2014年9月29日月曜日

【読了】森絵都著『宇宙のみなしご』(平成6年11月刊)

森絵都(もりえと 1968.4-)氏の本、
4冊目は小説『宇宙のみなしご』を読みました。

著者26歳の時(1994.11)に刊行された作品です。

第33回野間児童文芸新人賞(1995)、
第42回産経児童出版文化賞〔ニッポン放送賞〕(1995)を受賞。

『リズム』(1991.5)と
『ゴールド・フィッシュ』(1991.11)
から3年をへて刊行された
著者3作目の長編小説です。


森絵都著
『宇宙のみなしご』
(角川文庫、平成22年6月)
 ※初出は講談社、平成6年11月(単行本)。
 ※理論社 フォア文庫、平成18年6月に再録。


目先のちょっと変わった小説でした。

『ゴールド・フィッシュ』は
『リズム』の続編だったので、

実質的に2作目の長編ともいえることを考えれば、
よく出来ていると思います。

ただそういった点を考慮しなければ、

話の流れが多少ぎこちなく、
言いたいことは大体伝わってくるけれども、

物語のありえなさが若干鼻について、
今一つな印象がありました。


そうはいっても、
恐らく十代半ばの女子を対象した作品なので、

その年代の子が読めば、
もっと共感されるように思いました。


十代半ばにそういえば、
こんな感じ方をしていたかな

と記憶の彼方をたぐり寄せてみると、
かなり面白い視点をもった小説だろうと思ってみたりしますが、

恐らくこの作品を正しく評価するには、
私では少し年を取り過ぎたように感じます。


でも全体としては良い印象を保ちつつ、
次の作品へと進んでまいります。

2014年9月26日金曜日

【読了】Edith Nesbit , Five Children and It (OBW Stage2)

やさしい英語の本、通算86冊目、
オックスフォード・ブックワームズのステージ2(700語レベル)の19冊目は、

イギリスの小説家
イーディス・ネズビット(1858.8-1924.5)の
小説『砂の妖精』を読みました。

著者44歳の時(1902)に刊行された作品です。


Edith Nesbit
Five Childern and It

Retold by Diane Mowat
〔Oxford Bookworms Stage2〕
This simplified edition (c) Oxford University Press 2008
First published in Oxford Bookworms 1995
5,945語


昨年12月に、
ペンギン・リーダーズのレベル2(600語レベル)で
『鉄道きょうだい The Rialwat Children 』を読み終えて以来、
2冊目のネズビットです。


原題を直訳すると、
「5人の子供達とそれ Five Children and It 」
となりますが、

「それ」とは、
砂場で出会った風変わりな妖精サミアドをさしているので、
邦題を『砂の妖精』としているものが多いです。


『鉄道きょうだい』で感じた、
古き良き時代のイギリスのほのぼのした雰囲気はそのままに、

妖精サミアドがいい味を出していて、
こちらの方がより一層楽しめました。

ファンタジーとはいっても、
それほど突拍子もない世界が繰り広げられるわけではなく、
トトロのように懐かしい感じがする作品でした。


翻訳は石井桃子(いしいももこ)氏と
八木田宜子(やぎだよしこ)氏のを手に入れました。



石井桃子訳
『砂の妖精』
(福音館文庫、平成14年6月)
 ※初出は角川文庫、昭和38年1月。
  角川文庫を改訂増補し、福音館書店、平成3年10月〔単行本〕に再録。


砂の妖精 (講談社 青い鳥文庫)

八木田宜子訳
『砂の妖精』
(講談社青い鳥文庫、昭和59年11月。新訂版、平成8年11月)

どちらもふつうに読める翻訳ですが、

八木田氏のほうが完訳に近い分、
言い回しに多少まどろっこしいところがあったので、

とりあえず石井氏のほうから読み始めました。
読み終え次第また報告します。


※通算86冊目。計658,497語。

※Wikipediaの「イーディス・ネズビット」を参照。

2014年9月25日木曜日

【読了】森絵都著『ゴールド・フィッシュ』(平成3年11月刊)

森絵都(もりえと 1968.4-)氏の本、
23歳の時のデビュー作『リズム』(1991.5)に続いて、

同書の続編、
『ゴールド・フィッシュ』を読みました。

前著の半年後(1991.11)に刊行された作品です。


森絵都著
『ゴールド・フィッシュ』
(角川文庫、平成21年6月)
 ※初出の単行本は、講談社、平成3年11月。

読みやすく、
難なく読み通せたのは同じですが、
こちらの方が断然充実していました。

というよりも、
前著だけだと多少尻切れトンボに感じられた話が
納まりのよいところに納まっていく感じだったので、

恐らくはじめから、
2冊セットで構想を練っていたのではないかな、
と思いました。


森絵都氏のはじめの一歩として、
明るいほんわかした雰囲気で、

十代前半の日常的な世界を、
瑞々しい感性でつむぎだしていて、
それなりに愉しめる作品でした。

興味深く読ませていただきました。


なお『リズム』と『ゴールド・フィッシュ』の2冊は、
1冊に合わせて講談社青い鳥文庫からも出版されています。


森絵都著
『リズム』
(講談社青い鳥文庫、平成18年6月)

角川文庫に収録する際も
「単行本に加筆・修正」している旨、
巻末に記されていますが、

講談社青い鳥文庫に収録する際にも、
単行本を「大幅に加筆・訂正」している旨、
巻末に記されています。

単行本は未見ですが、
2つの文庫を比べるだけでも確かにいろいろ違っています。

3つの版のどれが良いのか、
考える楽しみもあるのかもしれません。

【読了】Alex Raynham , Leonardo da Vinci (OBW Stage2)

やさしい英語の本、通算85冊目、
Oxford Bookworms のStage2(700語レベル)の18冊目は、

英語学習者向けに
やさしい英語の本を書き下ろされている
アレックス・レインナム氏による

ルネサンス期イタリアの芸術家
レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452.4-1519.5)の評伝を読みました。

※著者アレックス・レインナム氏について、
 出身国、生年等少し調べた範囲では不明でした。
 わかり次第書き足していきます。


Alex Raynham
Leonardo da Vinci

〔Oxford Bookworms Stage2〕
This simplified edition (c) Oxford University Press 2013
7,033語


レオナルド・ダ・ヴィンチについて、

これまで、
それほど特別な興味は持たなかったので、
一体どんな一生を送った人なのかは知らないままでした。

画家としてだけではない、
多方面にわたるレオナルドの足跡を、
バランスよくコンパクトに記述してあり、

レオナルドの足跡について
もう少し詳しく知りたいと思いました。


後世に名を残すことになったのは、
当時からの名声も絶大なものがあったようですが、

生前に書き綴った膨大な量の「手稿」が、
弟子フランチェスコ・メルティに相続され、
良い状態で伝えられていることも大きいように感じました。

完璧を求めるあまり、
未完成のまま放り出した作品も多かったそうなので、

没後すぐに「手稿」が焼失でもしていたら、
わからないことだらけの伝説上の偉人的な存在になっていたかもしれません。


  ***

レオナルドについては、
調べてみると選択に困るくらいたくさん本が出ています。


そういえばかなり前から、
手元に田中英道(たなかひでみち)氏による伝記的研究

田中英道著
『レオナルド・ダ・ヴィンチ ―芸術と生涯』
(講談社学術文庫、平成4年2月)
 ※初出は新潮社、昭和53年〔単行本〕。

を持っていたことを思い出しました。

ただこれは
どちらかというと研究者向けなので、

一般(私)向けの1冊として、イラスト豊富な
杉全美帆子(すぎまたみほこ)氏によるものを手に入れてみました。

杉全美帆子著
『イラストで読む レオナルド・ダ・ヴィンチ』
(河出書房新社、平成24年9月)

本文だけでなく自らイラストも描かれていています。

学者さんではありませんが、
イタリアに留学し「国立美術学院アカデミア・フィレンツェ校」
を卒業しているそうです。

この学校がどんな位置づけなのか良く知らないのですが、
本格的な内容を誰にもわかりやすく伝えることに心配りされているようです。

まずはこのあたりから、
少しずつレオナルドに近づいてみたいと思います。


※通算85冊目。計652,552語。

※Wikipediaの「レオナルド・ダ・ヴィンチ」を参照。

2014年9月16日火曜日

【読了】森絵都著『リズム』(平成3年5月刊)

先日の『カラフル』に続いて、

森絵都(もりえと 昭和43年〔1968〕4月-)氏の作品から、
デビュー作『リズム』を読んでみました。

著者23歳の時(平成3年〔1991〕5月)に出版された作品です。

第31回講談社児童文学新人賞(平成2年)、
第2回椋鳩十児童文学賞(平成4年)を受賞しているそうです。


森絵都著
『リズム』
(角川文庫、平成21年6月)
 ※初出は講談社、平成3年5月。

読みやすく、
難なく読み通せる作品です。

さすがにデビュー作となると、
つたなさを感じさせる部分も多く、
内容よりは若い感性で勝負している感じなのですが、

先へ先へと読み進ませる爽快なリズム感の良さ、
全編にただよう、ほんわかした明るさは、
この時期からかなり発揮されていると思いました。


正直なところ、
もう一息な感じなのですが、
デビュー作なら十分なのかもしれませんし、

明らかに10代女子を対象にしているはずなので、
その年代の子が読めば、まったく違った感想になるようにも思いました。

ふつうな生活の中に潜んでいる
何気ない瞬間を切り出した素敵な作品だと思います。


多少あっさりとした終わり方だったのですが、
続編『ゴールド・フィッシュ』が半年後に出ているので、
こちらも続けて読んでみます。


『ゴールド・フィッシュ』
(角川文庫、平成21年6月)
 ※初出は講談社、平成3年11月。

2014年9月10日水曜日

【読了】ダニエル・スティール著(天馬龍行訳)『長い家路』

アメリカ合衆国の女性作家
ダニエル・スティール(Danielle Steel  1947.8-)の
小説『長い家路 The Long Road homeを読みました。

著者50歳の時(1998.5)に刊行された作品です。


ダニエル・スティール著
天馬龍行(てんまりゅうこう)訳
『長い家路(上・下)』
(アカデミー出版、単行本、平成14年〔2002〕6月)
 ※扉に「作・ダニエル・スティール/超訳・天馬龍行」、巻末に「『超訳』は、自然な日本語を目指して進める新しい考えの翻訳で、アカデミー出版の登録商標です」とある。


  ***

お盆明けに古本屋で、
畑正憲氏が翻訳された
『輝ける日々 His Bright Lightという単行本を手にしたのが、
ダニエル・スティール氏との出会いでした。


ダニエル・スティール著
畑正憲(はたまさのり)訳
『輝ける日々』
(朝日出版社、平成15年〔2003〕5月)
 ※著者51歳の時(1998.10)に刊行された作品。

畑氏の「訳者あとがき」を読むと、

語学の習得もかねて、
アメリカ現代のベストセラー小説を
手当たりしだい読みあさっていくうちに、
ダニエル・スティールの小説群に出会ったそうです。

彼女の作品を読み進めていく中で、
とくに心を揺り動かされた1冊として、
ご自身で紹介されることにしたそうです。

あまりに重々しい内容なので、
購入だけしてまだ読んでいませんが、

古本屋の同じ書棚に並んでいた
ダニエルの他の作品を買い込んで、
まず1冊読んでみることにしました。

その際に畑氏が、

「三十年前のアメリカの小説には、
 結婚というわくにとらわれず、
 奔放に生きる男女の姿が描かれていた。

 だがやがて、家族を人生の軸に据える小説が多くなった。
 そして、ダニエルが登場した。

 彼女の小説の中では、女性が自立を求め、
 さまざまな障害を乗り越え、幸福をつかむ姿が描かれていた。」

とダニエルを位置づけているのも参考になりました。
(訳者あとがき、395頁)


  ***

『長い家路』が『輝ける日々』とほぼ同じ時期の作品であることは、
後から知りました。

読んでみるとこちらも重々しく、
救いようのない絶望的な状況からスタートする
息苦しい場面の多い物語でした。

幼児期に母親から虐待を受け、
両親から見捨てられた主人公の心が、
いかにして救済されていくかを描いてあり、

ふだんはまず読まないタイプの作品でした。


しかしどんなに絶望的な状況におかれても、

いったん落ち込んだ後、
でもやっぱり前を向いて、
人の良い面を信じて生きていく、

人生の明るい側面もきちんと織り込まれていて、

先へ先へと読ませる著者の筆力で、
終わりまでぐいぐい引っ張っていかれた感じです。

直球勝負で人の感情の奥深いところまでを
描き切るダニエルの力量に感服しました。

ぜひもう1冊読んでみようと思います。


※Wikipediaの「ダニエル・スティール」を参照。
※著者のホーム・ページ〈http://daniellesteel.com/〉を参照。

2014年9月9日火曜日

【読了】Anne Collins, John F.Kennedy (OBW Stage2)

やさしい英語の本、通算84冊目、
Oxford Bookworms のStage2(700語レベル)の17冊目は、

英語学習者向けの
やさしい英語の本を書き下ろされている
アン・コリンズ氏による

第35代アメリカ合衆国大統領
ジョン・F・ケネディ(1917.5-1963.11)の評伝を読みました。

※著者アン・コリンズ氏について、
 出身国、生年等、少し調べた範囲では不明でした。
 わかり次第書き足していきます。


Anne Collins
John F. Kennedy

(Oxford Bookworms Stage2)
(c)Oxford University Press 2014
6,857語


J・F・ケネディは
名前こそよく知っているものの、
評伝を読む機会はこれまでありませんでした。

もう十数年早く生まれていれば、
ケネディの時代を肌で感じることもできたのですが、

私が生まれて、
政治的なものに少し興味が出てきたのは、
レーガン大統領の時代からのことです。

ケネディは、
暗殺されたアメリカ大統領として、
名前はよく知っていましたが、

具体的にどんな人なのかは
あまり勉強しないままでした。

そんな私にとっても、
興味を切らさずに最後まで読み通せる、
わかりやすい伝記でした。

とくに批判的になることもなく、
また持ち上げすぎることもなく、

1人の愛国者としてのケネディ像が
ほど良いバランスで描かれており、

もし日本語で書かれているなら、
中高生が読むのに調度良いレベルだと思いました。


この中で、わかいころ
『勇気ある人々 Profiles in Courage』という本を執筆し、
ピュリッツァー賞を受賞していたことに興味がわきました。


ジョン・F・ケネディ著
宮本喜一訳
『勇気ある人々』
(英治出版、平成20年1月)

調べてみると邦訳も出ているので、
手に入れてみようと思います。


またこの機会に、
日本語で書かれた評伝はないか探し、
土田宏(つちだひろし)氏による1冊を手に入れました。


土田宏著
『ケネディ ―「神話」と実像』
(中公新書、平成19年11月)

中高生というよりは大人向けの評伝ですが、
ケネディ研究は著者のライフワークのようで、

バランスのよいわかりやすい伝記だと思うので、
読んでみようと思います。


※通算84冊目。計645,519語。

※Wikipediaの「ジョン・F・ケネディ」を参照。

2014年9月4日木曜日

【読了】エレナ・ポーター著(村岡花子訳)『少女パレアナ』〔角川文庫〕

アメリカ合衆国の小説家
エレナ・ポーター(1868.12-1920.5)の
小説『少女パレアナ』を読みました。

著者44歳の時(1913.1)に出版された作品です。

最近は『少女ポリアンナ』と訳されることが多いのですが、
今回読んだ村岡訳に従い『少女パレアナ』としました。


エレナ・ポーター著
村岡花子訳
『少女パレアナ』
〔角川文庫、昭和37年7月。改版、昭和61年7月〕


角川文庫の村岡花子訳『少女パレアナ』は、

1年半ほど前に、
木村由利子(きむらゆりこ)氏による
『新訳 少女ポリアンナ』が出てばかりだったので、

もう手に入らなくなると思っていたところ、
ドラマの影響か再刊されていました。

購入し、少し読み始めてみたところ、
止まらなくなってそのまま読み終えていました。


「赤毛のアン」のように、
主人公の明るい前向きな性格が、
周りに良い影響を与えていく、

そんな感じの小説です。

訴える内容はシンプルでわかりやすく、
前向きの良い影響を与えられる小説でした。

アンよりもすっと読めて、
明るく楽しい気分になれるので、
これは読んでおいて正解でした。


村岡花子氏の翻訳は、
今読むと古く感じる言い回しがあって、
多少読みにくく感じることもあるのですが、

今回は、はじめの数頁で
物語の魅力にはまってしまい、
そのまま最後まで読み通しておりました。


1つ難点があるとすれば、
いかにも少女漫画風の表紙でしょうか。

私が10代のころだったら、
まず見向きもしなかったと思います。

ちなみに、
木村由利子訳の表紙は、
こんな感じです。


エレナ・ポーター著
木村由利子訳
『新訳 少女ポリアンナ』
(角川文庫、平成25年3月)

木村訳の抄訳版が、

『少女ポリアンナ』
(角川つばさ文庫、平成24年6月)

として刊行されています。


この他の翻訳は、

谷口由美子訳
『少女ポリアンナ』
(岩波少年文庫、平成14年12月)

菊島伊久栄訳
『少女ポリアンナ』
(偕成社文庫、昭和61年5月)

の2つに気がつきました。また時間を置いて、読んでみようと思います。


※Wikipediaの「エレナ・ホグマン・ポーター」を参照。

2014年9月2日火曜日

【読了】森絵都著『カラフル』(平成10年7月刊)

Amazon.co.jpから平成25年11月に発表された
「オールタイムベスト児童文学100」のブックリストを眺めていた時に、
ふと気になった1冊です。

東京都出身の小説家
森絵都(もりえと 昭和43年4月-)氏の
小説『カラフル』を読みました。

著者30歳の時(平成10年7月)に刊行された作品です。


森絵都著
『カラフル』
(文春文庫、平成19年9月。初出は理論社、平成10年7月)

今どきのといっても、
今から14年前の作品なのですが、

ふだんは100年前の作品を読むことが多いので、
私にとってはごく最近の小説です。


軽めのタッチで、
みずみずしい感性に支えられた、
若者の文学。

でも意外と深いようでもある。


30前の女性の眼からみた
10代男子が主人公。

恐らく30前の男が書いたら、
もっとどろどろした、暗い闇のような小説になりそうなところ、

ほんとの10代男子にはありえない、
軽めの明るい独特の世界が描かれていました。


今を生きる我々のことを、
我々の言葉で描き出している、
こんな小説も楽しいかもと思いました。

最後がハッピーエンドで終わるのも
私の好みに合いました。

少し時間を置いて、
また読んでみたいと思いました。


わかりやすくて、
音楽を聴くように、
力を抜いて愉しめる作品でした。

森絵都氏の作品、
いくつかまとめて読んでみようと思います。


※Wikipediaの「森絵都」を参照。

2014年9月1日月曜日

【読了】マーク・トウェイン著(河田智雄訳)『王子とこじき』〔偕成社文庫〕

アメリカ合衆国の作家
マーク・トウェイン(Mark Twain 1835.11-1910.4)の
小説『王子とこじき』を読みました。

トウェイン46歳の時(1881.12)に出版された作品です。


河田智雄(かわだともお)訳
『王子とこじき(上・下)』
(偕成社文庫、昭和54年1・2月)

今年の2月に、
ペンギン・リーダーズのレベル2(600語)
で読んだのをきっかけに、翻訳を探していました。

はじめに手に入れたのは、
最新の大久保博(おおくぼひろし)訳でした。


マーク・トウェイン著
大久保博(おおくぼひろし)訳
『王子と乞食』
(角川書店、平成15年5月)

表紙に
「1881年刊行の初版本を再現、全192点のイラストを完全収録」
とあり、とても凝った作りで、

一語一語わかりやすくていねいに訳してあって、
好感が持てる翻訳だったのですが、

いざ読みはじめてみると、
先へ先へと読み進める文章自体の魅力に欠けるようで、
途中で飽きてしまいました。


その後、
偕成社文庫の河田智雄(かわだともお)訳を手に取り、

こちらの方が読みやすかったので、
河田訳で読み進めることにしました。

こちらも完訳ですが、
大久保訳よりざっくりした感じで、

子供向けにひらがなを多めに使い、
誰にでも読みやすく仕上げてありました。


それでも、
実は上巻を読み終えたあたりで、
先が見えてしまうというのか、

乞食にせよ、王子にせよ、
どちらも一般人には感情移入しにくい立場だからか、

また飽きが来て、しばらく放置しておりました。

お盆明けに改めて下巻を読みはじめ、
そのまま読了となりました。

話の筋は、
まさか王子が死んでしまうわけもなく、
乞食が本当に王様になってしまうわけもなく、

今読むとそれほど奇想天外な感じがしないので、
そんなにお薦めの話でもないのかな、
と思っていたところが、

最近復刊された村岡花子訳を手にとって驚きました。


村岡花子 訳
『王子と乞食』
(岩波文庫、昭和9年7月。第24刷改版、昭和33年5月)
 ※初出は世界家庭文学大系、平凡社、昭和4年。
 
逐語訳にはなっていませんが、
村岡氏の文章自体にいい味があり、

物語もサクサク先に進んでいく感じで、

大久保訳・河田訳と比べれば、
圧倒的に読みやすい翻訳だと思いました。

初出時から、
3度稿を改めているのも影響しているかもしれません。


少し時間を置いてから、
次はこの村岡訳で読んでみたいと思っています。