広瀬和生 著
『この落語家を聴け!』
(集英社文庫、平成22年10月。初出は(株)アスペクト、平成20年7月)
2007年の時点で、
実際に活躍していた「素晴らしき噺家達」51名を取り上げ、
その現在進行形の姿を描いた評論です。
単行本で出た時に偶然手にし、
一気に読了し、その後の落語の聴き方に、
強い影響を受けました。
氏の評価に偏りがあるのかどうかは、
私には何とも判断しかねるのですが、
明らかなのは広瀬氏の筆力で、
私の聴いたこともない落語家さんについて、
ぜひ聴いてみたいな、と思わせられる魅力を伝える
勢いのある文章で、
乗せられて(CDで)聴いてみた噺家は少なからず。
そのままハマってしまったのが、
柳家小三治と、柳家喬太郎です。
実力に驚いて、波長も合って、
今後じっくり聴いていきたいと思っているのが、
柳家さん喬と、立川談春と、瀧川鯉昇です。
逆に、
聴いてみて、
実力の凄さは感じ取れたものの、
今のところ私の感性と距離があるのは、
立川談志と、立川志の輔と、柳亭市馬です。
談志さんは、
言葉が聴き取りにくいのは
やはり落語家にとって致命的なことだと感じるのと、
噺の間の取り方が、せかせかしていて苦手です。
その他、
聴いてみたものの、
良さがわからなかったのは、
春風亭昇太と、柳家花緑です。
まだこれからの方なのかもしれません。
もう一人、
まだほとんど見聴きする機会がないのですが、
笑福亭鶴瓶の、落語家としての魅力に気がつかせてくれた点にも感謝しております。
まだまだ知らないことばかりですので、
ただ無知なだけなのかもしれませんが、
クラシック音楽と比べると、
落語には、読ませる評論家がほとんどいないように感じます。
落語家さん本人による著述は
それなりに出版されていると思うのですが、
第三者の立場から、
落語を評論することは、
それほど盛んでないように感じています。
広瀬和生氏の評論は、
私にとって今のところ、
一つの基準となっております。
なお、
現在手にしやすいのは、
文庫版の方だと思いますが、
段組の関係か、加筆、再編集の関係か、
若干読み難くなっているように感じました。
古本などで安く手に入るようでしたら、
もとの単行本の方をお薦めします。
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