2025年12月4日木曜日

【暗唱用30-39】『古今和歌集』巻第1 春歌上③

 30 〈雁のこゑを聞きて、こしへまかりける人を思ひてよめる〉
                     凡河内躬恒
春くれば雁かへるなり白雲の道行きぶりにことやつてまし


31 〈帰る雁をよめる〉
                     伊勢
春霞たつを見すてて行く雁は花なき里にすみやならへる


32 〈題しらず
                     読人しらず
折りつれば袖こそにほへ梅の花ありとやここにうぐひすのなく

33
色よりもかこそあはれとおもほゆれたが袖ふれしやどの梅ぞも

34
やどちかく梅の花うゑじあぢきなくまつの人のかにあやまたれけり

35
梅の花立ちよるばかりありしより人のとがむるかにぞしみぬる


36 〈むめの花を折りてよめる〉
                 東三条左大臣
鶯のかさにぬふてふ梅の花折りてかざさむ老かくるやと


37 〈題しらず〉
                    素性法師
よそにのみあはれとぞ見し梅の花あかぬ色香は折りてなりけり


38 〈梅の花を折りて人におくりける〉 
                     友則
君ならで誰にか見せむ梅の花色をもかをもしる人ぞしる


39 〈くらぶ山にてよめる〉
                      貫之
梅の花にほふ春べはくらぶ山やみにこゆれど著(しる)くぞありける



※個人的な暗唱用に。本文のテキストは、西本経一(にししたきょういち)校註『日本古典全書 古今和歌集』(毎日新聞社、1948年9月)による。解釈は今はおもに、久曽神昇(きゅうそじんひたく)全訳注『古今和歌集(一)』(講談社学術文庫、1979年9月)と、小沢正夫(おざわまさお)・松田茂穂(まつだしげほ)校注・訳『完訳 日本の古典9 古今和歌集』(小学館、1983年4月)を参照している。

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