2012年2月23日木曜日
【読了】中川八洋 『脱原発のウソと犯罪』
中川八洋『脱原発のウソと犯罪』
(日新報道、平成24年2月)
最新刊、ざっと読み終えました。
詳しく読み直してから、また取り上げる予定ですが、
重要な本だと思うので、早めに紹介します。
原発事故については、はじめのうち
武田邦彦さんのブログをチエックしていたのですが、
途中から武田さんが、
原発反対に方針転換してしまったので、
科学者の態度としてどうかと思い、
チエックするのを止めました。
それ以降は忙しさから、勉強を中断しておりました。
本書を読んで、
一番ありがたかったのは、
放射線の被曝線量について、
武田さんが、
文部省が定めた基準値にもとづき、
年1ミリシーベルトをこえると危険だ、
と主張していたのに対して、
実際は
「年100ミリシーベルト以下」であれば
健康上、何ら問題ないとする研究が
絶対多数であることを指摘された点です。
これは中川さんの新見解、
というわけではありませんが、
放射能については何も知らない身なので、
眼から鱗の、ありがたい指摘でした。
もちろん武田さんが、科学者として
年1ミリシーベルト説を取るのは自由なのですが、
年100ミリシーベルト以下なら大丈夫とする
先行研究がたくさんあることについて、
ほとんど言及されていないのは
不可解です。
科学者として不誠実だと思いました。
また本書では、
住民の強制避難が必要となる場合の、
放射線の被曝線量についても、
「表2 長期間継続累積の被曝線量と避難の必要/不必要」
としてまとめられています(21頁)。
年間20ミリシーベルト以下
→「全くもって不要」
年間20ミリシーベルト以上 100ミリシーベルト以下
→「不要」
年間100ミリシーベルト以上 250ミリシーベルト以下
→「自主避難 or 50歳以下に限る避難勧奨」
年間250ミリシーベルト以上
→「強制避難=『警戒区域』の設定」
この基準に従えば、
今回の原発事故では、
強制避難をともなう「避難区域」の設定は、
まったく必要なかったことになります。
幸いこれらの主張は、
中川さん以外にも少なくない数の研究者が
発言されていることなので、
強制避難をさせられた方々が、
できるだけすみやかに、元の故郷に帰って、
安心した生活を再開できるように、
次の政権を担う方々が、
より穏当な科学的基準値について
国民のコンセンサスを得られる努力を
していくべきだと思いました。
仮に、
無知にもとづくものであったとしても、
不必要な強制避難がなされたのであれば、
それは重大な人権侵害という他ありません。
現政権が、
自らの過ちを反省することはありえないので、
次の政権を担う方々にお願いしたいです。
以下に、中川氏が
論拠として掲げられた単著をあげておきます。
「原発事故」以前のものを太字にしました。
(雑誌論文は省略してあります。)
近藤宗平 著
『人は放射線になぜ弱いか 第3版』
(講談社ブルーバックス、平成10年12月)
近藤宗平 著
『低線量放射線の健康影響』
(近畿大学出版部、平成17年11月)
高田純 著
『世界の放射線被曝地調査』
(講談社ブルーバックス、平成14年1月)
高田純 著
『砂の砂漠とシルクロード観光のリスク
― NHKが放送しなかった桜蘭遺跡周辺の不都合な真実』
(医療科学社、平成21年9月)
高田純 著
『福島 嘘と真実 ― 東日本放射線衛生調査からの報告』
(医療科学社、平成23年7月)
中村仁信 著
『低量放射線は怖くない』
(遊タイム出版、平成23年6月)
T.D.ラッキー著、茂木弘道 訳
『放射能を怖がるな!』
(日新報道、平成23年8月)
※ラッキー博士の研究書は、
これまで以下の2冊が翻訳されているようです(栗木)。
松平寛道 監訳、
『放射線ホルミシス』(ソフトサイエンス社、平成2年)
『放射線ホルミシス(2)』(ソフトサイエンス社、平成5年)
ウェード・アリソン著、峯村利哉 訳
『放射能と理性 ― なぜ「100ミリシーベルト」なのか』
(徳間書店、平成23年7月)
クロード・アレグレ著、中村栄三 監修、林昌宏 訳
『原発はほんとうに危険か? ― フランスからの提言』
(原書房、平成23年7月)
渡辺一夫・稲葉次郎 編
『放射能と人体 ― くらしの中の放射線』
(研成社、平成11年6月)
藤野薫 編、稲恭宏 著
『放射線ホルミシスの話 ― 大自然の仕組み』
(せせらぎ出版、平成16年5月)
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