武田将明(たけだまさあき 1974- )氏の翻訳で、
イギリスの作家
ダニエル・デフォー(1660-1731)が
59歳のとき(1719年)に出版した
『ロビンソン・クルーソー』を読みました。
ダニエル・デフォー著/武田将明 訳
『ロビンソン・クルーソー』
(河出文庫、平成23年9月)
本書の原題には、
『ヨーク出身の船乗り、ロビンソン・クルーソーの人生と不思議で驚くべき冒険』
とあり、副題には、
「アメリカ大陸の沖合、巨大なオリノコ川の河口に近い無人の島にたった一人で、二十と八年生活した記録/船が難破して岸に打ち上げられたが、彼のほか全員が命を落とした。/および/海賊から彼がついに救われるに至った不思議ないきさつの記述。/本人著」
とあるそうです(武田訳、6頁)。
同書が好評を得たため、同年(1719年)に
第2部『ロビンソン・クルーソーのその後の冒険』
第3部『ロビンソン・クルーソーの敬虔な内省』
が続けて刊行されたものの、
こちらは現在ほとんど読まれていないそうです。
第2部まで含む邦訳としては、
山本和平 訳
『世界文学全集13 デフォー』
(講談社、昭和53年6月)
※第1・2部の全訳に、第3部の抄訳を付す。
平井正穂 訳
『ロビンソン・クルーソー』
(上下2冊。岩波文庫、改版、昭和42年10月)
※上巻に第1部、下巻に第2部を収録。
の2つがあるのみです(以上、武田氏の解説を参照)。
今回は、第1部の完訳を、
武田氏のよくこなれた日本語で読んでみたわけですが、
原文の多少の周りくどさをそのまま活かして翻訳されたそうで、
一つ一つの文章はたいへんわかりやすいのですが、
推敲前の原稿をそのまま読まされている感じで、
同じ場所で足踏みしているようなところもあって、
全体としてみると、必ずしも読みやすくはありませんでした。
ただし、
『ロビンソン・クルーソー』が、
今から300年近く前(享保4年=1719)にかかれた、
当時としては革新的な読み物であったことを思えば、
本書の素のままの文脈を日本の読者に紹介する、
という翻訳者の意図は十分に達成されていると思います。
武田訳の4年前にこちらも完訳で、
増田義郎 訳
『完訳 ロビンソン・クルーソー』
(中公文庫、平成22年10月)
※初出〔単行本〕は、中央公論社、平成19年6月。
が出版されています。
学術的なデータを完備させていて、
ざっとみたところ、
訳文も内容を正確に伝える
ふつうの読みやすい日本語ですので、
いずれ読んでみたいと思っております。
***
ただし今後これを、
個人的な楽しみとして読むとすると、
全体を多少読みやすく整理してあるものを選びたいです。
まだ目を通していないものばかりですが、
最近手に入れた
海保眞夫(かいほまさお)訳
『ロビンソン・クルーソー』
(岩波少年文庫、平成16年3月)
は、程よく整理された構成で、
読みやすい日本語に翻訳されており、好印象でした。
※海保氏が翻訳中に急逝されたため、
全19章のうち第15章からは、
原田範行(はらだのりゆき)氏が推敲、校正を担当されています。
その他、
気がついたものを挙げておきます。
伊集院静 編訳
『ロビンソン・クルーソー』
(講談社、痛快世界の冒険文学19、平成11年4月)
※『伊集院静のロビンソン・クルーソー』講談社、平成14年6月として再刊。
中野好夫 訳
『ロビンソン漂流記』
(講談社青い鳥文庫、平成7年7月)
鈴木建三 訳
『ロビンソン・クルーソー』
(集英社文庫、平成7年3月)
※初出は、学習研究社、世界文学全集 第8巻、昭和54年5月。
坂井晴彦 訳
『ロビンソン・クルーソー』
(福音館書店、福音館古典童話シリーズ14、昭和50年3月)
阿部知二 訳
『ロビンソン・クルーソー』
(岩波少年文庫、昭和27年6月。改版、昭和31年3月。改版、昭和57年1月)
吉田健一 訳
『ロビンソン漂流記』
(新潮文庫、昭和26年5月。改版、平成10年5月)
このうち吉田訳は、
改版で活字が大きくなったので少し読んでみると、
よくこなれた訳文になっており、
独特の魅力がありました。
もう一人、
伊集院静氏が編訳をされていたとは知りませんでした。
あの伊集院氏がどんな『ロビンソン・クルーソー』を提示されているのか興味があります。
近々手に入れたいと思っています。
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