イギリスの作家
ルイス・キャロル
(Lewis Carroll 1832.1-1898.1)の
ファンタジーの傑作
『不思議の国のアリス』
(Alice's Adventures in Wonderland)を読みました。
33歳のとき(1865.7)に出版された作品です。
ルイス・キャロル著/芹生一 訳
『ふしぎの国のアリス』
(偕成社文庫、昭和54年12月)
ファンタジーに興味がなかったので、
これまで読まないできたのですが、
リトールド版でも読めることを知り、
英語で読む前に、
先に翻訳で読んでおこうと思い立ちました。
よほど翻訳意欲をかき立てられる作品なのか、
工夫をこらした翻訳がたくさん出ているのですが、
工夫し過ぎて、
日本語として違和感があるものが少なくありませんでした。
いくつか手当たり次第に読んでみた中で、
一番クセのない日本語で、
物語がすんなり理解できたのは、
芹生一(せりうはじめ)氏の翻訳でした。
洒落というか、
冗談というか、
常識とズレた世界のオンパレードなので、
子どもが読んでも
それなりに楽しめると思いますが、
大人になってからのほうが、
次々とくり広げられる「常識とのズレ」を、
より一層楽しめるように感じました。
翻訳はたくさん出ているので、
他にも楽しめるものが見つかったら、
また報告します。
網羅していませんが、
翻訳をひと通り挙げておきます。
まずは『不思議の国のアリス』と『鏡の国のアリス』の二つとも翻訳が出ている方から。
河合祥一郎 訳
『不思議の国のアリス』
(角川文庫、平成22年2月)
河合祥一郎 訳/okama 絵
『新訳 ふしぎの国のアリス』
(角川つばさ文庫、平成22年3月)
・河合祥一郎 訳
『鏡の国のアリス』
(角川文庫、平成22年2月)
・河合祥一郎 訳/okama 絵
『新訳 かがみの国のアリス』
(角川つばさ文庫、平成22年8月)
久美里美 訳/ヤン・シュヴァンクマイエル 絵
『不思議の国のアリス』
(国書刊行会、平成23年2月。
初出はエスクアイア・マガジン・ジャパン、平成18年11月)
・久美里美 訳/ヤン・シュヴァンクマイエル絵
『鏡の国のアリス』
(国書刊行会、平成23年2月。
初出はエスクアイア・マガジン・ジャパン、平成18年12月)
山形浩生 訳/カズモトトモミ 絵
『不思議の国のアリス』
(文春文庫、平成24年1月。
初出は朝日出版社〔スソアキコ 絵〕平成15年5月)
・山形浩生 訳/スソアキコ 絵
『鏡の国のアリス』
(朝日出版社、平成17年3月)
脇明子 訳
『不思議の国のアリス』
(岩波少年文庫、平成12年6月。
初出は岩波書店〔愛蔵版〕平成10年11月)
・脇明子 訳
『鏡の国のアリス』
(岩波少年文庫、平成12年11月。
初出は岩波書店〔愛蔵版〕平成10年11月)
矢川澄子 訳/金子国義 絵
『不思議の国のアリス』
(新潮文庫、平成6年3月。
初出は新潮社〔ドゥシャン・カーライ 絵〕平成2年2月)
・矢川澄子 訳/金子國義 絵
『鏡の国のアリス』
(新潮文庫、平成6年9月。
初出は新潮社〔ドゥシャン・カーライ 絵〕平成3年1月)
北村太郎 訳
『ふしぎの国のアリス』
(集英社文庫、平成4年3月。
初出は王国社、昭和62年2月。
王国社〔海外ライブラリー〕平成8年3月に再録)
・北村太郎 訳
『鏡の国のアリス』
(王国社、平成2年2月。
王国社〔海外ライブラリー〕平成9年12月に再録)
中山知子 訳/ジョン・テニエル 絵
『ふしぎの国のアリス』
(岩崎書店 フォア文庫、昭和61年7月)
・中山知子 訳/ジョン・テニエル 絵
『鏡の国のアリス』
(岩崎書店 フォア文庫、平成4年5月)
石川澄子 訳/ジョン・テニエル 絵
『不思議の国のアリス』
(東京図書〔カラー版〕平成1年5月)
石川澄子 訳/マルティン・ガードナー 注
『不思議の国のアリス』
(東京図書、昭和55年1月)
・石川澄子 訳/ジョン・テニエル 絵
『鏡の国のアリス』
(東京図書〔カラー版〕平成1年5月)
柳瀬尚紀 訳
『不思議の国のアリス』
(ちくま文庫、昭和62年12月)
柳瀬尚紀 訳/若菜等 絵
『不思議の国のアリス』
(集英社〔少年少女名作の森〕平成2年8月)
・柳瀬尚紀 訳
『鏡の国のアリス』
(ちくま文庫、昭和63年1月)
高杉一郎 訳/山本容子 絵
『ふしぎの国のアリス』
(講談社青い鳥文庫、新装版、平成20年5月。
講談社青い鳥文庫〔ジョン・テニエル 絵〕昭和61年8月。
初出は講談社文庫、昭和58年9月)
・高杉一郎 訳/山本容子 絵
『鏡の国のアリス』
(講談社青い鳥文庫、新装版、平成22年4月)
講談社青い鳥文庫〔ジョン・テニエル 絵〕平成6年4月。
初出は講談社文庫、昭和63年8月)
芹生一 訳
『ふしぎの国のアリス』
(偕成社文庫、昭和54年12月)
・芹生一 訳
『かがみの国のアリス』
(偕成社文庫、昭和55年11月)
多田幸蔵 訳
『不思議の国のアリス』
(旺文社文庫、昭和50年1月)
・多田幸蔵 訳
『鏡の国のアリス』
(旺文社文庫、昭和50年1月)
生野幸吉 訳/ジョン・テニエル 絵
『ふしぎの国のアリス』
(福音館文庫、平成16年6月。
初出は福音館書店〔単行本〕昭和46年7月)
・生野幸吉 訳/ジョン・テニエル 絵
『鏡の国のアリス』
(福音館文庫、平成17年10月。
初出は福音館書店〔単行本〕昭和47年4月)
次に『不思議の国のアリス』のみ出している方を。
村山由佳 訳/トーベ・ヤンソン 絵
『不思議の国のアリス』
(メディアファクトリー、平成18年3月)
高橋康也・高橋迪 訳/アーサー・ラッカム 絵
『不思議の国のアリス』
(新書館〔新装版〕平成17年12月。
初出は新書館〔旧版〕昭和60年9月。
河出文庫、昭和63年10月に再録)
酒寄進一 訳/ユーリア・グコーヴァ 絵
『不思議の国のアリス』
(西村書店、平成7年5月)
吉田健一 訳
『不思議の国のアリス』
(河出書房新社〔世界文学の玉手箱〕平成5年1月)
高橋宏 訳
『不思議の国のアリス・オリジナル』
(書籍情報社、新装版、平成14年12月。初出は平成3年)
楠悦郎 訳/作場知生 絵
『不思議の国のアリス』
(新樹社、昭和62年8月)
田中俊夫 訳/ジョン・テニエル 絵
『ふしぎの国のアリス』
(岩波少年文庫、改版、昭和60年)
蕗沢忠枝 訳
『ふしぎの国のアリス』
(ポプラポケット文庫、平成17年10月。
初出はポプラ社文庫〔中島潔 絵〕昭和57年10月)
福島正実 訳
『不思議の国のアリス』
(角川文庫クラシックス、昭和55年8月)
岡田忠軒 訳
『不思議の国のアリス』
(角川文庫、昭和34年10月)
まだ目を通していないものがほとんどです。
その中で、
河合祥一郎氏の訳(角川文庫)は、
創意工夫をこらしながら、
それなりに読みやすいものでした。
同じ河合氏の角川みらい文庫版は、
新しい挿絵がたいへん魅力的でした。
もともとのジョン・テニエルの挿絵も、
大人になって眺めれば、独特の味わいがあるのですが、
子どものときは、
不気味でへんてこりんな絵だと思い、
『不思議の国のアリス』を遠ざける一因となりました。
角川みらい文庫の訳文は、
角川文庫のをほんの少しやさしくしていて、
すんなり読めるレベルです。
ただし、
芹生一氏の訳文と比べれば、
日本語としてほんの少しつながりが悪いところもありました。