噂に違わず、汲めども尽きぬ泉のような一冊でした。
スラスラと読み通せる、竹内均氏の訳にも感謝。
さらにしばらく、熟読吟味したいと思います。
サミュエル・スマイルズ著、竹内均訳『自助論』
(三笠書房 知的生きかた文庫、2002年4月改訂新板)より。
※印は栗木によるコメントです。
10章 人間の器量
「立派な人格―それは人生の最も気高い宝である。
人格はそれ自体がすぐれた身分であり、
世間の信用を勝ち取れる財産だ。
社会的な地位がどうであれ、
立派な人格者はそれだけで尊敬を受ける。」261
※人格に着目すること。
お金持ちか、どこの大学を出ているのか、家柄はどうか、
だけで人を判断すると、間違いのもとです。
しかし、その人を一目みて、
人格まで正しく判断できるとは
思わないほうがようでしょう。
その点、入社試験などの際に、
学歴、家柄などで
ある程度振り分けられるのは、
仕方のないところもあるでしょう。
でもやはり、
最終的に勝負となるのが、
人格であることは確かだと思います。
「立派な人格は人間の最良の特性である。
人格者は社会の良心であり、
同時に国家の原動力になる。
世界を支配するのは高いモラルに他ならない。」262
※モラルが社会を、国家を支配する。
トップが責任を回避したり、
嘘をついてはダメ。
私腹を肥やしてはダメ。
トップの人格を問うことは、
あまり厳しすぎるのも考えものですが、
基本的な考え方として
あるべきことだと思います。
「知性あふれる人間を尊敬するのはいっこうにかまわない。
だが知性以上の何かがなければ、
彼らを信用するのは早計に過ぎる。」263
※学歴だけではダメ、
知的なだけでもダメ。
立派な人格の持ち主か、が一番大事。
私的な人間づきあいには、
とくに大切な視点でしょう。
「『知は力なり』といわれる。
だがもっと深遠な意味でいえば、
人格こそが力なのである。
愛情なき心、行動を伴わぬ知性、
やさしさに欠けた才気……
これらも確かに力ではあるが、
ヘタをすると害悪をもたらすだけのものになりかねない。」265
※心が伴わない知性は害である。
それはよくわかります。
勉強ができるだけ、では
社会に出てからかえって苦労することは多いでしょう。
学校は学校として、
知力を鍛える場でよいと思いますが、
それだけで
社会に出てから評価されるわけでないことは知っておきたい。
『常に良心が命じる義務を果たし、
結果は天にまかせよ』
(アースキン、幼少のころ両親から受けた教え)266
※良心に耳をかたむけて生きる。
若い時ほど、どう生きるか迷うことがあります。
年をとってきても、それなりにあります。
そんな時に、
「良心が命じる義務を果たすこと」を基準にすると、
まちがうことは少なくなるでしょう。
『顔を高く上げようとしない若者は、
いつしか足もとばかり眺めて生きるようになるだろう。
空高く飛ぼうとしない精神は、
地べたをはいつくばる運命をたどるだろう』
(政治家ディズレリー)267
※顔を高く上げる。
自分でそうしなければ、
誰も押し上げてはくれない。
足もとばかりながめながら、
下を向いてばかりで、
なぜかしら結果がうまくいくことは
まずあり得ないものです。
「言行一致は、
立派な人格のバックボーンを成している。
常に誠実な言動を心がけるのが
人格者のすぐれた特質なのだ。」268
※言行一致はむつかしい。
でもそれを理想にすることは大切。
つねに誠実であろうとすること、
わたしはとりあえず、
無言実行ではありたいと思っています。
「言葉上だけでなく行動においても誠実たらんと努力することが、
高潔な人格をつくる基本だ。
人は外見と内実とを一致させなくてはいけないし、
かくありたいと思う理想像に
自分自身を実際に重ね合わせていくべきなのである。」269
※誠実に生きること。
誠実さとは、言行一致であること。
その分、どうしても実現したいことは、
ちゃんと口に出して、自分を追い込んで、
死に物狂いで努力して、
結果を出していくことも時には必要でしょう。
「誠実さと良心は、
人間として誇るべき資質である。逆に、
行動と言葉がバラバラな人間は決して尊敬などされないし、
彼らが語る言葉には何の重みもない。」270
※良心の声に耳を傾けて、
誠実に生きる。
言っていることと
やっていることが違うと、
誰からも信用されなくなる。
それは日々肝に銘じておきたい。
うっかり違ってくることは
誰にでも起きかねないことですから、
軽々しく嘘をつくことはしない。
「良心とは人格を守る砦であり、
人生にも大きな影響を与える。
良心を失えば人格は守られるすべもなく、
誘惑のえじきとなり果てるだろう。
誘惑に屈するにつれ、
人は卑劣で不誠実な道に迷いこみ、
堕落する。」271
※良心って何だろう?
自分の心の中の言葉に耳を傾ける。
何か決断を下すとき、
何か新しいことをはじめるとき、
それは良心に照らしてどうなのか、
考えるようにすると、
道を誤る瞬間を避けられるかもしれません。
困ったときは自分の良心に相談する。
相談するに足るだけの良心を、
物心つくまでに育てておきたいものです。
『行動でも思考でも反復こそが力である』
(詩人メタスターシオ)272
※くり返せるかどうかは、
学問の要でもある。
すぐに飽きる人は、
何ごとも成就しない。
『立派な習慣を身につけるよう気をくばるのが、
いちばん賢明な習慣』
(リンチ)273
※良い習慣を
日ごろの生活の中にどれだけ取り入れられるかは、
親から子どもへの一番の贈り物でしょう。
「人に対する思いやりは、
万物に生気を与える日光のように
無言の影響力を持っている。」275
※思いやりの心を忘れない。
思いやりの心を持つことは、
誰にでもできることです。
それをするかしないか、
その影響は自分が思うより、
大きなものとなるでしょう。
『礼儀作法には金がかからない。
しかも礼をつくすだけで何でも手に入る。』
(モンタギュー夫人)276
※礼儀も大切。
人が人を評価するのは、
まず見た目からです。
とくに若いうちは、
まず見た目をしっかり整えるようにしたい。
「われわれは、
気どったり策略を弄したりせずとも、
心から親切にふるまうだけで周囲に好感と喜びを与えられる。」276
※思いやりと親切の気持ちが何より。
それは誰にでもできる簡単なことです。
心をきれいにたもって、
相手のことを第一に考えて、
思いやりの心を忘れないで行動し続けていいるうちに、
自然と身についてきます。
「マナーは、
行動を引き立たせる装身具のようなものだ。
親身な言葉をかけたり思いやりを行動で表わしたりするには、
それにふさわしい方法がある。」277
※マナーにも気を配ろう。
人が人を評価するのは、
まず見た目からです。
わざわざ低い評価を得ることのないように、
それなりに気を使って、
最低限のマナーを身につけられるように
努力しましょう。
「多くの人はそれほど寛大ではない。
外面に表われるふるまいを見て
その人間を判断し好き嫌いを決める、
というのが世間一般の常識なのだ。」279
※世間に甘えない。
自分で思うより、
世間は厳しいものです。
かといって、無理な背伸びをしても仕方がないので、
今の自分が正当に評価されるように、
今の自分ができる範囲で、
できるだけの努力はしておきましょう。
見た目、マナーについても。
「真の人格者であるかどうかは、
服装や生活様式や態度ではなく
道徳的価値によって決まる。
財産ではなく人柄が、
その判断の基準になる。」282
※そうはいっても、
最終的に大切なのは、人柄であることを知る。
根本は人柄。
そこをおろそかにしてはならない。
服装も、生活様式も、財産も、
よい人柄があってこそ、
相乗効果で高まってくる。
「誠実と礼節を忘れず、
節度と勇気を持ち、
自尊心と自助の精神にのっとって生きる人は、
貧富のいかんを問わず真の人格者なのだ。」285
※誠実に生きる、
世間にとけこんで、
慎ましやかに生きる、
勇気を持って生きる、
プライドを持って生きる、
自らの手足で生きる、
大事なことばかりだ。
「ほんとうの勇気は常にやさしさと共にある」287
※勇気とは暴力的であることではない。
やさしさにもとづく勇気が大切。
「真の人格者であるかどうかを計るものさしはたくさんある。
中でもまちがいのない方法は、
その人間が目下の者にどうふるまうかを見ることだ。」289
※威張るリーダーは偽物。
目が上についているリーダー、
目上の者の顔色ばかりうかがっているリーダーは偽物。
でもそんなリーダーはどこにでもいる。
組織の中で生きていくためには、
そうしたリーダーのもとで生きていく処世術も必要。
「真の人格者であれば、
そのちょっとしたふるまいにも
他人に対する気くばりが行き届いている。
相手が対等な立場であろうと目下の者であろうと、
その気くばりは変わらない。」290
※上に立つものほど、気配りを忘れない。
目が下についているかどうか。
部下を信頼して、
仕事を任せて、
失敗したときの責任は自分が取る、
そんなリーダーになれたらいいな。
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