2011年10月31日月曜日

スマイルズ 『向上心』 第6章(中)


サミュエル・スマイルズ著、竹内均 訳
『向上心』
(三笠書房、知的生きかた文庫。改訂新版、平成23年。初出は昭和62年)

第6章 人を動かす

(承前)


どうしても自分の意見を発表して、
 対立する立場をとらなければならない場合がある。

 同調することが意志の弱さを示すのではなく、
 むしろ罪になる時だ。

 悪徳には抵抗すべきである。

 邪悪なものには泣き寝入りをせず、
 打ちのめさなければならない。
」228

※自分の意見というものは、
 組織の中にいるうちは、
 極力おもてに出さないほうが、
 まず間違いなく賢い生き方である。

 しかるべき時期というものは、
 十年に一度も来ない、と心得て、
 ふだんは絶対に
 本心を明らかにしないことが肝要である。

 しかしながら、
 たとえ時期を得ないにしても、
 反論を唱えてよいときがある。

 それは自分が無言の了解を与えることによって、
 組織が犯罪に加担する可能性があるときである。

 こう読んでみました。
 とてもわかりやすい、重要な指摘だと思います。


世界を正しい方向にリードし、
 支配するには、
 志操堅固で勇気ある人である。
 意志薄弱な人間は何の功績も残さない。
 まっすぐな精神を持ったエネルギッシュな人の一生は、
 世界を照らす光の軌跡にも似ている。
」229

※元気がある、
 ということは重要ですね。

 私は残念ながら、
 それほど元気あふれる人間ではないのですが、

 しっかり健康管理をして、
 いつもほどほどに元気な私を
 見せられるように心がけています。

 人さまにできるだけ
 よい影響を与えられるように
 なれるように心がけてはいます。
 

ごく人並みの力しかない平凡な人でも、
 活力にあふれた目的意識に刺激されると、
 思いよらぬ結果を生むことがあるのだ。
」232

※生徒を教えるときの、
 とても大切な観点だと思います。

 その子のやる気をどうひきだすか。
 自分からやる気になるにはどうしたらいいか。

 基本は、信じて待つことでしょうか。

 北風と太陽の、北風になってはいけません。

 とはいえ、できるわけないさ、
 と思って、黙って待っていても、
 まず上手くいきません。

 きっとできる、と本気で信じて、

 小さな成功を大げさに褒めて、
 何度失敗しても励まし続けて、
 一緒に努力していくことが、
 教育の基本だと思います。


世間が与えてくれる保証など、
 その多くは空しい一時の夢にすぎない。

 自分の力を信じて
 価値のある人間になるのが
 何よりも安全な道だと、
 自分にもわかりかけてきた

 (ミケランジェロ)232

※自分の評価は
 自分ですれば良い。

 案外、わが子のことを、
 その子の目の前で、
 ひどく見下げた言い方をする親が多いものです。

 親にすら信じてもらえないと、
 なかなか自分に自身はもてません。

 そんな不安定な状態で、
 社会に投げ出されると、
 周りの評価に一喜一憂して、
 なかなか自分をうまく保てなくなります。

 自分の中にちゃんとした価値が定まっていて、
 周りが何といっても、
 私はこれでいいんだ、
 という所に、落ち着けるといいな。


勇気とやさしさは矛盾するものではない。
 それどころか勇気ある行動をとる人は、
 男であっても女に負けないほどの
 やさしさと繊細な神経を持ち合わせているものだ。
 勇気ある人間は、同時にまた寛大な人間にもなり得る。
 いや、むしろ自然にそうなってしまう。
」233

※勇気が粗暴と結びつかないように。
 勇気は常にやさしさに結びついているように。

 やさしさが優柔不断と結びつかないように。
 やさしさは常に勇気と結びついているように。

 勇気とやさしさが隣り合わせになっていることは、
 しだいに気がついて来るものですが、

 はじめからそう教えておいてもらえると、
 粗暴さや、優柔不断に傾くことから、
 距離を置けるかもしれません。




度量の大きな人間は、
 幸運にめぐり合っても不幸にあっても
 極端な行動はとらないものだ。

 成功したからといって有頂天にならず、
 失敗したからといって
 立ち直れないほど悲嘆にくれたりもしない。

 危険は避けないが好んで求めもしない。
 心にかかることがほとんどないからである。

 口数は少なくしゃべり方もゆっくりしているが、
 必要とあれば思ったことを包み隠さず大胆に発表する。

 自分の実力を信じているから
 他人の長所をすぐに認める。

 侮辱を受けても無視する。

 自分や他人についてとやかく語ったりしない。
 自分がほめられたり
 他人が傷つけられたりするのを好まないからである。

 つまらぬことですぐにわめき散らしたりせず、
 人の助けを求めたりもしないのだ。

 (アリストテレス)235

※こんな私に、なれたらなと思う。

 こうして読むと、二千年前から、
 大人の理想像はそんなに変わらないんだな、
 と思う。

 正直、
 江戸時代の武士の心構えですよ、
 といわれたら、
 その通りだと思ってしまいます。

 西洋にせよ、東洋にせよ、
 高い価値を置く出来事に、
 大きな違いはないように感じる、
 とまで言ったら、言いすぎでしょうか。

 違いに着目すれば、
 違う国で、違う歴史を背負って生きてきたわけですから、
 いくらでも違いは見つかるでしょう。

 でもこういった道徳的な側面、
 何を敬って、何を尊いと考えるのかについて、
 人間が共通な価値観を持つことについて、
 もっと着目すべきなのかもしれません。

 国家の歴史において、
 責任ある立場にいる人たちが、
 いかなる価値を貴いと考えてきたのか、
 じっくる考えなおしてみたい、
 と思います。

2011年10月20日木曜日

【読了】Henry James, Washington Square (MMR Beginner)

やさしい英語の本、
MMRのシリーズ7冊目は、
アメリカで生まれイギリスで活躍した小説家
ヘンリー・ジェイムズ(1843年4月15日生 1916年2月28日没)の
『ワシントン・スクエア』(1880年)を読みました。


Henry James
Washington Square

Retold by Margaret Tarner
(Macmillan Readers Beginner Lever)

1999年(8004語)



ヘンリー・ジェイムズについて、
まったく知らなかったのですが、
調べてみると有名な方でした。

いわゆる恋愛小説ですが、
心理描写がしっかりとなされていて、
読み応えがありました。

リトールド版なので、
あっという間に、面白く読み通すことができました。

ハッピー・エンドには終わらないのですが、
重厚な、ある種の感慨におそわれる力強さがあり、
原著を読んでみたい、と思いました。


邦訳では、現在すぐに手に入るものとしては、

河島弘美 訳『ワシントン・スクエア』
(岩波文庫、平成23年8月)

があります。

他にも、より代表作と言われているものが
いろいろとあるようなので、調べて、
面白そうなのを読んでみたいと思います。


※計7冊 56,918語。

2011年10月15日土曜日

【読了】O.Henry, The Last Leaf and other Stories(MMR Beginner)

やさしい英語の本、
MMRのシリーズ6冊目は、
アメリカの短編作家、オー・ヘンリーの作品集を読みました。


O.Henry
The Last Leaf and Other Stories

Retold by Katherine Mattock
(Macmillan Readers Beginner Lever)

1999年(7,418語)



収録されているのは次の5作品です。

 The Good Burglar
 The Last Leaf
 A Lesson in Love
 The Jeweller's wife
 The Car is Waiting


情景描写に優れている作家なので、
リトールド版とはいえ、所々わからない単語がありました。
ただし、1作品に数語程度のことなので、
辞書をひいて調べて、解決しました。

オー・ヘンリーの作品は、
どれも一捻り趣向が凝らしてあって、
最後にやられた!と思わせられる、
少し軽めの、楽しいものが多いです。

私はそれほどのめり込むこともなく、
時々読んで、それなりに楽しんでいる、
といった感じでしょうか。


身近で手に入る邦訳のどれに対応しているのか、
調べようと思いましたが、

日本では、いまだ信頼するに足る
全集(かそれに近い著作集)は出ておらず、

また簡単に調べられる書誌のデータも
日本語では整理されていないようなので、

しばらくはこのまま放っておくことにしました。


わりと簡単に手に入って、
多めの作品数を収録しているものとしては、

 大久保康雄 訳
 『O・ヘンリー短編集』
  計3冊(新潮文庫、〈1〉昭和44年。〈2・3〉昭和62・63年)

 千葉茂樹 訳
 『オー・ヘンリー ショートストーリーセレクション』
  計8冊(理論社、平成19・20年)

があります。教室には

 飯島淳秀 訳『賢者の贈り物』
 (講談社青い鳥文庫、新装版、平成21年10月。初出は平成2年)

を置いてあります。

オー・ヘンリーの孤独さ、
といったものが感じ取れるようになると、
面白みが増してくるように思いますが、

私にはまだ今ひとつの所があります。


※計6冊 48,914語。

【読了】ドナルド・キーン 『明治天皇(四)』



ドナルド・キーン著、角地幸男 訳『明治天皇(四)』
(新潮文庫、平成19年4月。初出は平成13年10月)


少し時間がかかりましたが、
キーンさんの大作『明治天皇』、
ようやく読み終えました。

日本の国民ですので、
明治天皇の名を知らないわけはありませんが、

どんなお方であったのかは、
詳しく勉強する機会がないまま、
今まで生きて来ました。

大変勉強になりました。

訳書でありながら、
最後まで飽きることなく、
読了することができました。

これはキーンさんの並外れた筆力とともに、
角地幸男さんのこなれた邦訳による所も大きいでしょう。


内容面では、
日韓併合に到るまでの経緯を
さめた筆致で詳しく伝えてあったのも
ありがたかったです。

また、大逆事件の経緯を
幸徳秋水の小伝とともに詳しく描き出し、
最後に、五・一五事件、二・二六事件などの
政府を転覆せんとするテロ行為と
結びつけているところも新鮮でした。

日本では、
二・二六事件の源流を、
大逆事件に結びつける考え方は、
ふつうになされているのでしょうか。

表面的な左右の思想に惑わされなければ、
どちらも政府転覆を是とする思想に貫かれた
いまわしい事件です。


Amazonで調べてみると、
英語の原著のほうも、まだ手に入るようなので、
近々手に入れておこうと思います。



Donald Keene
Emperor of Japan: Meiji And His World, 1852-1912
Columbia Univ Pr; New Ed版(2005)

【読了】Biscuit シリーズ②3冊(ICR My First)


Biscuit Want to Play
2001年(117語 YL 0.4)



Biscuit Goes to School
2002年(109語 YL 0.3)



Biscuit's Big Friend
2003年(138語 YL 0.3)


by Alyssa Satin Capucilli
pictures by Pat Schories
(My First I Can Read Book)


ビスケットのシリーズ、
何より絵がかわいらしくて楽しいです。

おそらく邦訳版を出版しても好評を得るのではないでしょうか。

英文はかなりやさしいレベル、
絵を見れば、ほぼ推測できるレベルだと思います。

が、

そもそも日本語の本を読む習慣がなく、

小中学校で、
英語に対してマイナスのイメージを抱いてしまったお子さんには、

英語の文字が書かれている、という時点でアウトでした。


もう少しレベルを落として試してみたい、
と思います。

 日本語の本を読む習慣がほとんどなかった子
 小中学校で、英語に対する劣等感、拒否反応を植えつけられた子

に対しても、何らかの糸口が見つかるといいな、と思っております。


※YL(読みやすさレベル)については、
 古川昭夫 編『めざせ!100万語 読書記録手帳』
 (第6版、2010年4月)を参照しました。

2011年10月10日月曜日

スマイルズ 『向上心』 第6章(上)



サミュエル・スマイルズ(Samuel Smiles)著、竹内均 訳
『向上心(CHARACTER)』
(三笠書房、知的生きかた文庫、2011年6月改訂新版)より。
※印は、栗木によるコメント。

第6章 人を動かす


われわれは勇気ある人たちに負うところが大きい。」214
ここでとり上げる勇気とは、
 真理と義務を重んじるために
 あらゆる困難と苦しみに自らすすんで立ち向かう、
 内に秘めた静かな努力と忍耐力のことである。
」214

※ただ勇気は大切だ、というよりも、
 もう一歩踏み込んで、
 「真理と義務を重んじるために」
 とあることに注意したいです。
 無鉄砲につきすすんでいくことが、
 勇気なのではありません。


人間社会において最高の秩序を特徴づけるのは、
 真理を求めてそれを発表する勇気、
 公平な判断を下す勇気、
 誠実であろうとする勇気、
 誘惑を退ける勇気、
 そして義務を遂行する勇気などに代表される
 精神的な勇気である。

 このような勇気がまず備わっていなければ、
 他の美徳を身につけることはおぼつかない。
」214

※さまざまな美徳の土台となるのが
 精神的な勇気です。

 言われてみると気がつきますが、その通りだと思います。

 真理を追求しそれを発表するのにも、
 公平に判断を下すのにも、
 誠実であり続けるのにも、
 誘惑を退けるのにも、
 義務をやり遂げるのにも、

 すべて勇気が必要です。

 自分と自分のまわりにいる人びとを
 良い方向にみちびく勇気を持てるようにしたいです。



成功は努力に対する当然の報酬であるが、
 かすかな成功の見込みすらないのに、
 こつこつと根気よく努力し続けなければならないことがよくある。

 先の見通しがまったく立たない暗闇の中で種を蒔き、
 やがてそれが芽を吹いて根を広げ、
 見事な実を結ぶのを夢見ながら、
 自分の勇気だけを頼りに生きなければならない。
」219

※たった一人で、
 先の見通しが立たない中で、
 延々と根気強く、努力をし続けるのは、
 誰にでもできることではありません。

 また、せいぜい七、八十年の人生の中で、
 たった一人の努力を、百年も、二百年も続けていくことは、
 生物学的に不可能ともいえます。

 だからある程度、限度はありますが、
 五年、十年くらいはふつうに、
 できれば二、三十年くらいの不遇の時期でも、

 自分ひとりの勇気を支えに、
 乗り切れるようになれるといい。 

 でもそれを、誰でもが
 できて当然だとは思いません。
 そんなには強くなれないのがふつうでしょう。


生きていくうえで必要な勇気の大半は
 英雄的な勇気ではない。

 歴史に残る勇気に負けない勇気は、
 日常生活でも発揮されるものだ。

 たとえば誠実さを支える勇気、
 誘惑を退ける勇気、
 真実を語る勇気、
 にせものではない自分自身を貫き通す勇気、
 不当に他人の財力を頼らず、
  自分の収入だけでつつましく暮らす勇気などである。
」220

※歴史上の英雄が示した勇気、
 だけが勇気ではない、というのも大切な考え方です。

 目の前のさまざまな日常の出来事を
 つつがなく乗り切るためにも、
 小さなたくさんの勇気が必要になります。

 一歩一歩、
 目の前の自分の壁をのりこえて行くことも、
 その人なりの勇気がなければ
 できることではありません。


この世に存在する不幸と悪のほとんどは、
 優柔不断なためか目的意識が薄弱なために生じる。

 言葉を変えれば、勇気がないからである。

 人はみな、何が正しいのかよく承知している。
 それでいて正しいことをする勇気に欠けている場合が多い。

 自分が果たすべき義務をよくわきまえていながら、
 それを実行に移すためになくてはならぬ
 決断力を奮い起こすことをしない。
」220

※決断するには勇気がいる。
 決断できないのは勇気がないからである。

 決断できなくても、
 目の前の日々の生活をとりあえず
 続けていくことはできるでしょう。

 変える必要がないときに、
 無理して変える必要はありません。

 ただ、明らかに
 近々変えないといけないことがわかっていながら、
 リスクを怖がって、少しの非難をあびることを怖がって、
 二の足を踏みつづけることは、
 立場が上になればなるほど、
 害は大きなものになるでしょう。


決断力は自分の立場を固持する力を与える。
 もしたとえわずかでも屈すれば、
 破滅につながる下り坂に一歩
 足を踏み出すことになるだろう。

 決断を下すのに、
 他人の力をあてにするのは
 無意味というよりもっとひどい。

 緊急の事態において
 われわれは自分の力を信じ、
 勇気を持ってことにあたる習慣を
 身につけなければならない。
」221

※決断力は、
 組織の上のほうにいて、
 リーダーとして歩いていく人間には
 不可欠なものといえるでしょう。

 逆にいえば、
 組織の下のほうで、
 組織の歯車として生きる人間にとって、

 自分なりの創意工夫にもとづく決断は、
 むしろ上から煙たがられて足をすくわれる
 要因になりかねません。

 独立して一人で歩いてゆく勇気がないのであれば、
 わたしの決断力によって、
 所属する組織における立場を危うくすることもある、
 と知っておきたい。


見事に練り上げられてはいるが言葉だけで終わってしまうような目的、
 かけ声ばかりで実行されない行為、
 いつまで経っても手がつけられない計画 ―
 これらはいずれも、
 ほんのちょっとした勇気ある決断がなされないのが原因である。

 口ばかりで何もしないなら、
 黙っているほうがましというものだ。
」222

※口先だけなのは、
 自分を信じてついてきてくれた方々にも
 多大な迷惑がかかってしまう。

 それを気にしないのは不誠実である。

 有言実行がほんとうは理想であるが、
 なかなかそういうわけにもいかないものだ。

 私は少なくとも、
 無言実行ではあるように心がけています。

 五、六十代になって、どこかで
 有言実行に切り替えられるときが来るとよいのですが、
 このまま黙々と、
 目の前のできることを精一杯やり続けて、
 老後を迎える、というのでも、
 たぶんそれほど悔いは残らないでしょう。


われわれは自分を貫く勇気を持つべきである。
 他人の影であったり、こだまであったりしてはならない。

 自分の力を試し、自分の頭で考え、
 自分の意見を発表すべきなのだ。

 自分自身の考えを練り上げて、
 自分だけの信念を築かなければならない。
」227

※みんながみんなそうあることは無理であろう。
 でも人の上に立つ可能性のある人には、
 こうした勇気が不可欠である。

 私はたまたま、
 そうした人間に生まれたようで、
 いくつかの組織の下でうまく生きていくことは、
 難しかったようです。

 自分で考えて、
 自分の足で一歩一歩歩いていくことは、
 私にとって、当たり前の基本スタイルです。

 でもそれゆえ、あまりこれが
 他の人にとっても当たり前のことだと思い込まないように、
 気をつけています。


昔から、
 あえて自分の意見をまとめようとしないのは卑怯者、
 やろうと思えばできるのにそうしないのは怠け者、
 そして自分の意見が何もないのは愚か者だと言われている。
」227

※なるほど!
 しかし仮に新入社員が
 この通りに自分の意見をもって実践しようとしたら、
 周りの総スカンを食うでしょう。

 逆にもし、
 自分で起業しようとするなら、
 それはむしろ当たり前のことで、
 できなければすぐに廃業するでしょう。


勇敢に行動するのだが、
 一歩歩むごとに勇気が外に漏れてしまう。

 決断力と勇気と忍耐力が不足しているのだ。

 先の危険を計算し、
 チャンスをはかりにかけているうちに
 二度とめぐって来ない大事な機会を見逃してしまうのである。
」228

※こうならないためには、
 若い頃からの、失敗も含めたいくつかの現場の経験が必要でしょう。
 いきなり、完璧なリーダーにはなれません。

 決断するには勇気が必要だ。
 やり遂げるには忍耐力が必要だ。

 それなり大変ですが、
 そんな生き方が私はとても好きです。

 それがすべてではありませんが、
 決断する仕事、
 責任を背負う仕事が、
 私には向いているようです。

2011年10月6日木曜日

塩野七生『ローマ人の物語6 勝者の混迷[上]』



塩野七生
『ローマ人の物語6 勝者の混迷[上]』
 (新潮文庫、平成14年9月。初出は平成6年8月)


夏期講習をはさんだことから、
少し時間がかかりましたが、次の巻を読み終えました。

第一章 グラックス兄弟の時代
(紀元前一三三年~前一二〇年)
第二章 マリウスとスッラの時代
(紀元前一二〇年~前七八年)

内容を問われましても、
今回はじめて見聞きすることばかりですので、
気の利いた論評はできませんが、

大きな集団が前に進もうとすれば、
いろいろと足をひっぱりあって、後ろ向きな、
じれったくなる事柄がたくさん起きてくるのだな、
と感じて、勉強になりました。

興味深く、
1冊最後まで楽しませていただきました。

こうした本格的な歴史の叙述が、
文庫本で格安に手に入るのは、大変ありがたいことです。

今年のうちに後半のもう1冊読み終えて、

来年には、文庫本で6冊からなる
長編「ユリウス・カエサル」に挑戦しようと思っております。

2011年10月4日火曜日

【読了】Louisa M. Alcott, Little Women (MMR Beginner)

やさしい英語の本、
MMRのシリーズ、
5冊目に読んだのは、
アメリカの女性作家、ルイザ・メイ・オルコット著『若草物語』です。



louisa May Alcott
Little Women

Retold by Anne Collins
(Macmillan Readers Beginner Level)


1997年刊(7092語)

英文は読みやすく、
公立高校の入試を終えて、
ふつうに英語を得意にしている子であれば、
楽しんで読めるレベルだと思います。

『若草物語』の名は知っていましたが、
邦訳を読んだことはなく、初めての出会いとなりました。

四人姉妹の心の交流、微妙なすれ違い、
アメリカの良い家庭の雰囲気が知られて、
とても興味深く読むことができました。

ぜひ今後、邦訳も読んでみたいと思います。

教室には、

 中山知子 訳(講談社 青い鳥文庫、新装版、平成21年3月。初出は平成5年)

を置いてあります。その他、

 矢川澄子 訳(福音館文庫、平成16年6月。初出は昭和60年)
 松本恵子 訳(新潮文庫、昭和61年12月)
 吉田勝江 訳(角川文庫、改版、平成20年11月。初出は昭和61年11月)
 小林みき 訳(ポプラポケット文庫、平成18年6月)

などがすぐに手に入るようです。

『若草物語』の続編は第4弾まで出ており、
青い鳥文庫と角川文庫で手に入ります。

今後の読書の楽しみが一つ増えました。

なおオルコットは、
1832年11月29日に生まれ、1888年3月6日に亡くなりました。


※計5冊 41496語。

2011年10月1日土曜日

スマイルズ『向上心』第5章(下)



サミュエル・スマイルズ(Samuel Smiles)著、竹内均 訳
『向上心(CHARACTER)』
(三笠書房、知的生きかた文庫、2011年6月改訂新版)より。
※印は栗木によるコメントです。

第5章 よい人間関係をつくる


手本には何の意味もないのだろうか?
 いや、手本こそすべてである。
 われわれにとって手本は学校そのものであり、
 他から何一つ学べない。
』187
(バーク)

※人には手本が必要です。
 それもできるだけよい手本が必要です。
 子どもに手本は選べません。
 そこは親の責任です。
 あまり過敏になっても仕方がありませんが、
 今できるだけのことをしておく
 心がまえは持っておきたいと思います。


模倣はほとんど無意識のうちになされるものなので、
 その効果もはっきりした形ではわからない。
 しかし、まねした当人に与える影響はおそらく永遠に消えないだろう。

 人格が変わったことが歴然とわかるのは、
 感じやすい人がよほど印象的な人物にかかわった時だけである。

 しかしそれほど目立たない人物が、
 まわりに人に何らかの形で影響を与える場合もあり得るのだ。
 その人物が手本となって絶えず働きかけ、
 感受性やものの考え方、習慣などが確実に似かよってくるのである。
」187

※当人が気がつかないうちに、
 自分の意志で自由にふるまっているうちに、
 よいお手本をまねしているような状況がベストでしょうか。

 さまざまな素質の中で、
 すなおな心がとても大切なのは、
 結果としてよい模倣をつみかさねることができるからで、

 どれだけ才能に恵まれていても、
 すなおな心が失われた状態では、
 その人なりにどれだけ努力を重ねても、
 徒労に終わってしまうことが多いのです。


環境は人格の形成に大いに力がある。
 環境が、個人の成長期において
 もっともその影響力を発揮するというのは、
 自然の理にかなっている。
」189

※環境を整えてあげること。
 どうにもならない部分もありますが、
 できるかぎりのことはしておきたいものです。

 環境は、
 お金が無いとどうにもならないこともありますが、
 おそらく、
 愛情にあふれた家庭を築いていくことが何より第一で、
 それはお金がたくさんなくても、
 どうにかなる部分です。


若い頃に一人で暮らしたおかげでとても損をした、
 と心から残念に思うことがあります。
 妥協しようとしない自我ほど、
 暮らしていてひどい仲間はありません。
 それに、他人を助けるにはどうすればよいか
 まったくわからなくなるだけでなく、
 何をしてもらいたがっているのか
 見当もつかなくなってしまうのです。

 静かな生活ができなくなるほど大げさなのも困りますが、
 人とつき合うことは私たちを満ち足りた気分にし、
 経験を豊かにしてくれるでしょう。
 慈善とはまたちがった思いやりの気持ちがだんだん輪を広げ、
 必ず宝物を持ち帰ってくるのです。
 人格の向上にも役立ち、
 自分の大切な目標からは目を離さず、
 しかも上手に自分の道を切り開いていくことが
 できるようにもなるでしょう。

 (ある夫人)192

※人とつき合うこと。
 それは外向的な性格の人にとっては
 改めて考える必要のないことだと思います。

 私はどちらかといえば内向的で、
 人とつき合うことを億劫に感じてきましたので、
 このように正直にまとめていただくと、

 そうだよね、よっぱり大切だよね、
 と反省するところが多いです。

 できれば一人で過ごすほうが
 性に合っている人は、
 おそらく他にも一定数はいると思います。

 ものすごい無理をする必要はないと思うのですが、

 やはり特に若いうちに、
 親が少しずつ助け舟をだしながらでも、
 人とつき合う習慣、
 自分なりの対処方法を身につけておくことができたら、
 いいなと思います。
 
 自分の人格を豊かにしてくれるものとして、
 人とのつき合いも、
 大切にしていきたいと思います。


善良さがどれほど多くの善を生むか、
 それは驚くほどである。
 善良なものは単独でいることがないし、
 悪もまた然りである。
 それはまた別の善なり悪なりを生み、
 新しく生まれたものはまたその次へと、とめどがない。
 池に投げた意志がだんだんと水面に波紋を広げ、
 ついには最初の輪が岸に届くのに似ている。

 この世に存在するほとんどすべての善は、
 このようにして過ぎ去った遠い過去から
 次々に受け継がれてきたものであり、
 知られざる神の御心から伝えられたものである、
 と私は考えている。
』194
 (キャノン・モーズリー)

※よい流れをつくる。

 善良さに導かれた
 よい流れをつくることができたら、
 人は強いと思います。

 人は誰でも、
 それほど深く考えていないうちに、
 流れに任せて、
 悪いほうにも流れていくことがあります。

 大切なのは、
 流れに任せているうちに、
 それほど考えていなくても、
 自然と良いほうに流れていける
 環境をつくっていくことだと思います。

 メンテナンスを怠れば、
 すぐに悪い流れへと向かって行きがちですが、

 適切にメンテナンスをし続けて、
 善良な大きな流れをつくって行きたい
 と願っております。



一緒にいるだけで、
 新鮮な空気を吸い込んでいるような気分にさせてくれる人がいるものだ。
 太陽の光をいっぱいに浴び、
 さわやかな山の空気を吸い込むように、
 彼らの存在はわれわれに再び力を与え、
 励ましてくれる。
」193

※そんな存在になれるようにがんばろう。

 私はあまり、
 外に向かって大きなエネルギーを発散させるような、
 活力にあふれた人間ではありません。

 でも日々明るく朗らかな気持ちで生きていくことで、
 周りにじわりとよい影響を与えていけるように心がけています。

 人は少しずつなら、
 良い方向に、自分を変えていけると考えます。


偉大で徳のある人物は人に慕われ、
 強い賞賛の気持ちを起こさせる。
 すぐれた人格をほめたたえることで精神は高まり、
 自分の精神を解放して
 利己心からもとの正しい姿に戻してくれる。

 偉大な思想や行動を残した人を思い出すと、
 たとえつかの間であろうとも清らかな雰囲気に包まれ、
 自らの目的や目標もいつの間にか
 高められたような気持ちになるものである。
」200

※そんな私になれたらいいです。

 すぐれた人物を褒めたたえることは、
 そういえば最近はほとんど行なわれていないように感じます。

 学校から道徳教育がなくなり、
 そもそも何が正しくて、正しくないのか、
 教えられなくなったことと、
 関係あるのでしょうか。

 必ずしも、
 日本に限ることはないと思うので、
 世界中の事例をはばひろく集めて、

 無政府主義者、全体主義者などでなければ、
 だれでも肯定しうるような道徳の教本を作れないのかなあ、
 と思います。


他人の長所を認めて賞賛する人は、
 誰よりも多くの友人に恵まれる。
 そのような人の性格は
 大らかで率直で心が暖かく、
 他人の手柄を無邪気に喜ぶことができるのだ。

 (サミュエル・ジョンソン)202

※そうありたい、と思うことが大切です。

 他人の長所を賞賛するには、
 自分のことは一歩ひいて考える、
 大らかな心が必要です。

 切磋琢磨しているライバルの成功を、
 賞賛できる、大らかな心をもてるように、
 日々研鑽したい。


狭い度量しか持たない人は、
 他人を心からほめることができない。
 何とも気の毒なことに、
 彼らには尊敬の気持ちはおろか、
 偉大な人物やその業績を認める能力がないのだ。
」204

※他人の成功を賞賛できない、
 他人の長所をほめることができないのは、

 度量が狭いあかしである、
 と知っておくことがまず大切。

 でも実際その立場にたって、
 すぐに大らかな心を示せるかは
 また別の問題でしょう。

 若いうちに、
 自分の心にわきおこる複雑な感情と向き合って、
 自分なりの対処ができるようにしておきたいものです。


他人の成功をねたんだり不愉快に思ったりするのは、
 本質的に度量の狭い、いやしい性格があるからにほかならない。

 不幸なことだが、
 世の中には大らかな気持ちを持てない人が多い。
 他人をあざ笑うことしか知らない人間ほど不愉快なものはない。
 こういった人たちは、
 どんな立派な業績であれ、
 他人の成功を腹立たしく思うことが多いのである。
 人がほめられているのを聞くのは耐えられない。
 相手が自分と同じ道を志していたり、
 同じ職業であったりすればなおさらである。
 人のあやまちは許せても、他人が
 自分を追い越して何かをするのは我慢がならない。
」205

※度量のせまい、いやしい性格でありたい、
 と思っている人はまずいないでしょう。

 他人の成功をねたんだり、腹立たしく思うこと、
 他人の失敗をあざ笑うこと、
 他人が自分を追いこしていくのは我慢ならないこと、
 
 これらの行為が、
 度量のせまい性格をしめす行為なんだと、
 具体的に教えてもらえると、

 改めて、気をつけないとな、
 と思えるものです。


ケチな了見しか持たない人は、
 他人をあざ笑ったり
 攻撃してあらをさがしたりすることしか考えない。
 分別のないあつかましい行為や
 反道徳的な行為以外のあらゆるものに、
 いつでも嘲笑を浴びせかねない。
 こんな人にとって何より救いが得られるのは、
 人格者に弱点があるのを知った時である。
」206

※そんな人とはできるだけ関わらないようにするのが一番でしょう。
 親兄弟であっても、離れて暮らすなりして、
 直接かかわらないようにしたほうがよいと思います。

 どうしてもすぐに離れられなければ、
 人生に与えられた修行の期間だと思って、
 がんばるしかないですが、
 悪い影響は避けられない、と知るべきです。


偉大な人物や充実した時代のいいところを見ずに、
 欠点ばかりを気にするのは悲しむべき性格だ

 (あるドイツの作家)206

※まず良い面をみる。
 それで騙されるなら、それでよい。
 最近は、そう思えるようになりました。

 人さまを騙す側にならないことは、
 気をつけたいです。



偉大な人の示した手本は永久に消えることがない。
 いつまでも生き続け、後の世代に語りかける。

 伝記小説は、
 精一杯に生きればどんな人間に成長して、
 どんな仕事を成し遂げられるかを教えてくれる。
 それを読めば新しい自信と力が湧いてくる。
 登場する人物が自分には手の届かないほど偉大であっても、
 やはりあこがれと希望を抱くよう勇気づけられるだろう。
」210

※模範となる人のお手本をもつこと。
 何度も言われて、
 改めてその重要性を考えさせられました。

 伝記を読むこと、
 歴史を読むことの意義は、
 やはりまずそういったところにあるのだと思います。

 義務教育の歴史では、
 偉人100人くらいの伝記を読ませる機会があるといいように思います。

 でもおそらく、100人分も、
 子供向けの伝記ってあるのでしょうか。
 調べてみます。


高潔な人格は時代から時代へと永久に受け継がれる遺産であり、
 同じような人格を絶え間なく生み出していくのである。
」211

※精神性は、相続されるものだ、
 という考え方も、
 よく考えればその通りです。

 唯物史観の影響で、
 高潔な人格をどのように子孫に伝えていくべきか、
 という課題に、しかるべき地位にいる方々は、
 誰も答えなくなってしまったように思います。


われわれは、後に残る者の心の中にいつまでも生き続ける」211

※そんな私になれるように、
 と思って生きるのも、
 自分を律するためには、
 良い心がけだと思っています。