読み終えました。
中川八洋『地政学の論理―拡大するハートランドと日本の戦略』
(徳間書店、平成21年5月)
これは、かなり重厚な内容で、
仕事が忙しいときには読みきれなかったので、
「積ん読」状態になっていた1冊です。
第1・2章で、
英国の地理学者ハルフォード・マッキンダー卿(1861-1947)と、
オランダ系米国人の国際政治学者ニコラス・スパイクマン教授(1893-1943)
に代表される英米系の地政学の流れを読み解きます。
第3章で、
世界的な海軍史家アルフレッド・セイヤー・マハン(1940-1914)の
日本にとって有用な読み方を提示し、
第4章で、
カール・ハウスホーファー(1869-1946)に代表される、
独系地政学の問題点を整理し、日本への悪影響を論じます。
第5・6章で、核抑止の問題から、
第2次世界大戦後にアメリカがとった核戦略の流れを論じます。
ジョージ・ケナン、キッシンジャーへの批判が有用です。
そしてここまでの分析をもとに、
第7・8章で、
英米系地政学を是とする立場から、
日本の近代外交史を批判的に振り返っていきます。
日本にとって、
なぜ親露・親中国の路線が危険であり、
親英米の路線を選択せざるをえないのかが、
地政学の側面から、説得力をもって語られており、
非常に勉強になりました。
豊富な参考文献も非常に勉強になるので、整理してみたら、
この手の一般書では考えられないくらい充実したものになりそうです。
うまく整理できたらアップします。
ぜひマッキンダーとスパイクマンの主著を読んでおきたい、
と思ったものの、邦訳が簡単に手に入るのは、
ハルフォード・ジョン・マッキンダー著、曽村保信 訳
『マッキンダーの地政学 ― デモクラシーの理想と現実』
(原書房、平成20年9月。曽村訳の初出は昭和60年2月)
ニコラス・J・スパイクマン著、奥山真司 訳
『平和の地政学―アメリカ世界戦略の原点』
(芙蓉書房出版、平成20年5月)
の2点のみでした。しかもスパイクマンのほうは、
没後に秘書がソ連寄りに改ざんした上で出版した可能性の高いもので、
素人には扱いのむつかしい1冊です。
スパイクマンの主著
『世界政治における米国の戦略 ( America's Strategy in World Politics)』
は未邦訳です。
それならば、ぜひ原著で読めるだけの英語力を磨き上げたいと思っております。
今回も、非常に勉強するところの多い1冊でした。
やはり、中川さんの知力は半端ではありません。
知らない本がわんさか出てきましたので、
手に入るものは自分でも手に入れて、勉強していきたいと思います。
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