命を長く保たせることにのみ重点をおき、
患者が、個人としての尊厳を保ちつつ、
心安らかに、穏やかな気持で死んでいくことについては、
必ずしも最優先の課題となっていない面がある、
という指摘も、
お医者さんの立場からいわれると、
ああやっぱりそうなんだ、
と納得できる所がありました。
もちろん
一概には言えないこともあるはずですが、
仮に自分ならどうされたいのか、
そして身近な家族についてどうしてあげるのが最善なのか、
考える上での、一つの良い材料になると思いました。
死の間際において
何を優先すべきなのか、という問題は、
医療というよりは、むしろ
個人の生き方、信条、宗教観といった
「心」の問題、価値観の問題なので、
すぐに一つの結論には絞り込みにくいかもしれません。
むしろ国民ひとりひとりが、よく考えて、
幸福に思えるいくつかの死に様を、
それぞれに選んでいけるようになったら、
いいなと思います。
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