チャールズ・ディケンズ(1812.2-1870.6)の
長編小説『二都物語』を読みました。
ディケンズ47歳の時(1859)、
週刊誌『ALL THE YEAR ROUND』誌上
(1859年の4/30号から11/26号まで)
に掲載された作品です。
チャールズ・ディケンズ著
加賀山卓朗(かがやまたくろう)訳
『二都物語』
(新潮文庫、平成26年6月)
英語の多読をはじめて間もないころ(2011.11)、
マクミラン・リーダーズのレベル2(600語レベル)で
読んだのをきっかけに、
『二都物語』の翻訳を探してみたのですが、
なかなか読みやすい翻訳に出会えませんでした。
・田辺洋子(たなべようこ)訳
『新訳 二都物語』
(あぽろん社、平成22年4月)
・松本恵子(まつもとけいこ)訳
『二都物語』
(旺文社文庫、昭和49年6月)
・本多顕彰(ほんだあきら)訳
『二都物語』
(角川文庫、昭和41年2月)
※筑摩書房 世界の文学Eterna38-9、昭和52年12月に再録。
・中野好夫(なかのよしお)訳
『二都物語(上・下)』
(新潮文庫、昭和42年1月。改版、平成3年2月。改版、平成24年8月)
※初出は、河出書房新社 世界文学全集6、昭和36年3月。
・岩波文庫から昭和11・12年に出版された
佐々木直次郎(ささきなおじろう)氏の翻訳は、
インターネット上の青空文庫で読むことができます。
・柳田泉(やなぎだいずみ)」訳
『二都物語』
(新潮社 世界文学全集18、昭和3年10月)
※ディケンズ著『世の中(ハード・タイムズ)』の翻訳も併録。
恐らくはディケンズの原文自体が
非常に訳しにくいのだろうと思い、
半ばあきらめていたのですが、
今回の加賀山卓朗氏の翻訳で、
ようやく現代の日本語の小説を読む感覚で、
楽しみながら、
全編を読み通すことができました。
英語の古い言い回しが
ところどころわかりにくかったり、
原文を意識してか一文を若干長めに訳してあるので、
まだ少し堅さが残っていて、
最上レベルまであともうひと押しな感じもありますが、
上記の翻訳の中では、
一番わかりやすい現代文に仕上がっていると思います。
これでようやく、
日本語で『二都物語』の全容を知ることができました。
イギリス人からみた、
フランス革命の
文化大革命的な負の側面をえぐり抜いた作品
といえるでしょうか。
ディケンズは、
ルイ16世が処刑(1793)された19年後に生まれ、
47歳の時に『二都物語』を執筆(1859)しているので、
父母の世代にイギリス国民が見聞きしてきた
「フランス革命」像が反映されていると言えるでしょう。
明らかに、
フランス革命に批判的な立場から書かれていますので、
日本式の「フランス革命=善」という刷り込みがあると、
作品の真価がわかりにくくなるかもしれません。
恐らくまだ、いつ誰が読んでも
読みやすいレベルには到達していないと思うので、
10年くらいたってから、
加賀山氏本人が今一度、全編を推敲されたら、
さらに良い一冊になるだろうなとも思いました。
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