11 〈春のはじめの歌〉
壬生忠岑
春きぬと人はいへども鶯のなかぬかぎりはあらじとぞ思ふ
12 〈寛平の御時きさいの宮の歌合のうた〉
源當純
谷風にとくる氷のひまごとに打ちいづる波や春のはつ花
(※「寛平の御時きさいの宮の歌合」寛平の始め、皇太夫人班子女王の催し給うた百番の歌合。群書類従百八十に収められる。七條后といふ説は誤り。)
13
紀友則
花のかを風のたよりにたぐへてぞ鶯さそふしるべにはやる
花のかを風のたよりにたぐへてぞ鶯さそふしるべにはやる
14
大江千里
鶯の谷よりいづるこゑなくば春くることをたれかしらまし
鶯の谷よりいづるこゑなくば春くることをたれかしらまし
15
在原棟梁
春たてど花もにほはぬ山ざとはものうかるねに鶯ぞなく
16 〈題しらず〉
読人しらず
野べちかく家ゐしせれば鶯のなくなるこゑはあさなあさなきく
17
かすが野はけふはなやきそわか草のつまもこもれり我もこもれり
18
み山には松の雪だにきえなくに宮こは野べのわかなつみけり
19
春日野のとぶひの野守(のもり)いでて見よ今いくかありて若菜つみてむ
20
梓弓おして春雨けふ降りぬあすさへふらばわかなつみてむ
※個人的な暗唱用に。本文のテキストは、西本経一(にししたきょういち)校註『日本古典全書 古今和歌集』(毎日新聞社、1948年9月)による。解釈は今はおもに、久曽神昇(きゅうそじんひたく)全訳注『古今和歌集(一)』(講談社学術文庫、1979年9月)と、小沢正夫(おざわまさお)・松田茂穂(まつだしげほ)校注・訳『完訳 日本の古典9 古今和歌集』(小学館、1983年4月)を参照している。
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