2013年8月31日土曜日

【読了】Jules Verne, The Mysterious Island(PR Level 2)

やさしい英語の本、通算50冊目、
Penguin Readers の Level 2の9冊目は、

フランスの小説家
ジュール・ヴェルヌ(1828-1905)の
小説『神秘の島』(1874年発表)を読みました。

ヴェルヌ46歳のときの作品です。

この4年前(1870)に刊行された
『海底二万里』と若干関係があります。



Jules Verne
The Mysterious Island

Retold by Jane Rollason
(Penguin Readers Level 2)
2008年刊(6,370語)


ヴェルヌの作品で、
少年時代に読んでいたのは
『十五少年漂流記』(1888年発表)と
『海底二万里』(1870年発表)の二作品のみでした。

この二つに似た作品に、
『神秘の島』(1874年発表)という作品があることは、
つい最近知りました。

翻訳を読んでみようと思いつつ、
長編なのでまだ手を出していません。

大人になると、
ヴェルヌならではの
実際にはありえない設定が多少目につくようになり、
ひっかかる部分が出てきました。

やはりこれは出来るだけ、
子供のうちに親しんでおきたい作品のように思います。


  ***

完訳で今も手に入れやすいのは、
次の3つでしょうか。


大友徳明訳
『神秘の島〈第1・2・3部〉』
(3分冊、偕成社文庫、平成16年9月)

清水正和訳
『神秘の島〈上・下〉』
(2分冊。福音館古典童話シリーズ21・22、昭和53年8・9月)

手塚伸一訳
『ミステリアス・アイランド〈上・下〉』
(2分冊、集英社文庫、ジュール・ヴェルヌ・コレクション、平成8年6年)
 ※初出はヴェルヌ全集21・22、集英社コンパクト・ブックス、昭和44年3・4月。


1冊に編訳してあるものとしては、


佐藤さとる編訳 『神秘島物語』
(講談社、痛快世界の冒険文学5、平成10年2月)

がお薦めです。

今回は佐藤氏の編訳を手に入れて、通読中です。
まず手っ取り早く、本書の内容を知りたい場合には、
読みやすく、よくまとまっていると思います。


  ***

肝心のやさしい英語版ですが、

まだあらすじを知らない中で、
もともとフランス語の作品ですので、

多少の読みにくさがありました。

また、
元来3冊に分かれていたのを
6000字余りに凝縮してあるので、

あっさりし過ぎている感じもありました。


※通算50冊目。計403,473語

※Wikipediaの「ジュール・ヴェルヌ」「神秘の島」の項目を参照。

2013年8月28日水曜日

【読了】ダンテ著〔平川祐弘訳〕『神曲 地獄篇』(河出文庫)

トスカーナ地方フィレンツェ生まれの詩人
ダンテ・アリギエーリ(Dante Alighieri 1265-1321)の代表作、
神曲(La Divina Commedia)』の地獄篇を読みました。

地獄篇は、
ダンテ39歳から43歳(1304-1308)のころに執筆された
と考えられているようです。


ダンテ・アリギエーリ著/平川祐弘(ひらかわすけひろ)訳
『神曲 地獄篇』(河出文庫、平成20年11月)

 ※初出は、
   〈グリーン版〉世界文学全集、第3集第3巻、河出書房新社、昭和41年。
 ・その後、
   〈カラー版〉世界文学全集、第2巻、河出書房新社、昭和43年。
    河出世界文学大系、第3巻、河出書房新社、昭和55年。
    世界文学全集、第3巻、講談社、昭和57年9月。
   〈ステラ版〉世界文学全集、第1巻、河出書房新社、平成元年9月。
   『神曲 新装版』河出書房新社、平成4年。
  に訳文・訳注を改訂の上、再録(巻末の書誌を参考)。
 ・文庫本は、
   『神曲 地獄篇』河出文庫、平成20年11月。
   『神曲 煉獄篇』河出文庫、平成21年1月。
   『神曲 天国篇』河出文庫、平成21年4月。
  の3つに分冊。
 ・当文庫を刊行後、
   『神曲 完全版』河出書房新社、平成22年8月。
  に再録。ギュスターヴ・ドレの挿画を全点収録(未見)。


いきなりのダンテです。

さすがに『神曲』という作品が存在することは知っていましたが、
これまで一度も読んだことはありませんでした。

今回は、
偶然手にした河出文庫本の
平川祐弘氏の訳文が実にこなれており、

ほどほどの大きさの活字で、

これは読みやすい、
と思って読み進めているうちに、
まず1冊読み終わっておりました。


現代の日本語として
少しも滞るところがないにもかかわらず、
ほどよく詩情を感じさせる文章で、

ダンテの描く地獄について、
興味深く読み通すことができました。


日本で生まれ育った身には、
まったく奇想天外な、変わったお話で、

出てくる人物についても
初めて聞く方ばかりなので、

深い理解は全然できていないはずですが、

まるでその場に居合わせたかのように、
地獄の場面場面を描き切るダンテの筆力は
かなり感じ取ることができたと思います。


西欧の歴史を学ぶ上で、
いろいろな方面に影響を与えた書物なので、
ここで平川氏の名訳に出会えたことは幸せでした。

引き続き、
「煉獄篇」「天国篇」と読み進めたいと思っています。


  ***

平川祐弘氏の『神曲』翻訳にともなう研究は、

 『中世の四季―ダンテとその周辺』
 (河出書房新社、昭和56年12月。新装版、平成6年4月。
  復刻新版、平成24年6月、副題を「ダンテ『神曲』とその周辺」に変更)

 『ダンテの地獄を読む』
 (河出書房新社、平成12年2月)

 『ダンテ『神曲』講義』
 (河出書房新社、平成22年8月)

にまとめられています。

また、
ダンテが28歳(1293年)のころに執筆した
詩集『新生(vita nuova)』にも、
平川祐弘氏の翻訳が出ています。


 ダンテ著/平川祐弘訳
 『新生』(河出書房新社、平成24年3月)

どっぷり嵌まるほどには
まだ惹かれていませんが、

今後機会があれば、読み進めてみたいと思っています。


※Wikipediaの「ダンテ・アリギエーリ」「神曲」「新生(詩集)」を参照。

2013年8月27日火曜日

【読了】塩野七生著 『ローマ人の物語18 悪名高き皇帝たち 一』


塩野七生著
『ローマ人の物語17 悪名高き皇帝たち[一]』
(新潮文庫、平成17年9月)
 ※初出の単行本は第Ⅶ巻、新潮社、平成10年9月。

5月に、
初代皇帝アウグストゥス(BC63-AD14 在位BC27-AD14
の評伝を読み終えてから、

少し間を置きましたが、
ひき続き『ローマ人の物語』を読み進めて参ります。

単行本第Ⅶ冊は、
文庫本で4分冊してありますが、
アウグストゥス後、数代の皇帝が登場するようです。

このあたりの歴史には全然詳しくないので、
楽しく勉強しながら読み進めていきます。


文庫本第17巻には、
第2代皇帝ティベリウス(BC42-AD37 在位AD14-37
の治世の大部分、

ロードス島隠遁に至る前までが描かれています。


カエサル、アウグストゥスのどちらとも違って、

皇帝に直接つながる血脈の正当性を欠き、
大衆受けするカリスマ性をも欠きながら、

自らの政治的に与えられた立場を
一つ一つ着実に冷静にこなしていくさまは、

個人的に共感を持てました。


ローマ史について何も知らないのが
かえって良かったのかもしれませんが、

塩野七生さんの叙述も初心者にわかりやすく、
今回も楽しませていただきました。

こんな感じの読みやすい、
大人向けの日本史ってないように思います。

日本史となると各時代の専門家が黙っていないでしょうから、
実現は難しいのでしょうが、

左右の極端な史観にそまらない、
事実の記述を旨とした、

文庫本で40冊程度にまとめられる
国民の歴史、

どなたか執筆されないでしょうか。

2013年8月22日木曜日

【読了】Charles Dichens, A Christmas Carol (PR Level 2)

やさしい英語の本、通算49冊目、
Penguin Readers の Level 2の8冊目は、

イギリスの小説家
チャールズ・ディケンズ(1812.2-1870.6)の
小説『クリスマス・キャロル』(1843.12 出版)を読みました。

ディケンズ31歳のときの作品です。


Charles Dickens
A Christmas Carol

Retold by Michael Dean
(Penguin Readers Level 2)
2008年刊(8,882語)


夏の暑い盛りですが、
老人スクルージの生きなおしを主題としたお話なので、
クリスマスでなくても十分楽しめました。

2012年2月に、
マクミラン・リーダーズでも読んでいるので、

やさしい英語版で2度目の
『クリスマス・キャロル』となりました。


翻訳はいろいろ出ていますが、
原文に癖があるのか、皆さん苦労されていて、
なかなか納得のいくのに出会えていません。

今回はぜひ完訳をと思っていくつか手に取りましたが、

結局 落ちついたのは、


村岡花子訳(村岡美枝・恵理改訂)
『クリスマス・キャロル』
(新潮文庫、平成23年11月)

でした。これは、

 村岡花子訳『クリスマス・カロル』
 (新潮文庫、昭和27年11月。改版、昭和63年7月)

をもとに、
必要最小限度の改訂を加えたもので、
活字もかなり大きくなっており読みやすいです。

原作者以外による改訂には異論もあるでしょうが、

原訳では多少の古さを感じさせていた部分が、
装いを新たに、今読んでもわかりやすく生まれ変わっていて、
この改訂は成功していると思いました。


今気になっているのは、
個人によるディケンズ長編の全訳を成し遂げられた
田辺洋子氏が翻訳された、

クリスマス・ブックス

『クリスマス・ブックス』
(渓水社、平成24年)

です。

定価6500円(税別)と結構な値段なのでまだ手に入れていませんが、
今後の定番となりうる訳なのか、
近々自分で読んで確かめたいと思っています。



※通算49冊目。計397,103語

 やっと40万語に到達しました!
 そろそろもう一つ上のレベルでも読めると思いますが、
 まだこのレベルで何冊か読んでみたいタイトルがあるので、
 50万語まではそちらを読んでいこうと思います。

※Wikipediaの「チャールズ・ディケンズ」「クリスマス・キャロル(小説)」の項目を参照。

※「ディケンズ・フェローシップ日本支部」のホームページを参照しました。

2013年8月15日木曜日

【読了】デフォー著〔武田将明訳〕『ロビンソン・クルーソー』(河出文庫)

武田将明(たけだまさあき 1974- )氏の翻訳で、

イギリスの作家
ダニエル・デフォー(1660-1731)が
59歳のとき(1719年)に出版した
『ロビンソン・クルーソー』を読みました。


ダニエル・デフォー著/武田将明 訳
『ロビンソン・クルーソー』
(河出文庫、平成23年9月)


本書の原題には、

ヨーク出身の船乗り、ロビンソン・クルーソーの人生と不思議で驚くべき冒険

とあり、副題には、

「アメリカ大陸の沖合、巨大なオリノコ川の河口に近い無人の島にたった一人で、二十と八年生活した記録/船が難破して岸に打ち上げられたが、彼のほか全員が命を落とした。/および/海賊から彼がついに救われるに至った不思議ないきさつの記述。/本人著

とあるそうです(武田訳、6頁)。


同書が好評を得たため、同年(1719年)に

 第2部『ロビンソン・クルーソーのその後の冒険』
 第3部『ロビンソン・クルーソーの敬虔な内省』

が続けて刊行されたものの、
こちらは現在ほとんど読まれていないそうです。

第2部まで含む邦訳としては、

 山本和平 訳
 『世界文学全集13 デフォー』
 (講談社、昭和53年6月)
  ※第1・2部の全訳に、第3部の抄訳を付す。

 平井正穂 訳
 『ロビンソン・クルーソー』
 (上下2冊。岩波文庫、改版、昭和42年10月)
  ※上巻に第1部、下巻に第2部を収録。

の2つがあるのみです(以上、武田氏の解説を参照)。


今回は、第1部の完訳を、
武田氏のよくこなれた日本語で読んでみたわけですが、

原文の多少の周りくどさをそのまま活かして翻訳されたそうで、

一つ一つの文章はたいへんわかりやすいのですが、
推敲前の原稿をそのまま読まされている感じで、

同じ場所で足踏みしているようなところもあって、
全体としてみると、必ずしも読みやすくはありませんでした。


ただし、
『ロビンソン・クルーソー』が、
今から300年近く前(享保4年=1719)にかかれた、
当時としては革新的な読み物であったことを思えば、

本書の素のままの文脈を日本の読者に紹介する、
という翻訳者の意図は十分に達成されていると思います。



武田訳の4年前にこちらも完訳で、


 増田義郎 訳
 『完訳 ロビンソン・クルーソー』
 (中公文庫、平成22年10月)
  ※初出〔単行本〕は、中央公論社、平成19年6月。

が出版されています。
学術的なデータを完備させていて、

ざっとみたところ、
訳文も内容を正確に伝える
ふつうの読みやすい日本語ですので、
いずれ読んでみたいと思っております。


  ***

ただし今後これを、
個人的な楽しみとして読むとすると、
全体を多少読みやすく整理してあるものを選びたいです。

まだ目を通していないものばかりですが、
最近手に入れた


 海保眞夫(かいほまさお)訳
 『ロビンソン・クルーソー』
 (岩波少年文庫、平成16年3月)

は、程よく整理された構成で、
読みやすい日本語に翻訳されており、好印象でした。

 ※海保氏が翻訳中に急逝されたため、
  全19章のうち第15章からは、
  原田範行(はらだのりゆき)氏が推敲、校正を担当されています。


その他、
気がついたものを挙げておきます。

 伊集院静 編訳
 『ロビンソン・クルーソー』
 (講談社、痛快世界の冒険文学19、平成11年4月)
  ※『伊集院静のロビンソン・クルーソー』講談社、平成14年6月として再刊。

 中野好夫 訳
 『ロビンソン漂流記』
 (講談社青い鳥文庫、平成7年7月)

 鈴木建三 訳
 『ロビンソン・クルーソー』
 (集英社文庫、平成7年3月)
  ※初出は、学習研究社、世界文学全集 第8巻、昭和54年5月。

 坂井晴彦 訳
 『ロビンソン・クルーソー』
 (福音館書店、福音館古典童話シリーズ14、昭和50年3月)

 阿部知二 訳
 『ロビンソン・クルーソー』
 (岩波少年文庫、昭和27年6月。改版、昭和31年3月。改版、昭和57年1月)

 吉田健一 訳
 『ロビンソン漂流記』
 (新潮文庫、昭和26年5月。改版、平成10年5月)

このうち吉田訳は、
改版で活字が大きくなったので少し読んでみると、
よくこなれた訳文になっており、
独特の魅力がありました。

もう一人、
伊集院静氏が編訳をされていたとは知りませんでした。
あの伊集院氏がどんな『ロビンソン・クルーソー』を提示されているのか興味があります。
近々手に入れたいと思っています。