林健太郎氏(大正2〔1913〕生 平成16〔2004〕没)の
西洋近世史 概説 『世界の歩み 上巻』を読みました。
世界の歩み 上巻 (岩波新書 青版 15)
林健太郎 著『世界の歩み 上巻』
(岩波新書、昭和24年9月。改版、昭和39年5月)
※章立ては次の通り。
第一章 国家と社会
第二章 「太陽の沈まぬ国」の変遷
第三章 胡椒と銀と羅紗
第四章 国王と人民(一)
第五章 国王と人民(二)
第六章 思想の力
第七章 自由の国の建設
第八章 嵐の三色旗
第九章 鋼鉄のリヴァイアサン
第十章 精神の王国
第十一章 混乱と悩み
第十二章 新しい始まり
林健太郎氏は、
名前のみ良く知っていたものの、熟読する機会もなく、
今に至りました。
最近になって、中川八洋氏が、
林氏のことを高く評価していることを知り、
一度きちんと読んでみようと思いました。
(『民主党大不況』363頁。『「名著」の解読学』15~20頁など参照。)
近代ドイツ史の専門家としての業績は
『林健太郎著作集』全4巻(山川出版、平成5年)にまとめられていますが、
一般国民に向けて書かれた概説書、
エッセイ等にも優れたものがたくさんあります。
私にとって重要なのは、
概説書、エッセイの方なので、
古書で少しずつ購入しながら、読んでいこうと思います。
恐らく、世界史を勉強しようと思えば、
高校の教科書を丁寧に読んでいくのが、
一番手っ取り早いのでしょうが、
昔から、教科書の歴史を
すなおには楽しめない質で、
信頼できる一人の著者が執筆した概説書があれば、
それを熟読するようにしたいと思っております。
『世界の歩み』は、
林氏が36歳のときに書かれた西洋近世・近代史の概説書です。
書名はよく知っていたのですが、
岩波新書から出ていたので、勝手に
左翼の公式に従った概説書だろうと思い込んで、
遠ざけておりました。
今回、上巻を読んでみて、
ごく穏当な、高校生以上、大人が読むにふさわしい、
教養としての西洋近世史になっていると思いました。
さすがに、
ソ連が冷戦の敗者になるとは、
思いもよらなかった時代の書物ですので、
フランス革命や、
社会主義、共産主義に対しての
辛辣な批判は見られませんが、
盲目的に称賛するような記述はなく、
いずれも長所短所をよく考えて、
穏当なところが記述されていると思いました。
一章につき
大学の授業1,2コマ程度の分量ですので、
大学で、林氏から直接「西洋近世史概説」の講義を
受けているような感じで、楽しむことができました。
コンパクトにまとまっている所もありがたく、
一人の筆者が取り組んだ
穏当な西洋近世史の概説として
お薦めできる1冊(2冊!)です。
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